番外ネキ 元凶の あいつ今何してる?
前回のあらすじ
ねこだまし 威力150
バレットパンチ 威力150
ちきゅうなげ 威力150
はたく 威力150
威力大正義。
――――
此処は王都アイダホと魔国の大体中間、ややアイダホ寄りに位置する中級ダンジョン。
主な魔物はクレイ、マッド、ストーン、稀にアイアン、希少種にクリスタルゴーレムと、ゴーレム系のみが出現する鉱石ハンター御用達のスポット。
なのだが。
最近探索者からの噂で
“見たことも無いゴーレムが居た”
“宝箱がしょっぱかったのに良い鉱石がかなり増えた”
や、
はては
“ダンジョン内に現れる謎のメイド”
など全く意味の解らない噂が最近になって流れ始めた。
そんな噂話を嘘か誠か真相を確かめるべく、この俺銅級冒険者アドルフさんは真相を確かめるべくダンジョンに突撃したってわけさ!
此処は門番すら居ねぇ。ゴーレムばっか湧く。見つかる品は鉱石オンリー。
普通の奴らにゃ魅力のねえ場所だが蓼食う虫も好き好きとはよく言ったもんさぁ、俺はこういう方が好きだから冒険者で鉱石ハンターなんだからな!
……ふむ。先ずは第1階層だが……以前と何ら変わりゃしねえ。
……おっと、探索してたらマッドゴーレム君のお出ましだ! 基本的にゴーレムは冒険者にとって相手したくない奴等の五本指だからな! 適当に切って弱りもしない、叩いたところで折れやしない、オマケに繰り出す攻撃は当たりゃ大概お陀仏モンと来た。 そりゃあ嫌われて当然よな。
だけどまァ何にだってコツはあるもんよ。
さぁポーチから取り出しまするはゼンマイの玩具、奴から隠れてジーコ、ジーコと巻いたらあっという間に準備完了。 後はコレをマッド君の巡回ルートに置いて、俺は保護色断熱マントを羽織るだけ! コレで俺は石、俺は壁。 誰も近くにいませんよー?
息を殺して待つこと暫く、のっしのっしとやってきたぜマッド君。
よーし、通れ、通れ……よーしいい子だ。
マッドゴーレムがアドルフをスルーした直後、投げていたゼンマイの玩具が作動。
「ジーー!」 というゼンマイの独特の音を立てながら辺りにバウンドし始めた。
ピクリ、と飛び跳ね回る玩具に反応してルートを変え、1歩目を踏み出そうと脚を上げ─ようとしてゆっくりと前のめりに倒れ、活動を停止。
倒れたゴーレムの腰裏には、鉄の杭が深深と打ち込まれていた。
「ふいー、核が腰か胸かどっちか悩んだけど、予想通り腰タイプで冴えてるわ俺!」
打ち込んだ杭をグリグリと回しながら丁寧に引き抜き、杭の状態を確認する。
「んー、状態良好! 打ち込み機の魔力カートリッジも、まァ1回使っただけだしな、うん。杭の方もまだまだ余裕だわ。おっと、起きる前に掘り出さないと、危ねぇ危ねぇ」
杭と射出機を太腿のホルダーへと戻し、ツールホルダーから板状の物、棒三本、取手を流れるように取り出して組み立ればあっという間に組立式スコップの完成。 ザックザックとゴーレムの腰を掘り起こして取り出すはマッドゴーレムの核。
「おっほー! 杭がギリギリで当たらなかったのか! 傷なしコアとは幸先良いぜこりゃ!」
……と、調子に乗ってたら案の定やっちまったぜ!
いや、マッドやクレイは朝飯前よ、ストーンは後から腰の脆い所のくびれに爆薬上手く押し込めばイチコロ。 アイアンの野郎は先ずは膝裏に腐食鉄の楔を一発ぶち込んですぐ様隠れる、そうすりゃギリギリで見つからずに済んで奴は脚を変に引き摺ってルートに戻るのさ。
今度は先回りか巡回戻りかを待ち伏せて元気な方の膝裏にもう1発! そんで隠れる! その後はルートに戻ろうとしても両足の関節が溶けちまって上手く歩けず、少し歩くとバランスを崩して倒れるのさ。 そしたら俺は急いで近寄って“アシッド”の魔法が詰まった小瓶を首と腕の3箇所に捩じ込んで割っちまえばもう小躍りよ。
え? 首だけ壊せば倒せるのになんで腕にもねじ込むかって?
甘い甘い。ゴーレムは生き物じゃねーんだ。腕一本でも動かせりゃ暴れられてペシャンコよ。 実際ケチって平たくなった奴も居たからな、死にたくなけりゃここぞと言う時はケチらないのが長生きの秘訣さ。
……と、アイアンも倒してウハウハなところに出くわしたのが4本脚の蜘蛛みたいなアイアンゴーレムだったのさ。
確かに見たことない奴だったが腕もねーし4回楔打ち込んでやれば勝てる。
…… と思ったらコレが大間違い。 奴め、まさかの目から炎を出しやがった。
運悪く玩具がこっちに跳ねた瞬間射線の先の俺の足もこんがりだぜ! マントが軽減してくれたが燃えて欠けてもう使えねえ、足も大火傷。
何とか堪えて奴が通り過ぎた後に、スコップを杖替わりにして何とか辿り着いた休めそうな広めの小部屋。 そこで一息吐いてたのさ。
「……あークソ。本当に見たことねえゴーレムが居やがった。ブーツもおじゃんだわ……ま、足1本で済んだのはラッキーだったな…… 我慢してなかったら多分丸焼きだっただろーな。……さて、この足でどうやって帰ったもんか……持ってきたポーションも何故か効きやしねぇ。偽物でも掴まされたか? あー畜生、せっかく上質核やら道中見つけた宝箱から鉱石ザクザクだったのにな……肝心のマントが欠けてンだよなぁ……隠れきれっかなー、いやでも大丈夫に賭けて死にたくねーしなー」
「なるほどなるほどいやはやコレは困りましたね。 隠れるマントは破損、足も火傷で満足に歩けない、しかも現在進行形で結構痛いと来ました」
「そう! そうなんだよ! 実は足が痛くてよー、おじさんもう泣きそうなんだよ、解かってくれるのかいメイドのお嬢さん!
……ん? メイド? ん? ん? なんでこんな所にメイドのお嬢さんが……? なんてこった。 此処は幻覚罠の部屋だったのか!」
「いえいえとんでもない。 幻覚などではありませんよ、私 “謎のお助けメイド” マリエちゃんでございます」
突如現れた“謎のお助けメイド”はアドルフに向かって優雅にお辞儀をする。
「ああそう。現実だとしたら俺を取って食うために出てきたのか? 痛いのは嫌なんで殺るなら頭からガブッといってくれ」
「ですからお助けメイドだと……やって見せた方が速いですね。それっ」
「おわっ!?」
ひょいとスカートの下から取り出した小瓶に入った液体をアドルフの火傷を負った足へと振り撒く。
─すると、逆再生でも見るかのように治っていき、火傷の跡すら残らず完治してしまった。
「足が……治った!? すげえ! アンタは女神だったのか!」
「いえいえとんでもない。 私卑しい商人にてございます。今のは単にサービスで。 ここから買い物といきませんか?」
「買い……物?」
アドルフがゴクリと唾を飲み飲んでマリエを見つめる。
「まーそんな神妙な顔をなさらず、安全に帰れるアイテムの紹介となります。 先ずはコレ! 魔物の書、パトロールゴーレム編! 貴方様が苦戦したアイツの秘密が丸わかり! コレで安心! 大丈夫、マリエちゃんの攻略本だよ! お値段銀貨5枚!
そしてお次は焼けてしまった隠れ身マント! なんとビックリ完全耐熱仕様! ドラゴンのブレスだってなんのその! お値段大銀貨50! 本来金貨一枚ですが特別価格でなんと半額! そして最後に此処のダンジョン限定回復ポーション! コレ一本で何があっても大丈夫! 腕が飛べばくっ付けて飲めばはい元通り! 瀕死の重傷が心配なら割れるように懐に入れましょう。 超強力な魔物嫌気成分配合でしばらく絶対に襲われません! 半日は効果がありますので飲んで帰ってもヨシ。 ただしなぜかダンジョンの外で飲んでしまうと産まれてきたことを後悔するほどの下痢に襲われます。 さぁ、お値段1本大銀貨一枚!」
「買った! 金貨一枚、釣りは要らねえ! 元から助からないと踏んでたんだ。騙されて死ぬのも面白ぇ!」
「はいお買い上げありがとうございました! サービスでブーツも付けちゃいましょう! それではお気をつけてお帰りくださいませー」
「助かったぜ謎のお助けメイドマリエちゃん! 生きて出られたらまた来るぜ!」
「またのご来店お待ちしておりまーす」
ポーションの効果で完全回復したアドルフは意気揚々と脱出し、ゴーレムダンジョンが変化してて稼ぎ時だと帰って仲間に伝えることとなる。
そして転移でマスタールームへと戻り、ロッジがゴーレム製作作業の傍ら一言迎えの言葉を投げる。
「おかえりー。どこ行ってたの?」
「ただいま戻りました。 少々小遣い稼ぎへと……」
「あ、そう。 小遣いかー……は? 小遣い?」
「それよりお茶とお菓子を用意しましたので少しご休憩なされては? あまり根を詰めると尻に来ますよ。ボバーンと」
「尻は関係無いよなぁ!? ……と、ありがとう。そんじゃーちょっと休憩すっか!」
「はい。 ところで今作ってるゴーレムはどういった物で?」
「お、コイツか? 此奴はな……………
「フフっ」
「ん? 今なんかおかしいところあったか?」
「いえいえ。なんでもございません、続けていただいて結構です」
「ん、そうか。 そんでな、此奴が分離して合体うんぬんかんぬん…………