106ネキ セルフガチンコと目覚めたこ
前回のあらすじ
あらすじジャックされる。
&漁がはーじまーるよー
――――
「……で、姐さんの言う通りに力自慢数人呼んできたっすけど……本当に吊るんですか?」
「うむ。 沈んじゃう体質だからね、こないだ(弾拾い)の時も浮いてこなかったろー?」
「いや、話には聞いてますけど……」
「準備おっけー。はい降ろしてー……オーライ。オーライ」
腰にロープを縛り、たすき掛けでロープを巻き付けて上手く背中にしっかりと固定して潜航準備完了。
「ってもう始めてるー!? お前ら躊躇わないな!?」
「いやさ、俺たち積み込みの時見てるし……なあ?」
「そうだな」「ああ」「姐さん結構つーか、その……」
「あー俺の体重は人より重いの自覚してっから気ぃ使わんでええぞー。それより離さないでねー?」
「了解!」 「まぁこれくらいなら無いですぜ!」「そろそろ着水しますぜー?」
「おーう。息は持つから結構沈めてくれー。あ、後、ちょっとした衝撃来るやもしれんから身構えとけよー、そしたら引き揚げてくれー……」
そして海中へと沈んでいく。
〜海の中〜
おーおーすげーな。 以前から知ってはいたが水中もよーく見えるわ俺、うーん眼鏡要らずだな。
っと、見渡しゃあたくさん魚が泳いでいるがどうやって獲るかだって?
ざっくり答えを言っちまうとダイナマイト漁みたいなもんよ。
あー、ガチンコ漁の方が近いか? 川の大きな石同士を強かに打ち付けて魚気絶させて獲るっていうアレ。
んで吊られた今の状況で石? そんなもん必要ねーっすよ。
こう、軽ーく両拳を打ち鳴らしてな……いーち、(ガーン!)にーの(ガァーン!)……
さん!
「うーんもう勝手に始まってら、どうにでもなれ……おい! 次の網少し待て! 姐さんがなんかやるらしい─
言いかけた次の瞬間。
ドッ。 コォーーーン……と聞き慣れない衝突音が聞こえ、発生源の海中、船底から船にまで衝撃が伝わり、大きく船を揺らす。
「な、なんだぁ!?」
「魔物か!?」
「海中だ!」
騒ぎを聞き付け、直ぐに船長が駆けつけ、指示を出しに来る。
「んだぁ!? 新手の魔物か!? 魔物避けあんのに襲ってくるたあ肝据わってるじゃねーか! 野郎共! 戦闘準……いや、気配がしねえ、魔物じゃねえ……? それになんだ、このやたらめったら魚が浮いてる海面は……」
「あ、船長。えーとですね……」
そこに丁度引き揚げられたタマが現れる。
「あー俺が説明するわ。おいーすせんちょ、犯人は俺だ」
「なんでタマちゃん1人だけズブ濡れ……ってアンタの仕業か」
「いえーす。暇を持て余してたんで漁を手伝いました」
「んでこの大漁具合ってか……ぶっ飛んでやがるぜ、ハハハ!」
「思ったより捕れたしまぁ大丈夫やろと調子こいて結構な音出したな? とは思ってる反省はしてねぇ」
「いや、海は何が起こるから解らねえからこの程度じゃ屁でもねえよ! が、次のやる時は一言言ってくれ、勘違いしちまうわな」
「うーい。……てかまたやっていいのね?」
「面白ぇから許可する!」
「船長! 滅多に捕れない岩石鯛や筋肉鯵、他諸々投網じゃあ捕れねーやつ浮いてますよ!?」
「なに!? おっしゃ野郎共、今表に出てる奴ぁ全員で網銛投げろぉ! 飯が豪華になんぞぉ!」
「「「オオォーーーッ!」」」
そして、気絶して浮いている魚の乱獲祭りが始まる。
生態系? 環境? そんなもん地球じゃあねーし海賊は配慮しないから。 ……ね?
「さーて遊んだし潮流して寝よー。じゃーな船長ー」
「おう! また暇な時やってくれよ! こりゃーなかなかだわ! 良い稼ぎになんぞぉ!」
騒ぎを聞き付け、少し遅れてセレソたちやソード何とかさんたちも甲板へと登場する。
「おいーす、悪ぃけどなんもねーし犯人は俺でもう終わったぞー、じゃーなー……」
「あ、どうもタマさん、……え? 終わった? はい?」
――――
――
―
轟音響いた海中。─その深い深い海の底。
音は遥か底の海底にまで届き、海溝でうつらうつらと微睡んでいた者にも届いた。
――。
……海ノ王、コナイダ少ダケ寝返リウツ、余波デオレ、起コサレタ……ネム、ネム……
――……
!? ナンダ、コノオト……
海溝から上を見上げ、上の上、とても良く見える目でその者は何かを見つける。
……エサ。 サカナジャナイエサ……寝ルマエカラアレヒサシブリクッテナイ……タベタイ……タベヨウ……グー……zzz。
そしてゆっくり、ゆっくりと半分眠りながら這い出たソレは海面を目指す。
が、浮上した時、既に船は居らず先へと進んでいた。
……寝テタ……オ、エサ……エサ……
捕りきれずに未だ多く海中漂う魚を手から枝分かれした小さな手を器用に使い、辺を食い散らかすソレ。
オ……オキタ。 居ナイ……ピリットスル、タブンムコウ?……追ウ。タベヨウ。
ソレに対して、魔物避けの魔法は大した効力を持たず、少しピリッとする程度しか効果が無かった。そして、逆に居場所を遥か遠くからでも教える指標となる。
そして、ソレは1度決めたらそれはもうしつこかった。
ソレは、ゆっくり、ゆっくりと自身の周辺の生物を問答無用で絡め取り、咀嚼しながらも確実にキンガ号を追う。
次回、「早すぎたおまけ回 髭と蟹のダンジョン巡り 〜アイツ1人でいいんじゃないかな」