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 春の曙  二

  内裏外廊の東、左衛門府(宮中の警備を担当する役所・近衛)の陣のところに殿上人などが多く立っていて舎人(近衛の兵、左衛門右衛門各三百人)の弓などを持ち出して、馬などを驚かせて笑うのを車の中から覗き見ると、殿常人たちの奥のしとみ(小塀)の向こうには主殿司・女官などが行き来していてとても風情を感じました。

 一体どのような恵まれた生まれの人が内裏であのように自由にふるまうのかと想いながら近くの舎人を見てみると、日に黒々と焼けた肌の上のお白粉がまるで解けかかった雪のようにまだらで見苦しいではありませんか!その上に馬がはねて騒いだりして恐ろしげで、自然に体が車の奥に引っ込んでしまうので、殿中の情景を克明に見ることはできませんでした。

 

 八日 昇位なされた人々が、よろこんで方々へお礼を申し上げる車の行き交いの音には普段と違った趣があります。


 十五日 この日小豆粥を食すると年内の邪気を除くという中国伝来の風習があり、そしてまた粥を煮た焚き木を削った杖で婦人を打てば子を産むとの俗信もあり、その家の老練な女房達が杖を隠し持って若女房を打とうと、うかがうのを打たれまいと用心して、常に背後に気を配っている様子は面白く、どうにか隙をねらって打つと、みな面白がって笑うのは大変陽気な雰囲気です。ですからこの時打たれた人は悔しいと思うのはとうぜんです。姫君に新しく通い始めた婿君が朝、参内の支度をしているというのに、その家で幅をきかせている女房が物陰から隙を伺っているのを、姫君に侍っている女房が、様子を悟って笑うのを「かまわないで」と手招きでとめるが、かんじんの姫君は何も気づかないでゆったりと座っているのです。「ここにある物を取りに参りました」などと言って姫に近づいて、走り打って逃げれば、そこにいる一同が笑う。姫のもとに来ている男君も機嫌よく笑うので、姫もさして驚かず、顔を少し赤らめているのみです。

 また女房同士互いに打ちあったり、時には男さえ打つのです。どういうつもりなのか打たれて泣いたり腹を立てたり打った人についてまがまがしい事を口走る女房もいたりしてすごく面白いですね。内裏などという尊いところも、今日は乱れて取り留めもないのですから。

 







 






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