99ネキ 当職、襲撃に強い冒険者ナリよ
前回のあらすじ
ぶらりカム車の旅。
聞いた話オサヒデ置き去り事件の当日、
Q いいか? 今日は街出るからいつもの面倒起こすなよ?
A わかったぜ! 絶対問題起こさない!
からの先日のアレ。
……そっかー……ダチョウ○楽部の押すなよ芸かな?
――――
――ポム・スフレ渓谷。 大昔には滝が流れており、干上がった今もなお大層な滝であったことを誇示する渓谷。
現在は時の流れにより完全に枯渇し、人々に開拓され現在は王都への主流街道へと姿を変えている。
そこを通過する半ばにて、突如カム車へと崖上から発生した岩雪崩が襲う。
「止まれッ! 伏せろ!」
「ケェー!」
ラケルタの指示により急停止と防御姿勢を取る2匹。
多少の岩石が飛来するが、カムプスランナーは頑強な甲殻を持っているので跳ねた岩程度では傷一つ負わない。
引いている車の方も頑強な作りであるので多少の傷はあるが、大きな破損は無い。
……中の人物たちに関しては電車が事故を起こして急停止した場合にどうなるかと言えば理解しやすいとは思うが。
「ぬおっ!? なんだ!?」
タマ、小窓に勢い良く突っ込み上半身だけ外に。
「すまねぇだ! まさかの岩雪崩だーよ! 怪我ねぇべか?」
「ん、おーう。おはよーさん……俺の怪我より車壊して悪ぃな」
「それは直せばいいだ……崩落起こる場所じゃないはずんだけども……」
「ラケルタさん、貴方に非は無いですよ……それと、囲まれています。……これも恐らく人為的な事でしょう」
「おはヒデ、ナイスクッション」
「おー痛え……気持ちよく寝てたらパピルスのケツに起こされたぞ……」
カム車から出てきた3人も特に怪我は無いようだ。
スマシュは既に異変を察知し対応、パピルスはとりあえず近くにあった緩衝材を利用。
オサヒデはタマと同じく飽きて寝ていた。
「……もしかして賊だべか?」
「ええ、恐らく。……このまま後少しだけ気がついていないフリをしましょうか」
「んだ。……それよりも、こりゃあ困ったことになっただなあ……道の前後が見事に埋まっちまっただ……これだと私たちは越えられるけど車が持ってけねーだよ……」
「どっこい……せっ! っと」
タマ、上半身だけ出ていた状態から抜け出し雑に地面へと落下。
「え? 何、コレ誰かがやったの?」
「はい。私が察知した限りでは結構な数が居ま……出てきますよ」
スマシュの言葉通りに、左右の崖上から多くの人影が姿を現す。
「ハッハー! デカい獲物にゃやっぱり良いのが入ってるってなァ! 見ろ、野郎共! 質の良い獲物だぜぇー!」
「「オオオォー!!」」
「エルフの女にお偉いさんが気に入りそうなチビ助と……デケェが気が強くて楽しめそうな女だぜぇ! 男のガキは殺して身ぐるみ剥いじまえ! 蜥蜴3匹も此処でさっさと解体して良い所頂戴だァ!」
「「イェェエエーーッ!!」」
「……盛り上がってるところ、すみませんが、この岩雪崩は貴方たちの仕業ですか?」
腰から取り出した可変式の弓を展開しつつ、トーンの低い声にてスマシュが男達に問い掛ける。
「あ? これだけ囲まれた中、随分と威勢が良いねーちゃんだな……っとお!? こんだけ離れてんのに当てにきやがる! ……だが、残念だったな? 俺ら慣れてんだよォ、遠距離攻撃弾けるようにするのは当然だろぉ?」
リーダーの男目掛け、言葉を待たずしてスマシュが一矢を放つ。……が、横に立つ手下の構える盾に矢は弾かれてしまった。
「……チッ、賊のくせして随分と良い盾を揃えてますね」
「へっへっへっ、良い目利きしてんじゃねーか、そうだ。この盾は特別でな? 反射亀の甲羅を使った逸品よ! 今の矢もコイツじゃなきゃ危なかったかもしれねえなぁ! だがどんな飛び道具が来ようと関係ねぇ! もしこっちに来るなら登ってくる間にハリネズミになっちまうなぁ?」
リーダーの指を弾いた合図で盾を持った者と弓を構えた大勢がタマたちを威圧するかのように現れた。
「……オサヒデ、車を盾にして矢からパピルスを守りなさい」
「おうよ! 任されたぜ!」
「信頼してるぞ、オサヒデ」
背負った野太刀では取り回しが良くないので腰に携えた小太刀を2本、1つは普通に持ち、もう1つは逆手に構え格好を決める。
「……綱外して暴れさせるべか?」
「いえ、ラケルタさんたちに怪我があっては良くないので、そのまま防御姿勢をお願いします……レキちゃんとリンちゃんの外皮は相当な物だと思いますので、目など、柔らかい所を撃たれなければ大丈夫かと」
「わかっただ。 私は戦闘始まったら本職に任せてレキリンの間に隠れてるだーよ」
「……タマさんは何か上か来る飛び道具をどうにかできる方法をお待ちでしょうか?」
「んあ? ……うーん……方法っつーか、刺さらねぇし、俺」
「刺さ……らない?」
少々驚いた様子でスマシュがタマの方を少しだけ見る。
「そうそう。嘘だと思うなら1発俺に撃ちゃいい」
「いえ……さすがにそのようなことはしませんが、その様子だと本当みたいですね……なら良いでしょう。さて、問題はこの高低差でどうやって堅い盾を持った相手を射抜けるか。ですが、……やってできないことは無いんですけどね」
「スマシュさんスマシュさん」
「はい」
「運動がてらアイツらぶっ飛ばすの、俺に任してくんね? ちょっと良い技思いついた」
特徴的な歯を見せてタマが悪そうに笑う。
「何か妙案がある、と? ……では、車に撃ち込まれた矢は全て私が落としますので、盾持ちと射手、お任せしても?」
応えるようにスマシュが少しだけ笑った後、ひらりとカム車の上へと飛び上がる。
「おうよ、任しときなァ」
「ではパピルスが珍しく尊敬するそのお手並み、拝見させていただきます」
「……あぁん? 何か相談してみてぇだが状況がわかってねぇ様だな。チッ……もう良い。野郎共、女は脚を狙え、体には当てんなよ?
勿体ねえからな、少しだけ解らせてやりな」
「「イエァ!!」」
ひっひっふー、ひっ、ひっふー。
……あ、なんか違うこれ。
スゥー……フゥー……
あんまし出力上げて本気でやるとヤベぇだろうから、抑えに抑えてー……うん、こんなもんか、よーし……
いつものカッコつけモーション取ってー……(今回は両手ポケットでちょっとだけ仰け反る動作)
はっきり言って無反動で撃てるんだけどね!
やっぱり見栄えって大事だと思うんすよ。
「おい! あのデけぇ女が何かやってくんぞ! 盾、構えぇ! 弓、放てぇ!」
「アイサ……」
盾持ちが盾を構えた次の瞬間、独特な空気を裂く弾音が渓谷に響く。
カァオ!
盾持ちに着弾、そして隣にいる数人を盾ごと爆風で派手に吹き飛ばす。
「……は?」
タマの口から放たれた光弾が起こした状況を理解できず、賊たちは思わず矢を射る手を止めた。
近くに居たスマシュたちも驚く。
「んー、ま、低燃費でこの命中なら上々だな、俺。その気になりゃばら撒けるしぃ?」
カァオ!
「グワーッ!?」
カカァオ!
「うぎゃーッ!?」
タマ、口から光弾を吐き混乱する崖上の賊を次々と盾などお構い無しにぶっ飛ばしていく。
「な、なんだあの化けモンはぁぁぁぁぁ!?」
ちょっと口からKARAS○WA吐く系女子なんじゃないかな?