反撃の起点:バイオ・ハッキング
■反撃の起点:バイオ・ハッキング
戦況は圧倒的に不利だった。シェルターへの侵入とジャッジとの戦闘で、かなりのエネルギーを消費したケルベロスは、帰還のための足の確保とリナの保護に専念せざるを得ず、火力支援が期待できない。今日は稼働時間が長かったせいもあり、これ以上の無理はできないが、それをミチルと比較するのは酷だった。彼女がタフすぎるだけなのである。
「ミチル、提案があります」
ケルベロスの声が、ミチルの脳内に響く。
「敵は一撃で倒すのは難しいようです。そこで、先ほど採取した『ジャッジの硬質化細胞』、これを今、あなたのグロック17のバレル内で即席の破砕弾として再構成可能です。通常の9mmパラベラム弾の弾芯をナノマシンでバイオ・ハッキングし、硬質化細胞でコーティングします。威力は300%アップですが……」
「ですが、何よ」
「細胞を『超硬質化モード』へ移行するのと同時に、弾丸の加速を実現させるため、発射時に薬室内で微細な高電流を流します。ライフリングを削り取りながら進むその弾丸に、銃身が持ちません。耐圧限界の超過が予想されます。おそらく撃てて、三発。ただし、三発目は保証できません。あなたの手首の骨と、グロック17の銃身、どちらが先に砕けるかの賭けになります」
ミチルは口角を上げ、不敵に笑った。
「……一発あれば十分よ。それで、あのリーダー格を仕留めるわ。銃なんて使い捨てだし、一丁あれば戦える。予備のマガジンもまだあるしね」
ミチルは視線の先、群れの後方で一際大きく、バイザーの赤い視覚センサーを激しく明滅させている個体を見定めた。他の個体とは明らかに違う、意思を持った動きをしている。ジャッジのいないこの瞬間、群れを統率しているのは、あいつで間違いない。
「リナを……あの子の希望を、ここで終わらせるわけにはいかないの!」
ミチルはあえて銃を持った両手をだらりと下げ、無防備に立ち尽くした。
獲物が死を受け入れたと誤認したスライサーたちが、一斉にトドメを刺そうと跳躍する。
ほとんど同時に、「ジジッ……!」と音を立て、右手にあるグロック17の銃身にまとわりつくように、青白いプラズマが迸った。
「圧入完了。……瞬間硬化。撃ちなさい! ミチル!」
最後まで読んで頂いてありがとうございます!
次回更新は2026/01/05 18:10です。
同時連載の、「契約の魔法少女/マギカ・コントラクト」もよろしくお願い致します。魔法少女×SFの作品です。




