102ネキ 緑色の箱を取る必要が無い
前回のあらすじ
アレ海賊船だろ。
――――
歩きながら観察してる感じ船に物資やら何やら積み込み作業してる船員も、頭にバンダナ巻いてたりThe海賊の手下! って主張が凄い見た目で……あ、普通の見た目の人たちも一緒に会話してる辺り作業してるから問題は無いんだろな。
まー、近寄って聞きゃわかるわ。
近寄っていくと、船(海賊船)の手前で止まり、どうしようかと相談をしている冒険者パーティの会話が耳に入る。
「セレソ……あの船が本当に護衛依頼募集してた船なのか? ……どう見ても……」
「今停泊してる船の中で〜、船体が黒くて凄そうな大砲があって帆が髑髏の船って言ったら目の前のコレだけよ〜?」
「か、海賊船じゃないか……大丈夫なのかな……?」
「そんなの海賊船っぽい見た目してるだけよ〜。だって〜ギルドが海賊港に停めるの許すわけないじゃない? だ〜か〜ら〜、ほら、船員さんに声掛けるわよ〜」
「あっ、ちょ、待ってよ!」
おっとりした女性を少し頼りなさそうな男性がやや追うような形で船へと接近する。
「あ〜どうも〜大きいおねーさん〜。この船の船員さんですか〜?」
「ん? 俺か? 俺は護衛募集で乗せてくれるって聞いたから話に行くとこだァな」
「あ〜冒険者の方でしたか〜、私たちも同じ目的で来てるんですよ〜」
「バラバラに聞かれても向こうはめんどくせーだろーから一緒に行くか? 俺ぁタマっつーんだ」
「それがいいと思いますね〜。あ、私はセレソって言いますー。よろしくお願いしまーす……ほらぁ、ケラス、タマさんが大きくて目つき悪いからってビビって挨拶しないのは駄目よ〜?」
「おめーなかなか歯に衣着せぬやつだな? 嫌いじゃねーぞお前みたいな奴ァ……っと、すまん。セレソさんだったな」
「セレソでいいですよ〜……ほらぁ」
セレソがケラスを肘で軽く小突いて挨拶を促す。
「あ……どうも、僕はケラスって言います。えっと、ランクはCで、相方のセレソも同じで、職業は……まぁ、見たまんまの魔法使いですね」
「おーう、よろしくなー。そーいや俺は確かBとかだったわ」
「あ、銀の方でしたか……」
「言っとくが気ぃ使わなくていーぞ。おめーの相方見習え?」
「ありがとうございます〜」
「セレソ……君は本当に物怖じしないね……」
「一応人見てるわよ〜?」
「ま、挨拶はこんぐらいにして船に乗れるか聞こうや。先行ってんぞ」
「あ、は〜い」 「あ、はい」
船に近寄ると、野郎共の怒号が飛び交うのが嫌でも耳へと飛び込んで来る。
「◯◯商会のトコの依頼品積んだかぁ!?」
「それで全部だぁ!」
「ブランボラクのギルドに出す品はぁ!?」
「それも積んでらぁ!」
「キンガ砲の弾は積んだかぁ!? アレしっかり積んどかねぇとまぁた頭……船長にドヤされんぞォ!」
「今積んでらぁ!」
おーおー、頑張ってますやね。 ……っと、近くのこの人でいいかな。
「こんちゃーす。この船の人ですかー?」
「よーし! 後はデカい荷物は無ぇな! ……あん? どうしたねーちゃんたち」
「俺たちギルドからこの船乗れるって聞いて来たんスけどどうなんすかね」
「てーことは冒険者か。アンタたち、ランクは?」
「B」「C〜」「Cです……」
「お、ねーちゃんBもあんのか。なら船長も話聞いてくれんだろ……付いてきな」
「うーい」
「あ、なんか普通に大丈夫そう……」
「見た目だけだって言ったでしょ〜?」
タマたちを船へと海賊手下(仮)が案内しようとしたその瞬間─ほんの些細な、本当に些細な、津波と言うには言いきれない程度の波が港へと押し寄せた。
さしたる影響は港へと及ぼさなかった。が、その波は確実にロープで接岸されている船体を揺さぶる。
「うおっ!?」「きゃっ」「うわっ!?」
打ち付けられた海水の飛沫の余波を受けるタマたち。
「馬鹿な!? 湾内に波が!?」
それと同時に、船の積み込み場所から派手な水音がする。
「嘘だろぉぉぉ!?」「なんで波が来るんだよぉ!」 「やべぇよ! 落としたのがよりにもよって砲弾じゃねーか!」「マジでやべぇぞ! こんな船内にも解る揺れがあったら……」
慌てる船員たちの予想通りに、船の甲板へと出るドアが勢い良く蹴り開けられ、髑髏模様の海賊帽子を被った、どこからどう見ても海賊船の船長らしき人物が怒号を飛ばしながら姿を現す。
「湾内に波だぁ!? おい! 今なんの積荷落としたんだ! そしてお前! お前は船内で休んでる魚人の船員呼んでこい! 後で倍寝かしてやるからつって今落ちた物潜って回収させろ!」
「ちょっと悪ぃなねーちゃんたち、ちょっと待っててくれ、船長出てきちまったわ」
タマたちに少し断りを入れて手下(仮)が船長のもとへと走り寄る。
「マッキー船長! 今落ちたヤツ多分潜って取ってくるの無理臭そうですぜ。……その、キンガ砲の弾なんすよ……」
「おー、クロコか。 ……は? 今なんつったお前」
「キンガ弾です。……落ちたヤツ」
クロコの報告を聞いたマッキ船長が一呼吸置き、髑髏帽子を押さえて深めに被り思わず大きな溜息を漏らす。
「……チッ……ツイてねえなぁ。止めだ、クロコさっきの奴捕まえてやっぱ魚人たち起こさなくていいって言ってこい。幾らアイツらでも重すぎて持ってこられねぇよ……ん? ところで、向こうに居る遠目に見ても解るくらいデケーねーちゃんと魔法使いのアベックはなんだ?」
「彼女たちはギルドの護衛依頼募集で来た奴らでして……船長に客か依頼か判別してもらおうってことで見せるつもりだったんですが……」
「ああ、バハルにごねられたから募集そういやしてたなァ……悪ぃけど後日来てくれって言ってくれ。俺は今超絶落ち込んでんだよ……再発注来るまでどうせ出航できねぇし明日でも明後日でも乗りたいなら来てくれって言ってくれ……ま、アイツらが今落とした弾拾ってきてくれるんならタダでもなんでも乗せやっけどな、ハハッ……」
「いやいや船長落ち込みすぎですよ……何言ってるんですか」
「うるせークロコお前、アレ1発どんだけすると思ってんだよ。キンガ弾は航海の時の御守りなのよ〜く解ってんだろぉ? 何回助かって何回儲かったか……あークソ、航海前に落とすとかツイてないにも程があ「取ってこれるぞ」……あ? 今……クロコ、お前取ってこれるとかぶち殺されるほど面白い冗談言ったか?」
「いやいやいやいや、俺じゃないですよ……あのでけーねーちゃんですわ」
「……おい、でけーねーちゃん。言っとくが冗談で言ったなら今謝ったなら許すぞ?」
先程のしょげた態度から一転、射殺す様な眼光でもってタマへと問い掛けるマッキー。
「冗談も何も今落としたヤツ拾ってきたらタダなんだろ?」
「「タマさん!?」」
セレソたちは驚き、タマの発言を聞いたマッキ船長がしばらく目を点にして固まったかと思うと次の瞬間には大笑いし出した。
「ハハ、ハハハハハハ! お前、冗談じゃないって目ぇしてんな!? よーしそれじゃ今すぐ拾ってこいよ。 見ててやらァな!」
「おーけーおーけー。男に二言は?」
「勿論無ぇ。元海賊の誇りにかけてな」
おーし、それじゃーマリンダイバータマさんといきましょうかねぇ!
ってかやっぱりお前海賊だったんかい。 なんで普通に商売しとんのや。