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ハガネキ 〜彼女はメタルでハガネのやべー奴〜  作者: 爆散芋
3章 家に帰ろう 寄り道腕自慢大会編
106/202

89ネキ 聞こえ良く言えば相手の虚を突く暗殺拳

 前回のあらすじ


 むかーし昔、ある山に樵がおったそうな。


 こーん、こーん、 今日も樵は木を切っていたのさ。


 ところがある日、勢い余って大切な斧を泉に落としてしまった。


 すると、泉の中から神様が出てきて、


「お前が落としたのはこの金の斧か? それとも銀の斧か?」


 と、尋ねてきたのさ。


 それに対して男は、


「いや、どちらでもない。……仕方ない、自分で切るか!」


 失くしてしまった物はしょうが無いと気持ちを切り替え、上着を脱いで抑圧していた筋肉を一気に解放して手刀で樵を続けたそうな。


 これが、後にピタ剛羅スが唱えた“万物は筋肉也” や、


 ニューtonの “万有筋力”


 果ては打ーWinの “筋肉進化論”


 に影響を与えたことは言うまでもない。




 ――――




 ――住民街――



 “バフォメット”



「メ゛ェェェ! 早ク騎士ヲ呼ンデコナイトコノ子ヲ食ッチマウゾー!」


「ママ゛ァー!」


「娘を! 娘を返じてください! 代わりになら私がなりまずからァ!」


 幼い少女を人質に取り、既に相対していた冒険者たちも迂闊に手を出せずにしていたところに、息を切らせながら騎士団を探していた町人からの報告を受けて偶然近くを廻っていた第七団長、ルメールへと事態が伝わる。 そして現場へと急行、


「亜人登録をしていない暴れている方というのは貴方ですね? 貴方の要望通りに私が参りました、さあ、約束を守っていただきたい」


「オオ! 来タカ! ヤハリ無闇二探スヨリ呼ブ方ノガ確実ダナ! ……慣レナイコトハ止メダ、疲レル……ホレ、嬢チャン。ママノ所へ……腰ガ抜ケテンナコリャ。オイ! 女! 娘ヲ受取リ二来イ」


「はっ、はい゛ぃぃ!」


 恐怖に震えながらも、娘のために自らを奮い立たせ山羊頭の悪魔男へとゆっくりと向かい、無言で男から娘を返してもらう。


「……五月蝿クテ敵ワン。ソノママ二人トモ黙ッテ俺カラ離レロ」


「……!」


 こわれた機械のように激しく何度も頷いて、娘の口も必死に押さえゆっくり、ゆっくりと山羊男(以下山羊男と呼称)から遠ざかっていく。


 人質が居なくなったところで対峙していた冒険者たちが一斉に飛び掛ろうとするが、ソレを制するようにルメールが大声で止めた。


「おやめなさい!」


 覇気のある一喝に勢いを止め、何故だと言わんばかりに不満を漏らす。


「はぁ!? なんで止めるんだよ騎士団長様よォー?」

「人から魔物に化けやがったんだ、亜人じゃねーなら倒しても問題ねーだろ!」

「此奴の肩持つってのかあ!」


「私は彼の肩を持ちます」


「「「……は?」」」


 ルメールが何を言っているのか理解できず、ぽかんとする冒険者たち。


「暴れるだけなら人質なんて必要無いでしょうし、ですが彼はソレをしました。つまるところ私に用事があるとのことでしょう? 各員、彼と私の周りに人を入れないように。彼の意を汲んで手出し無用となります」


「ソウダ。俺ハオ前ヲ倒シテコノママ何処カヘ行ク。ソレデ仲間ニモ義理ガ立ツダロウ」


「……事情があるとお見受けしました。が、大人しく話してくれそうな雰囲気ではありませんね」


「ヤケクソト言ウヤツダ、流サレタニシロヤルコトハヤラントナ……コレ以上ハ、俺ヲ倒シテカラ聞ケェ!」


 話す用はもう無いと、山羊男はルメールへと突っ込み長い腕を鞭のようにしならせて彼へと打ち下ろす。


 敷き詰められた石張りをクラッカーの如く砕いた拳をルメールはひらりと横へ躱し、


「そおぃ!」


()ヂャア!?」


 どんぶりに入った熱々の麺とスープを山羊男の頭にぶちまけた。


「グオオオ! 何ダコレハ!? 麺とスープダト!?」


「“羅熱麺(ラーメン)”と言われる戦闘用の食物ですね。魔法耐性を無視してダメージを与える面白い武器です。あ、ご心配なく、コレは私が作った物で食べられません。匂いは美味しそうですがまあ、錬金術で作った物ですので……」


「食ベネェヨ! フザケヤガッテ!」


 今度は横からの大振りのフック攻撃。 これを不死鳥のポーズで跳躍して回避し、すかさず腋からおにぎりを投擲。


「ウォッ!? “コメ”か!? コンナ物、効カナ……オグァ!?」


「“おにぎり”という物ですな! 尚魔国ではポピュラーな物ですので勘違いなさらぬよう! あ、勿論これも作った物で4割ほど中の具が爆弾になってます。 その他はサーモンロードや地獄梅……等々! 所謂“爆弾おにぎり”ですな!」



 左右の腋から繰り出されるおにぎりの雨あられ。 べシャリ! と砕けては ドゴン! と爆裂。


「ハァ……ハァ……終ワッタノ「 今 で す !」


 おにぎりの嵐に耐えた山羊男に肉薄して今度は寸胴にてボコボコと煮え立つ麺とスープをたっぷりとぶちまける。


「ウォ゛熱ヂャァァァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!?」


「そして此処でナナバ(バナナ)!」


 思わず浮いた片脚に滑り込ませ、ぐにゃりと踏まれたナナバの皮は容易に男のバランスを崩した。


「オワッ……」


「すかさず異常な硬さで有名な魔国産のヘルカッツォ節を枕に添えてーー上から渾身の分厚くて頑丈な魔水晶灰皿アタック!」


「オギャア!?」


 鋼鉄の刃すら砕くと有名なヘルカッツオ節と、非常に頑健で重い灰皿に挟まれ、目の前に火花が飛んだ山羊男の意識は此処で途切れかけ、意識を失う前に、一言だけ残して気絶。



「騎士ナノ……二、オ前ノ、背中ノ……剣ハ……飾リ、ナノ……カ?」


 ガクリと意識を失った山羊男に対し、聞こえていないのにルメールは律儀に疑問に応えた。


「飾りです。(キリッ) 仮装用のハリボテですね! さ、気絶してるうちに運びますよ! 担架……じゃない、あった。 “神輿”! ささ、彼を縛り付けて奉納しましょ。 ソーレ! わっしょい! わっしょい!」



 手際良く神輿の部品となった山羊男はルメール一団によってエッサホイサと運ばれていってしまった。


 こうして住民街に平穏が戻った。


 残された冒険者たちはあんなに巫山戯た猛者が居ると、世界の広さを知る。





 ルメールVSバフォメット




 WINNER ルメール!


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