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12/202

12ネキ  新ジョブ ヤドカリブリーダー異世界に現る。

 前回のあらすじ 



 俺素材の武器とか実はちょっと面白そうだった。



 ――――





 現在ハイキング? ピクニック? いや、山登りなう。



 半分散歩目的で火山に来つつ、優先すべきは酒だ、酒。 


 いいか? 大事なことだから覚えとけ。石食えるようになろうがちんが無かろうが酒は旨い。


 世界の真理だ。後でテストに出します、お酒好きは覚えとけなー。


 酒の好みは人によりけりだろうが、強い酒は好きだった。

 チビりチビりやるの最高。 


 まー今じゃそれよりヤバい奴を浴びるようになってるけど。 うん、美味C!

 そこらへん今生のほうが好き勝手できるし、本能のままに生きるってのはやはり最高だと思う。 


 無駄にハイスぺのこの体も、慣れてみれば便利なことこの上ねーしな、むしろ今更人間に戻されたら不便でしょうがないと思いますわ。


 性別変わったときはまぁ多少思うところもあったが、5年も過ぎると精神も体に引っ張られるんじゃないか?

 違和感とか全くねーし、性格はもとよりこんなん性分だしどうでもいいと思ってる。 なるようになる。  


 あー、そうそう。すごく硬い瓶の蓋もワンパンKOできるのが素晴らしい。摘まんでめくることも可能。あっためる必要無いの良き。

 ま、めくったら蓋ダメになっからしないが。 


 力加減とかも、うっかり握り潰すっていうのが実はないんだよな。

 そこらへんあの神様が上手い感じに体造ってくれたんだろ。 


 んん? なんかさっきからあの髭神に感謝しかしてねぇな? ……特にけなすことも今は無いし別段感謝してもいいか。  


 帰ったらガンテツに小さな神棚作って貰って酒でも供えよ。   


 で。


 さてさて、まずは酒。

 とにかく酒。

 いいか。さっきも言ったが大事なことだ。 


 おっと、話が長くなるので省略。  




 やってきましたスピリタス・ハーミット(ヤドカリ君)の巣である。  



 前も来たっちゃ来たけど、あいつら樽みたいな殻に貯めてる酒の袋1つじゃないんだよね。

 図鑑読んだ。 図鑑しゅごい。


 個体によりけりだけど、2~3ないしもっと持ってるやつもいるからちょくちょく来てもいいヤツ出来上がってるんだよねー。 


 ホントあの子達歩く酒樽かなんかじゃないの?  


 ガンテツに倒すんじゃなく捕まえたら? 聞いてみたけどやっぱ野生の奴が味よくなるんだってさ、へー。

 やっぱ天然ものが一番って話なのな。




「ギ?」  「ギギ?」  



 お、普通個体がこっちに気が付いた。

 小さいから新入りか。


「おーす。差入れやぞ―、仲良く分けて食うんやでー」


 道中仕留めてきたなんかワイバーンっぽい奴を登山リュックからずるりと引き出してぶん投げ、ヤドカリ君達に差し入れという名の雑な給餌をしてやる。



 な〜んでワイバーンをいつの間にかアイテムボックスにしまってるのかというと、事の顛末はこうよ。






 ――――――山登り2合目当り―――――



 ~~~~♪   


 鼻息交じりで気分よく登っていた最中、不意に空が暗くなり、タマがふと空を見上げる。


「ギャギャーッ!」


「あ?」



 急降下してきたワイバーンの足爪がタマの肩と擦れ、甲高い金属音が鳴る。

 勿論本人に傷1つないのだが、今回は事情が少し違った。 


「あ―――――ッ!!? ガンテツから借りたリュックが、千切れたーーーーッ!?」


 ヤバい、これ絶対めっちゃ怒りはしないけど小言言いながら直し終わるまでぶちぶち延々説教されるやつや!

 肩に片方掛けとかそんなチョイお洒落みたいなリュック要らねぇから! 普通に不便だからな!?


「ギャーッ……ギャ?」


 綺麗に掴めたと思ったら爪が滑ってしまったので何が起こったか理解していないワイバーンが空中で首を傾げる。

 引っ掛けたまま投げ飛ばそうとしてたらしい。


 バサリと大きく弧を描く方向転換をし、気を取り直して再度同じ肩目掛け爪を振りかざした。


 しかし先程と同じく甲高い金属の擦れる音がして滑るだけに結果は終わる。

 そして此処でタマも再度の攻撃により、リュックの件から意識をワイバーンに向け始める。



「ギャ? ギャー?」 


 やはり爪が滑るのが不思議でしょうがないらしいワイバーン。 首を傾げ、もう一度だと言わんばかりに今度は高く上昇し始めた。




 コイツッよくもガンテツのリュックを! つーかそもそも俺に投げ判定の攻撃効くわけないでしょうよ!

 重すぎて実質投無効持ってるようなものやねんぞ! 投げられたら爆発するペンギンとは違うぞ! ……いや、投げられないペンギンもおったな、確か中身は魔王の奴が。 


 前言撤回。 


 ほんで、この山で俺を襲ってくる奴なんて新参の流れ着いた奴か、よっぽどの馬鹿しかいないんだよなぁ……


 何度も同じ攻撃してくる辺り、新参で馬鹿の両方かもしれない。 



 とりあえずリュックをどうにかしたいので追っ払う意味でそこにあった手ごろな大きさの岩を持ち、わざと当てずにぶん投げ、威嚇射撃とした。 


 いや、誰彼処構わず殺すわけじゃないからね。俺。襲われたらまぁ話は変わるし、襲ってくる理由にもよるけど。 


 これでビビって逃げてくれりゃそれでいいし実力差が見切れないならそれはそれ。


 狩る。 



 投げた岩が空中高くに居るワイバーンの横をかすめた。



「ギャッ!? ……ギャ?」  


 自分の方に体と同じ程度の岩が飛んできたのに驚き、一瞬身を強張らせるが、自身を外していったことに気付く。タマが外したとでも思ったのか、彼?はあろうことか



「ギャーギャッギャギャッwwギャ―――wwwww」



 煽ってきた。



 空中でホバリングをし、明らかに此方を馬鹿にしたような鳴き声と飛行をする。



「……ほーーーーーーん」



  よーーーーーーし。

 わかった。

 その喧嘩、買って差し上げましょう。久しぶりに使う対空技だ、とくと堪能しろな。   


 お前にはもったいないけど今回は特別だ。 死ぬほど喜べ。 



 タマが腕をクロスし、丹田(おへその下あたり)に力を籠め、エネルギーを練り上げる。 




「――――――――っつぅ……ふぅーーーーーーーーーーーーーーーー」 




 ゆっくりと息を吐き、その練り上げた熱を移動させ、交差した腕を少しだけ下げ空中のワイバーンを見据えた。 


「ハッ!」


 そして、彼女の瞳がエメラルドグリーンから深紅のルビー色に染まった次の瞬間。交差した手を勢いよく解くと同時に紅い双眼から熱線が放たれて──


 ―――――キュンッ!――――――


 空気を裂く音が一瞬だけ小さく鳴り、熱線はワイバーンの眉間に命中し、何も無かったかのように通り抜けた2本の熱線はそのまま空の彼方へと吸い込まれ、消えた。  



 ふー……あ。ちなみに力加減の入れようで射程だいたい弄れるんだよね。いいとこで霧散する感じに調整しました。

 5年間遊びながら修行の成果よ。 

 いや、やっぱ遊んでたわごめん。 

 後は別に溜めポーズしなくてもいいんだけど……格好良いから、ね?



「カッ……」


 眉間に2つの風穴を空けられたワイバーンが少しだけ呻き、絶命するのと同時に重力に引かれ落下を開始する。 



 おーっと。 目から煙わざと出してポーズ付けてカッコ付けてる場合じゃなかったわ。 


 それ程タマとワイバーンの距離が離れるわけではないので、タマが持ち前の身体能力で走り込みつつ、リュックの口を広げ真下で待機。


 にゅるり、スポン! というなんかよくわからない音と同時に四次元のポッケよろしくワイバーンの亡骸がリュックに綺麗に収まった。 


 ほんとこの口より大きいの収納できる機構どうなってんだろね。  



 ま、そんな感じに久しぶりに光子力ボイーム出してすっきりしたし、手土産(餌)、ゲットだぜ! したことだし、機嫌を直して再度ヤドカリ君達の巣に歩き出すのさ。   


 どうでもいいけど仕留めたワイバーンは全長20mくらい。 デカい気がするけど半分しっぽなので実際はそうでもない。  いや? 10mはそこそこデカいか。感覚が麻痺してんな。  


 さて、れっつごー。



 ――――――――――――――



 と。  そんな感じのことがあって、道中ワイバーンをはんちんぐしたのであーる。


 1匹だけだったし、はぐれかなんかだったんだろう。

 襲ってきた君が悪いね、素晴らしく運がないな、君はって感じぃ……ま、ヤドカリ君たちが喜ぶからイーブンか。



 そんで小さい奴らに餌をやってると、一際デカい個体が来るのを確認。 


「いーやーーお前。デカくなったと思ったけどさらにデカゴツくなったなぁ……」


「――――ギギィィィィ―――――」 


 しみじみ思ってるうちに目の前まで来た。 デカい分一歩がすげーから足速えーな。  



 そう。例の巣の主君であるのだが、いかんせん美味しい酒のためにヤバそうな魔物とかドラゴンっぽいのとか叩いたりしっぽ掴んでジャイアントスイングしたりデコピンしたりこっちに向かってくる奴ら全部ポコじゃか叩きのめして殻だけ剥いだ後は肉をこの主くんとかにあげてたのだが、なんかあげてる途中で気が付いたら姿とデカさが変わってた。

  そんでガンテツが持ってた鑑定鏡っていうなんか虫眼鏡みてぇなマジックアイテム借りてきたんで、酒ついでに鑑定しに行きたくなったのである。



 そいで虫眼鏡覗いて鑑定してみた。




 ――――――――


 フォートレスピリタス・ギガハーミット 


 危険度 A+++++


 概要 


 ・全高35mにも及ぶ、スピリタスハーミットの未確認種。 

 未確認種のため、計測した全高以外の該当データなし。



 ――――――――  



 おー。  


 姿変わってるし進化でもしてんのかなって思ったけど、ほんとに進化してたわ。 

 樽型の殻からなんかもう今城だもん、城。 

 城ヤドカリとか浪漫あるわー、餌やっててよかった。 


 カッケ―超カッケ―。 もっと育てるしかないですわねコレ、目指せSランですよ。 


 トップヤドカリブリーダーになれるわ俺。 オンリーワンだわ。

 モンスターでファームしちゃう?



「―――――ギォォォォ――――――」 



「おっといっけね。ほーらお前の分の飯やで。 まぁ今回はドラゴンないけど、そこらに居る岩トカゲ君全滅させる勢いで狩ってきたから腹一杯にはなるんでね? 今日は外殻付きのおまけだから歯ごたえ抜群やぞー」 


 そう言いながら肩に担いでいるリュックを逆さにし、ダバダバ〜っとロックリザード(故)の山を積み上げる。  




 差し出すや否や、早速その巨大なハサミでつまむ! かと思ったら、普段は折り畳まれている長く小さな食事用のハサミを出して掴み、器用に口へと運びゴリゴリと殻ごと咀嚼し始めた。しかもヤゴの顎みたいにめっちゃ伸縮するギミックも持ってるじゃんコイツ。 

 はー……カッコいい。 


 そのままもっさもっさと食事してるのを横で見ながら俺もご飯タイムと一息つきますか。 



 正直ヤドカリがこんな可愛く見えるなんて思ってなかったわ。ほんと人生何があるか解らんね。

あとがき余談 


フォートレスピリタス・ギガハーミット 


危険度A+++++とかもうSでいいんじゃないかっていうくらいのやべー手前まで来てる。


原因はタマハが美味しい酒のために調子に乗って栄養あげまくった為。

ドラゴンとか食べるヤドカリなんて聞いたことがない。そら進化しますよ。 


Sじゃないのはやはり壁は厚いため分類できないため+という措置が取られた。  

というかAでもやべーのに5つも+あるとか情報が知れ渡れば間違いなく勇者派遣案件のやべーやつである。 



タマハに栄養あげられまくってデブ(進化)った。 実はまだまだ育ってる。  

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