ラプンツェルの驚きと第四ホーム。
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「あの二人は夫婦です」
……。
ん?後ろのトトを振り返り、その顔を凝視しては見たものの返ってくるのは小さな頷きのみで。
「っ……うぇ?」
「この街の住人やギルド員も、獣人のブラック夫婦と言えばすぐに通じます」
嘘だよね?と問い直しても、答えは変わらない。……変わらない!?
「あ、そうだ!先生きっと吃驚すると思うんですけど言っちゃいます!」
ムフフっと笑うユユ。
うーそぉー!これ以上驚くようなこと他にもあるのっ?!
「じーつーはぁー」
ユユがニヨニヨしながらもったいぶったその瞬間、正面に見えるドアが開き……毛玉?が現れた。
「ママーン!お兄が、イジイジするにょん……」
きんきら金のクルクルカールを全身に纏った、いや、絡まった何かが此方へ向かい必死に走ってくる。さっきどこかで見たような突き出たおなかを揺らしながら……。
「パパにょん!お兄を叱ってにょん」
ぽっちゃぽっちゃぽっちゃ。波打つようなおなかと、全体的に丸い子供が、マーちゃんと白猫ちゃんのもとへ一直線。
その光景を呆然と見つめている暇もなく、またドアが勢いよく開き今度はサラサラな赤い髪と猫耳を揺らす少年が走り込んでくる。
「ママ!ママママママァ!!ミールが門番に泥団子ぶつけたんだよ!」
最初の子はどう見ても長毛の全獣型獣人で、二番目の少年は半獣型獣人(猫)だった。
「だって門番にょんが悪いにょ!」
もう、それからは大変!ワーワー言い合う子供達へマールの雷が落ちて、大騒ぎでギルド館内の案内どころじゃない。
☆
「先生、ちょっと……」
唖然として突っ立っていたら、トトが小さな声で内緒話。
「なに?」
振り返り、かがんで問いかけるとトトは思ったより深刻な顔で話し始めた。
「多分紹介されると思うので先に言っておきます。実は、マールには昔恋人がいて……あの少年はその相手との子供なんです」
……え?
「詳しくはまた後でお話しするので、今は顔に出さずに」
うー。めちゃくちゃ気になる。でも、ものすごーく聞きづらいし。後でわかるならまぁ、とりあえず黙っておこう。
「先生、紹介します。息子のノルンと娘のミールです」
「あ、こんにちわ。僕、ノルン・ブラック。102才です」
「こんちわにょん。ミールにょん。6歳にょん」
二人とも礼儀正しくぴょんっとお辞儀。揃って挨拶してくれた。
「えっと、初めまして。私の名前はラプンツェルと言います。よろし」
ノルン君がすごい顔をしてこっちを、私の顔を見てる。え、私、そんな変な顔してますか?!
「えぇっ!?」
「お兄っどうしたにょんっ!?」
ミールちゃんは私よりお兄ちゃんのノルン君を見て飛び上がってるし……元気だなぁ。
「ラララ、ラプンツェル様って……ママとパパが言ってたあの」
いやいや、ラプンツェル様って……マーちゃんたちどんな教育をしてるのかね?
それに、あの少年が、102歳?父親が長命種なのかな。うーん、長命種かぁ……確かブーちゃんとこのコにも何人か居たような気がするけど、もしかしてその中の誰かってこともあるのかな。
しっかし……赤い髪の長命種なんて、いたかなぁ?
☆
「で、ここがブーちゃんの家?」
「ここがもし見つかっても、これなら人間たちの目を誤魔化せるものね!」
「一応弟子一同で相談はしたのですが、こうした方が皆安心だということで」
……目の前にはブーちゃんのお墓。
「最初にお墓参りへ来た時には全く気が付かなかったわ」
何よりブーちゃんの家はもうないと思い込んでいたし。
それにしても、元々地下にあったとはいえ上にお墓を作ろうなんて。
☆
お墓はスライド式で、これは完全な力技で魔法とか一切なしだった。マールが墓石を思い切り右に押し、その下から見覚えのある木製の丸い扉。それはよく磨かれていて凹凸のないこげ茶の扉で、唯一小さな鍵穴がある以外とっかかりも何もない。これは運よく見つけたところで知らない人間には到底どうする事も出来ないだろうと思う。
「先生、鍵をお願いなのねっ!」
懐かしい扉一撫でし、それからは促されるまま鞄から鍵を取り出す。
「あぁ、懐かしいわね!ポルル」
「本当に」
鍵は金で作られている。持ち手が猫の形、鍵先はつるりとした一本の棒でしかない。けれど、セットで作られた鍵穴へ入れればぴったりな形へ戻り、そのままドアノブの代わりになる。
かちゃり。
「さ、入りましょう」
☆
「___うわぁ、ほこりだらけ」
「こほっ」
梯子階段を下りて見れば、中は見事に埃とカビだらけ。
でも、確かにゲームで画面越しに見ていたブーちゃんの部屋そのものだった。
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