プロローグ2
現代日本:狛井神社
「そろそろこの神社も建て直さんといかんな……」
神主姿の男眉間に皺をよせ、そうぼやく。
狛井神社は人里離れた山の奥深くに建てられており、とてもとはいえないが参拝する気になどなれそうにもない。
町の役所からもあまり良い扱いはされておらず、基本放ったらかしである。
「そうですね……確かに、このままでは危なそうですね。狛犬様たちの為にも、一度修繕作業をした方がよろしいかと……」
そう答えたのは、巫女の姿をした女性。長い髪は背後で括られており、清楚な雰囲気を漂わせている。
女性も現状をピンチと見ているようだった。
「どうにか建て直さんといかんのだか、賽銭がたまらんからのう……」
神主はがっくりと項垂れる。
「まあ仕方ないですよ。こんな山奥にある神社になんて、誰が好き好んでくるもんですか。私だってお金の為になんですから」
口を尖らせて呟く巫女。彼女もまた、町から雇われているだけの存在なのだ。そして、こんな山奥の神社に来るのも金の為。仕方がなくなのだ。
「ほら、狛犬様の像にも苔が……久しぶりに洗いましょうか……」
そう言って巫女は神社の中へと入っていく。
白火始郷:狛井神社
ここ、白日始郷はあの世とこの世を繋ぐ【要の世界】
狛井神社はそんな【要の世界】でも珍しい『この世と要の世界を繋ぐ場所』なのだ。
そんな狛井神社にはある少年が二人、暮らしていた。
「なあ、吽形。俺たちの神社に母さんの櫛、置いてなかったっけ? 形見のやつ」
和装に身を包む少年は問う。
もう一人の少年も同様の和装にみを包んでいた。
「ん? あぁあれか。さぁしらん。母さんが死んでからもうどんくらい経つっけ? 久しぶりに墓参りに行こうか?」
マイペースにもそう答えるのは三白眼が特徴の【吽形】と呼ばれた少年だった。
「まあ、そうだな。って、話逸らさないでよ⁉︎ 形見無くしたなんて母さんにどう顔向けするのさ⁉︎」
そう声を荒げるのはもう一人の少年【阿形】だった。丸っこい目をしている。
この二人の頭、髪の毛の上の方を見るとぴょこっと何かが生えているのが見える。『獣の耳』である。
この二人の少年……いや、獣人はこの神社に祀られている【狛犬】であったのだ。