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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
4章 家に帰ろう シンシア目指してどんぶらこ 編
117/202

番外ネキ 飛んで捻ってからの

 前回のあらすじ


 ♪走るー走るー、オサヒーデ〜流れる涙そのまーまーに。


 いつかー馬車に〜、着いーた〜ら。






 はい。 何とか追いつきました。



 ーーーー


 タマ達一行が野営を行っていた同日夜。


 闇夜に溶け込み王都へと飛来する影。


 魔王アルワ。そしてその右腕のターロ。


 蝙蝠に似た漆黒の翼を時折はためかせて、威厳堂々と彼女は飛ぶ。


 ……ターロは? その彼女にターロはお姫様抱っこをされている訳なのだが。


「あっ、アルワさんちょっと速すぎませんか!?」


「そんな事は無い。お前が懸念している落下も有り得ん。それに風避け(魔法)も有るから快適であろう?」


 ─私を難なく抱えて疲労の様子の欠片すら見せずに鼻歌交じりで飛ぶ彼女の名前はアルワ。

 本来はもっと長い名前らしいが、本人も長い名前で呼ばれるのは好きではないらしく、そう呼ばれている。


 私が迷い込んだこの世界にて出逢い、今では右腕的存在として気に入られている。


 ……確かもう─10数年前になるだろうか? いや、もっと前だったであろうか? 魔国に来てから歳は食えど私の見た目は変化していない。

 彼女曰く、私の魔力に干渉されだんだん人間から変質しているからどうのこうの。 と。


 ……それにしては依然として腕力等の変化は見られず人並でしかないのだが……外観も彼女の様に特徴的な肌の色になるわけでもなくその他も地球に居た時と変わっていない……元の世界では結構な高齢の状態で有るわけなのだが、未だ身体の不具合無く元気でいられるのは良い事なのだろう。


 寧ろ往年の腰痛と肩こりは何処かに行ってしまった……

 勿論私は何歳まで寿命が延びているかは解らない。

 が、彼女に拾われて色々と事を起こして来た。 それがまだまだ色々と出来るのは僥倖と思える。



 うーん…… 会社が嫌になり山で一人暮らしを初め、その最中一目で人では無いと理解出来る如何にもな仙人風のおじいさん(神様)に山の恵みを頂かせて貰ってます。 と、御礼をどうしても言いたくて後を追いかけ、足を滑らせて泉に落ち、気が付けばこの世界で目が覚めてはや幾年。


 時が経つのは早い物だとしみじみ思う。


 話に聞く漫画アニメの世界に来た時は少々驚いたが、魔族と呼ばれる彼等は見た目こそ初見は驚くが性格は穏やかな者が多く、私もオークと言う者の亜種として扱われ案外早く馴染めた。


 やはり人間食に関しては探求と言うか知っていると飢えるもので……どうにかこうにか似ている食材を手に入れ四苦八苦。幸い山暮らしの時に学んだ知識が生き、遂には恋焦がれていた日本食をこの世界でほぼ再現する事も出来た。


 ……山生活で普段から作っていて本当に良かったと思う、アルコールに関してはほぼ世捨て人同然だったので多少の密造は許して欲しい。


 そしてその酒の事を聞き付けた彼女にスカウトされ今に至るのだが、昔話はまたの機会にしようか。


 所でコレ、ジェットコースターの比じゃないよ。気を紛らわす為に昔を思い出してみたけどもう無理。怖い! おじさんには無理!


「アルワさん! もう少しだけ速度落ちませんか!?」


「む? すまない、私とした事が少々浮かれていた様だ。そうだな、飛ばした分ゆっくり行っても時間には間に合うであろう」


「ああ、良かった……」


「それにお前を抱える機会はそうそう無いからな、もう少し楽しもう(ボソッ)」


「え? 機会がなんです?」


「お前のやって来た事が切っ掛けでこうしていい機会が作れた、と言ったのだ」


「私はただ食べたい物が食べたかっただけですよ……」


「お前が作った味噌、醤油、それにニホン酒。まだ遠くには出回っていないが、これからそれはこの国の大きな武器となる。まだまだ頼りにしているぞ」


「私が居て貴女の負担が少しでも軽くなるなら僕は喜んで働きますよ」


「ふん? 言う様になったな? これは帰ってからが楽しみだ……」


「ええまあ、お手柔らかに……」


 そして2人。 月の煌めく闇夜を往く。




 ……おっさんお姫様抱っこなんだけどね!





 ーーーーアイダホの私室横のテラスにてーーーー



「そろそろ……か」


「アイダホさん、影が見えました……って誰か抱えてる?」


「あーそれ多分向こうの副官とか右腕とか言ってた奴じゃね? あちらさんが連れて来るとは言ってたけど、成程魔王さんが抱えりゃひとっ飛びだわな!」


 テラスにふわりと着地したアルワ、そしてターロを優しく降ろす。


「はいどーもお疲れさん。遠くから来てもらって悪いね! 茶の1つでも出すけど要る?」


「貴様……失礼。貴方が此処の王か、実際に対面して話すのは初めてだが─随分と王らしくない砕けた話し方だな?」


「だって威厳堂々としてるのって疲れね? アンタも王様やってるんなら解るだろ?」


「……ふむ、一理ある。 兎角友好であることの裏返しとして受け取っておこう」


「そんな感じでいーじゃよ。此処じゃ冷えるから中行って茶飲もうや。酒もあるぜ!」


「貴殿、イケる口か。……実は私も中々好きでな? 会談が終わればやぶさかではない」


「真面目な奴だのー……おっと、紹介しとこう吾輩の横に居るのはヨシヒコ。“勇者”とか呼ばれる可愛い子……どったヨシヒコちゃん、目を点にして」


「私の方も紹介しておこう、この男はターロ。私の右腕だ。外見はさして普通の人族だが此奴はとても良い男……どうしたターロ。お前も向かいのヨシヒコとやらを見て口をあんぐりとして」



「た……た……」


「た?」


「よ……よ……」


「よ?」



太郎(たろう)おじさん!?」「良彦(よしひこ)君!?」


「「どうして此処に!?」」




「え? 2人知り合い?」


「ほう?」



 おっさんと男の娘、世界を越え、巡り逢う。

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