ラプンツェルと亜人ギルド
ブーちゃんのホームの鍵?あー、そう言えばブーちゃんが引退するとき持ち物をみんな譲って貰ったんだった。私のホームにはユユとトト以外立ち入りを許可していない。中で生まれたピッピとチッチは別として。
でも、つまり…ブーちゃんのホームは残ってる?
「あの、トトに聞いたのだけど、私の家以外に残っている建物はあまりないって話しじゃなかった?」
「え?師匠が亡くなられたので先生は家や遺産を相続されたのでしょう?」
むぅ。そんな設定あったっけ?それとも、ココがゲームじゃなく現実になったから遺産相続とかの生々しいお話へ繋がるのか、どーだろ。まぁでも、こっちへ来てから見たステータスには載ってなかったし……こりゃ、ブーちゃんのホームへ一度行ってみないと駄目かな?なんて、考えてる間も白猫ちゃんとマーちゃんの説明は続くつづく。とにかく滅茶苦茶長い。それにしても、話を聞く限りの感想だけど、こんなにも人間が嫌いっぽいのに良く二百年もこの場所で暮らせたものだわね。ほとんどの話の端々に、どれほど二人が人間嫌いかって滲み出てるのに。他に行き場がなかったのか、たまにしか会えなくてもトトやユユみたいな過去を知っている友人の側が離れがたかったのか……これも謎。いつか聞いてみよ。
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「―――先生たちがいなくなって、私たちみたいに直接的に関わりのあった者は殆ど人里を出てしまって、街へ残った亜人も本当に少なかったのね。そのなかでも、人間の生存のために協力するものは更にごく少数なのよね。だから、生命の危機を感じ取った人間どもは悪知恵を働かせて、わざわざ自分達の住んでた故郷を解体して捨ててまで【遺跡】のある地へ逃げてきて…まったく!恥ってモノを知らないのよね!とにかく、先生の塔を含め、他に残る【遺跡】も、みーんな人間の街に囲まれて管理だの保護だのと体裁はご立派だけど?言ってみれば国の監視下に置かれてしまったのよね。…ま、実際奴らは【遺跡】自体に近づけもしないのだわね。ほーんと、口先ばっかで弱っちくて、その癖悪知恵ばかり働かせて、私たちからいつ見捨てられやしないかって何時だって怯えてるのよね」
「モンスターに襲われない土地は、今では数えられるほどしかありませんから、移住したくなるのはわかりますが。ですが、今となってはココを人間たちが人様の土地なのだと理解しているのかどうか」
「そうなのね!!そもそもこの場所は、森も含めて師匠の土地なのよねっ!わざわざ師匠が、愛妻の先生のために、塔や小屋の周りの土地を買ったのよね!なのに、あいつらは…これは侵略なのよ!」
「でも、人間全てを見捨てるわけには行きませんから、森を傷つけない範囲ならばと許可を出したのは僕らなんです」
「……仕方がなかったのよね。多勢に無勢で、人間を皆殺しにするわけにもいないってポルルが言ったのよね」
「いえ、戦えないこともなかったのですが…僕らの武器や荷物は師匠の家に置いたままで、手元にはないので慣れない武器では手加減もままならないですし…。仕方がなく、土地を貸す代わりに条件を出したんです。賃貸料を払うこと、森を切り開かないこと、ギルドと僕らには不可侵であることを」
「でもあいつら、全く約束を守る気なんてないのよね!森の木を伐ってるのに私たちが気づかないとでも思ってるのかしらね?!」
「挙げ句、森の動物や薬草まで狩りはじめて、最近はその事で何度も領主の城へ足を運んでいる始末です。結界を張れたら早いのですが、所有者である先生が居なけれどうにもならず困っていました」
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う、ん。内心はうわぁってかなり重い話に引いてるけど、どうしたもんかねー。
まぁ、森への不可侵はブーちゃんホームへ行って権利書的なものを見つけてからなら、結界は張れるけどさ?それって、食べ物なくて人間さんが困りません?的なことを言ってみたら返り討ちされた。
いわく
「外の森ならばともかく、この森の奥には先生の小屋があるのですよ?人間に見つかれば塔の二の舞になります!既に店と塔の周囲を囲まれている以上、小屋まで囲まれてしまえば移動できなくなるどころか住むことさえ難しくなります!第一、あの森には希少な動植物も多くおります。今ではモンスターに侵されていない森は珍しいなどと言う言葉などでは表せられない貴重で希少な財産でもあり、何より僕らの仕事場です。踏み荒らされた森から更に薬草を探すのは、木や土へ対しての冒涜に他なりません!人間に侵略されて良いはずがない。あそこは、思い出の、たくさんつまった森です。家を建てるのも、簡単じゃなかった。森の生き物やエルフに掛け合って、失礼がないよう、何もかもに時間をかけました。……先生が優しいのはわかりますが、あの森には旦那さんのお墓もあるのですよ?」
う……。真剣な表情でトトに諭され、撃沈。いや、私はただ、穏便に行けたらなと思っただけで……うーん、確かに小屋や塔を建てるときは、土地探しから何だかんだと忙しかったっけなぁ。
小屋を取られるのは嫌だし、監視は真面目に最低だ。旦那…ブーちゃんのお墓を荒らされるのも嫌だ。だから、仕方ない。いや、私は人間を森から閉め出す。もう決めた。
「わかったわ。まずはブーちゃんの家へ行ってから、……森を閉じます。あ、でも、他の亜人たちは?」
「彼らはギルドで食料を購入できますから、心配しないでなのね。ここ、亜人ギルドでは、食料含め何でも売ってるから大丈夫よね!」
ん?亜人、ギルド?あれ?なにソレ。
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