一文字物語 手 作者: 長野晃輝 掲載日:2011/06/23 その王様の手は動かなかった。 しかしその手は感じることができた。 暖かさも冷たさも、痛みも心地よさも王様は普通の人と同じように感じた。 王様の手は優しい人に触れれば温かく、嘘吐きに触れれば冷たく感じた。 ある日王様は自分の右手と左手を触れ合わせてみることにした。 家臣に手伝ってもらい、両の手を触れ合わせたのだが、その王様は何も感じることはなかった。 彼はその時に言った。 「我々の手は誰かを感じるためにあるのだ」