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佐伯さんからみた高城君という男の子

作者: 山本山

高城くんは、最近デザイナーとしてうち中途で入ってきた男の子。

24歳、の割りに童顔。かわいい系?

たまに寝癖で変な方向に跳ねている、くるんとした髪にパーマ?と聞いたら、自前だと。

いっつも灰色のパーカーにデニム姿で、大体は眠そうな顔をしている。


「まだやるの?」

そろそろ帰ろうかな、と高城くんのデスクを除けば、彼はうーんとマックを睨む。


「やー、なんか、しっくりこなくて」

「明日やれば?」

もうとっくに終電もない。

会社に残っているのも自分と高城くんだけだ。


「そーですねー。ねぇ佐伯さん、これどう思います?」

そう言って、高城くんが1枚のデザイン案を差し出した。

「今度のレアンの特集?・・・いいんじゃない?」

「適当っすね」

「わたしデザイナーじゃないもん」

元、デザイナーなだけで。

「えーじゃぁ、佐伯さんだったらこれでだしちゃいます?」

そう聞かれると・・・・

「まぁ、もうチョイだね。かっこいいけど、メリハリにかけるってゆーか、バキッとこないね」

ついデザイン案を見ながら、考え込んで答えると、高城くんはぶはっと笑った。

な、なによ。

「・・デザイナーさんに余計な口出しだね」

「いや、いいんです。俺もそう思って煮詰まってたんで」


そう言って、笑いながら高城くんは帰り支度を始める。


「今日はもう出てこないんで、帰ります。佐伯さんももう上がりですよね?」


促されたまま、高城君と会社をでた。

「珍しいですね、こんな時間まで佐伯さんいるの」

「今日から田中ちゃんが長期休暇だから」

入稿管理の仕事を一緒にしている相棒が休みの為、今週は忙しい。

制作からは外れたものの、やっぱり制作の現場は好きで結局同じ業界の違う職種に落ち着いた。

「あー田中さんパリですっけ?」

そう、相棒の田中ちゃん27歳は彼氏とパリに旅行中。

「ん。いーねー。パリ」

「いーっすねぇ」


自宅までいつもは自転車だったけど、今日は朝雨だったので歩きだった。

普段めったに帰りは一緒にならない高城くんと二人で帰るのがなんだか不思議だ。


「佐伯さんってまえデザイナーだったんですよね」

「前ね。デザイナーって名乗れるほどの仕事はしてないけど」

「大手にいたんですよね?」

「まぐれで入って。すぐ辞めたし」

誰もが一度は耳にした事のある広告代理店のクリエイティブになぜか入社してしまったのは本当だ。正直周りの才能にひいて辞めてしまった。

「もうやらないんですか?」

「やんないねー」

最初の代理店を辞めてから3年ほど転々とデザイナーの仕事をして、自分が作るものが嫌いになって制作からは外れた。



「佐伯さんて独身ですよね」

なぜ、いきなりその話題・・・

「そうだよ」

独身の32歳ですが、なにか?

まっさらの左手薬指を高城君にかざした。


「彼氏いるんですか?」

「黙秘します」


32歳彼氏なし、そんな話を広げられたくないし、哀れまれたくもない。

恋愛なんてどのくらいしていないだろう?

最後に付き合ったのは、23歳の時。あの失恋以来、もう10年近く恋愛していない。


うん。寂れた女だ。


「俺、結婚の約束した人いるんですよ」

ほー。幸せそうだね。

若くて、新進気鋭のデザイナーで。将来を約束した人までいるんか。

私とはえらい違いだ。


「もう10年になるんですけど」

「へー、ってことは中学から?すごいね」

「やー10年たたないと、結婚してくれないっていうから待ちました」

つまり、10年待つほど彼女が好きと。ご馳走さまです。

「もし、10年たっても私を好きだったら、その時は結婚してあげるよって言われたんです」

結婚してあげる、って。だいぶ彼女が優位なんだな。


高城君の顔をのぞくと、いつもより何だか嬉しそうだ。

彼女のことでも考えているのかな。


こんなとき、すこし惨めになる。

わたしが欲しかったものを全部もっているような人間を目の前にしたとき。


そのどれも自分の手の中にないことを再確認するから。







「だから、結婚して下さいよ、佐伯麻子さん」


は?


まったく意味が分からない。


「14の俺に言ったんですよ?『もし、10年たっても私を好きだったら、その時は結婚してあげるよ』って」


は?


「身に覚えないって顔ですね。荻教授覚えてないですか?」

「え、大学のゼミの教授だけど」

「荻の息子です」

「・・・・苗字違うじゃん」

「離婚してますもん」

「・・・会った記憶ないけど」

「酷いですね。ゼミ生何人かで何回か父の家に来てたじゃないですか」

「行った、けど」

「そこで俺、佐伯さんに一目惚れして告ったんですけど」

「・・・覚えてない」

まったく。微塵も。


荻教授やゼミの友人たちを思い出すけど、高城くんの顔なんて思い出せない。


暫く、高城君はあきれた顔をして、ため息を零し、足を止めた。

「あ、ここ俺の家です」

「あ、じゃぁ、おつかれさま」

「いやいやいや。終わってないです、話。とりあえず家入ってください」

「え、やだ。何で?」

「証拠みせますよ、さっきの話の」

「いや、いいよ」


「14のいたいけな少年の心を弄んでそれですか」

「弄んでないし」


「弄びました。証拠みせます、ほら」


高城くん、結構強引な子だな。

マンションの前で押し問答もあれなので、はいはい、としょうがなく彼の家に上がりこむ。



1Kの部屋は、以外に広く、彼らしくすっきりとしたインテリアだった。

あ、わたしが欲しかった椅子だ。

ちょっと悔しい。


ソファに座ったわたしに、ほら、と2枚の写真とコーヒーが渡される。

渡された写真は、22歳の私に14歳の彼。ゼミの教授にゼミ仲間の集合写真。

わー本当に会ってたんだ。

もう一枚に目を移し、ぎょっとした。

「なにこれ」


『佐伯麻子は10年経ったら、高城圭と結婚します。』と額にマーカーで書かれた私と、後ろで爆笑する友人。


「ほら、本当でしょ?」

「わーなんか思い出した」

「思い出してくれました?」

「いや、先生の家にお邪魔して酔って帰って次の日落書きを必死にけしたってこと」

「俺のことは?」

写真と高城君を見比べる。

「確かに、高城くんだね・・・」

「思い出せないんですね」

「ごめん」

あーあ、と高城君はソファにどかっともたれる。


証拠が物語るように、どうやらわたしは22歳のとき彼に結婚の約束をしたようだ。

酔っていた?


・・・思い出せない。


高城くんを除けば、恨めしそうに此方を見ている。


「えーっと。ごめんなさい」


とりあえず、謝る。


「俺、佐伯さんのとこだけ想ってだれとも付き合わなかったんですけど」


う、うそだー


「えっと、それは、ごめん」


「うそつき」


ご、ごめん


「えーっと。でも高城君、若いし、かっこいいし、これから沢山恋愛できるよ」


さり気なく腰を浮かす。証拠も確認したし、ここは謝って退散しよう。


「本当に、22歳の私が申し訳ございませんでした」


ペコリ


「とりあえず、今日は失礼・・・うおぁ!」


手首を引かれ倒れる。

高城くんに覆いかぶさってしまった。


「ちゃんと責任とってくださいよ」


そのままキスされてしまった。





「佐伯さん。だめですよー。男の部屋に簡単にあがっちゃ」




そのまま、押し倒されてしまった。




「・・まさか。佐伯さん処女ですか?」

「ち・・がう」

「けど、きついです」

「ひさし・・ぶりだから」

最中に何を言わすんだ。

ふーん、と高城君はニヤニヤと笑う。


「彼氏はいないってことですね」

ば、ばれた。


「なかでだしていいですか?」

「だ、め、だめ、だめ」

名に考えてるんだ、こいつ!!危険!!

「や、無理です」

「ちょ・・!」


こいつ・・・本当に。


「最低」

「ちゃんと、責任取りますよ。子供は早いほうが良いじゃないですか」


にこり


高城くんはかわいい顔で笑った。





*******







「高城君彼女いなかったって嘘でしょ?」

「えー麻子ちゃんじゃあるまいし、嘘つかないよ」

あれ以来、高城君はわたいを麻子ちゃんと呼ぶようになった。

「だって最初にしたとき色々慣れてれた」

そんなことどうだっていいじゃん、と高城くんはキスをする。


「ねぇ、もう動く?」

「たまに」

そう言うと、高城くんはへーっと私のおなかに手を当てる。


恐ろしいことに、最初の一回で私は彼の子供を身ごもってしまった。


あれから、付き合おうとか結婚しようとか言ってくる高城くんをのらりくらりかわしていたけど、この子をきっかけに本当に結婚してしまった。



「ほんとに結婚できるとわ」


「え?なんか言った?」


「んー?なんでも。幸せだなって」


そう言って、またキスされる。


まぁ


幸せ。ね。





「そうね」



そういって、今度は私からキスをした。




読んでくださり、ありがとうございます。

高城君サイドの話もそのうち書きたいとおもいます。

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