13ネキ ボスは大概人の話聞かない
前回のあらすじ
タイトルを「転生したら異世界でヤドカリ牧場」 に変えようか脳内会議があった。
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はい。昨日は飯食ったらそのまま野宿お休みコースで今次の日ですよ。我慢しないのはやはり健康にいい。
ほぼ野生で特に考えたりとかしないからたぶんそのせいで賢さが下がる可能性とかワンちゃんあばばばばばばばば。
よし、賢さの件は気のせい。
多少下がったところで俺全然魔法唱えられないし。
岩美ちゃんこと(ストーンマン)の雌やガンテツとか普通に魔法使ってんだよなぁ……
ほいでスキルとか、THE・ファンタジーの定番。 勇者とかだと剣術とかやっぱりあるんだとよ。
俺? ないよそんなもん。
格闘術とかあったら拳骨でみんな沈めないし
そもそも、もっとこう、打撃の瞬間指を折り曲げて1回で二重の衝撃やら天地魔闘の構えとかもっとカッコよくやってるわさ。
あ〜、今のは余のメルァだとか言いて〜……
でもいいんだ、スキルなくても何とかなる。
ビームが撃てるし。あ、後口からも実は吐けまする。
カッコいいだろぉ? 少なくとも俺は感動した。まさかビームまで吐けるようになるなんて……ちな吐き切ったあと、少し煙を口から出すのがオススメポイント。
やるとやらないとでは刺身に醤油付けるか付けないくらい違う。 大事。
単純に口径がデカい分出力倍ドン! だけどたぶんそんな使う機会ないと思うんだよね。実戦で使うようなことなかったし、もしかしたら今日使うことになるかもねハハっ。……いや、ないか。
そいで、急に話は変わるんだけどいつも一張羅三点セットだけどほんとは4点なんだよね。その4つ目はサンダル。
いや、素足でも全然痛くないからいいんだけども。
今更の話になるがどうせならカッコいいブーツとかくれりゃ良かったのにー……今なんか近所のコンビニ行くような格好で山登りですよ?
いつものシャツとジーパン。 後リュック。いや、リュックはコンビニに要らねーな。
こんなん途中登山家に出くわしたら山舐めてんのか! って怒られそう。
ガンテツ曰くこの山割と普通に魔境らしくて誰も来るはずはないんだけどね。
国とそれほど離れてないけど、峡谷を間に挟んでて尚且つその峡谷まで降りてこないし(山の魔物が)
峡谷自体もいるのは主に岩トカゲ君くらいだから国境付近の砦までヤバいのが来たことはまだないらしい。もし来たら? って聞いたけど、ドワーフ族結構どころじゃなく国民めっさ強いんやて。
……そうだよなぁ。みんな小さいけど筋肉ムキムキでクソでかいハンマーぶん回すんだもんな。そりゃ強いわ。
まぁ、そんなこんなでヤドカリ君たちの給餌の後、今日は初めて山頂まで登ってみようと思います。
いやね、だいたいヤドカリ君たちの生息域は山の段地になってる4~5合辺りなんだよね。で、5~7まで登るとトカゲにしてはデカいからドラゴン。たぶんドラゴン(今日は鑑定するけど)
ドラゴンって言っても中型のなんて言うか地竜? みたいなごつい竜が一気に多くなるのよ。
ほいでなぜか8~越えると一気に数が減って9合上るころには全然いなくなるのよね。
いつも不思議には思うけど探しても居ないんじゃ下に戻ったほうが狩れるわって感じで山頂には行かなかったのよ。
でも、今日はもしかしたらボスっぽいの居るのでは? と今更気が付きましたハイ。
遅いね。今更だね。
ちょっと話戻すが、その中型の地竜ってのがヤドカリよか頭悪いのか分からんけど、絶対にこっちのほうが強いのを理解しようとしないんだよ。
いくら脅かしても躍起になって襲ってくるからいい加減うんざりして、出逢う奴全部にオルテガハンマーかましてマチル〇さんを量産してましたハイ。
そいで思い付いたのが、ヤドカリ君たちみたいにボス〆れば万事解決じゃね? って。
え? それも今更? 山頂行くのめんどかったんだごめんよぅ……
で、今は恐ろしい速度で山登ってるんだけども。実は驚きの秘密が!
今回だけみんなにこっそり教えてあげよう。お父さんやお母さんには内緒だよ。
その答えとは
ズバリ、素足。
うん? 何? もっかい? だから素足だよ素足。
サンダル履くよりはえーんだよ。マジで。
意味が解らん? なーーーーに単純なことよ。 誰でもできる。
ほら、足の指ってちょっとだけど曲がるじゃん? それをうまく利用しての岩に指をガッツリ食い込ませて岸壁だろうが鼠返しだろうがスイッスイ登るんだよ。
これなら一直線で向かえるからすごーい! 速やーい! って寸法さ!
は? 足裏痛い? 指引っ掛けられない? え―――――い! 筋肉が足りん! 筋肉が! もっと鍛えて後鉄分もたくさんとれ! むしろ鉄分たくさんとれ! 鉱石食えばレバーのウン百倍やぞ!!
はぁ、アイアンジョークも解らんとは。 硬度足りてないよ?
……。 うん。 うーーーーーん……
暇すぎてつい一人漫才脳内でやってもた。 歩くの暇なんだもん。
絡まれないような移動方法も相まって。
─道中カット─
さてさて。
やってきました山頂! てっぺんが竜っぽい形かと思ったら縁の部分だったのね。
近くで見るとでけーなー
んで定番の火口に溶岩でもあるかと思ってたけど、巨大な窪地みたいな感じ。えぇ? 溶岩ないよ。 溶岩。
山頂で風呂っていう浪漫が……
………ん? 真ん中あたりなんか岩じゃないのがあるな。
なんだろ? 降りてみるか。
ズザザザとスライディングしながら縁からタマが滑り降り、真ん中の物体に近づいていく。
――――
んー……ドラ……ゴン? 寝てる? ……にしてもでっけーなぁ。
色が違う物体は、丸まりすやすやと寝息をたてる地面色の羽のない4足歩行タイプの巨大なドラゴンであった。
まぁデカい地竜っすね。
あ、 ちょっと動いた。っていうか起きた。
ゆっくりと目を開け、周囲をゆっくりと見回し、足元に居るタマに気が付く。
そして、語り掛けてくる。
え? しゃべれんの? マジ?
「……ふむ、永き150年の眠りから強者の気配を感じ自然と目が覚めたが、よもやこんなに小さき者とは思わなんだ。しかも雌ではないか。しかも雌のくせに硬くて不味そうな匂いがするわ。期待外れよの……」
なーに言ってんだ此奴、そして人見てすぐさまがっかりするとか失礼なやっちゃな。
はぁ? 俺はムニムニのピチピチやぞ?
強く叩くと硬いだけで。
「いや、俺は火口を見に来て何か中心にあったから、気になって来ただけで起こす気は無かったんだよ。ごめんね? すぐ帰るからさ」
「……ふん、まぁいい。貴様のような小さき者など食ろうても、腹の足しにもならんわ。さっさと我の前からいねい……」
……えっらそーな奴やね。なんだ、ドラゴンってみんなこうなの? 中型も偉そうだったしデカいのもそんな変わらんのか?
ま、いいや。 めんどくさいから適当に流して石拾いながら帰ろ帰ろ。
確か洞窟あった気がする、中型ドラゴンの巣の奥に。
「あ。ハイ。寝てたとこ起こしてすいませんね。じゃあ俺はこれで失礼しますんで」
「……良い心がけである……ぬ? お主から酒の匂いがするな。もしかしてハーミットがまだ生息しておるのか?」
「え? ああハイハイ居ますよ。最近たくさん居ますねじゃあ俺はどっか行きますんでハイそれでは失礼しましたはい」
「ふむ……我が寝ている間に増えておったか。確か……奴らの肉は美味であり体内に美味い酒も備えておったな。寝起きがてらの運動ついでに奴らで腹でも満たしに食事に行くかのぉ……」
そう地竜は言い放ち、ゆっくりと地面を揺らしながら起き上がる。
寝ててもデケーけど立ってもでけーな。
高さ目測25mくらいあるんじゃないか? 横は長くて解らん。
まぁ。鑑定するか……
……ん? ……食事? ……ヤドカリ?
「クックックック……あの時見逃した少し大きな奴は今頃成長してさぞや身がたっぷり詰まっとるだろうのぉ……考えるだけで涎が止まらんわい。ジュルリ……」
ん? 大き目の奴? 成長? 身がたっぷり?
「……あのー。つかぬことをお伺いしますが、ハーミット君たちは俺の友達なので可能なら食卓にあげるのは止めてほしいんですが……」
とりあえずお願いしてみよう。友達と聞けばあっさり聞いてくれるかもしれない、賢そうだし。
「……おぬし、まだ消えておらんかったのか? それに……友達? ふん。 我にはお前の事情など関係無い。
いついかなる時も我のしたいようにするだけ。それが弱肉強食の世の理。ククク、楽しみでしょうがない……」
……ふー。
よーし。 決めた。
俺は今から此奴を〆よう。
俺の酒を横取りする挙句手塩にかけたぎーと君(こないだ名前付けた)食うだぁ?
俺の可愛い飼いヤドカリ食うなんてぜってー許さん。
個人的な私怨? なんの事ですかね?
「待て、おい。そこのクソトカゲ」
ズシン、ズシン……と去り行こうとしている地竜を呼び止める。
俺の声が耳に入った瞬間、ぴたり。と、動きを止め、こちらに振り向いた。
「……今。この我をトカゲと呼んだか? この龍たる偉大のの名を冠する我を トカゲ と雑魚呼ばわりしたか?……不味そう故に見逃してやったが……許さん! 絶対に許さんぞ木っ端がァ! 貴様如きがこの我を愚弄した罪、死をもって贖え! グゥオオオオオォォォォォッ!!」
「あーそうだな。言葉で主張が通らなきゃ、力で解らせるしかねぇよなぁ! かかってこいやトカゲさんよぉ!」
酒が減ったら俺のは確保するとして減ったその分ガンテツの分が減るだろ! 可哀想だろ! ただでさえ小児性愛者なのに!!
――
「ファ、ぶぁっくしゅーい! ……はて、この季節に風邪かの?」