激突:ナンバーズが一体、ジャッジ
■激突:ナンバーズが一体、ジャッジ
地下シェルターへと続く通路には、かつて「鉄壁」と呼ばれた隔壁扉が無残な鉄の塊となって転がっていた。
「……遅かったか」
ミチルの呟きに、ケルベロスの搭載AIハウンドが「生体反応、微かですが反応あります。おそらく子供でしょう。敵の脅威度は極大。情報部との共有データによれば、ナンバーズが一体、『ジャッジ』だと思われます」と即応する。
「ナンバーズか。事前の情報は正確だったようね。地上に出すとやっかいだから、ここで仕留めるわよ。子供の救助を優先したいけど、流れを見て判断する」
土煙の向こうから、重戦車が地面を削るような足音が響いた。
現れたのは、鈍い銀色の硬質外殻に包まれた巨人だった。
視認できる特徴から判断するに、間違いなくジャッジである。目を覆うバイザーに赤く発光する視覚センサーが、予想外の侵入者であるミチルを「検知」し、留まることなく突進してくる。
自衛隊が遺して行った、隔壁内側の防衛ラインにセッティングされたまま、倒されずに残されていた分のフルオート機関銃が、ジャッジに反応して自動掃射される。
しかし、ジャッジはその弾丸を、鬱陶しい羽虫を払うかのように、ほとんど無視して足を止めない。
「ケルベロス、掃射開始!」
火力が足りないと判断したミチルの叫びと共に、ケルベロスの20㎜重機関銃が火を噴いた。火線がジャッジの胸部を叩くが、硬質化細胞の装甲は火花を散らすのみ。ジャッジは止まらない。それどころか、肩に担いでいた元はビルの支柱であったコンクリートの塊を、引きちぎられた鉄筋部分を持って片手で軽々と振り上げた。
「回避!」
衝撃波。ミチルがサイドブースターで横に跳んだ直後、彼女がいた場所のコンクリートの床面がクレーター状に陥没する。
ケルベロスの警告音が耳を突く。
「警告:エネルギー効率2%未満。通常弾による撃破は不可能」
「わかってる……。あんなの、正面からぶつかったら一瞬で肉塊よ。硬すぎる」
ミチルは軽く口笛を吹いて、ジャッジの動きを注視した。言葉の内容とは裏腹に余裕がある。
巨体が動くたび、装甲の隙間──膝裏や脇の下から、蒸気機関のような赤い排熱が噴き出す。そこが唯一の「柔らかい場所」のようだ。
ジャッジが再びコンクリートの槌を振り回す。広範囲を薙ぎ払うその一撃を、ミチルは身を低くして潜り抜けた。しかし、ジャッジの反応速度は予想を超えていた。空いていた左拳が、回避運動中のミチルの背中を追って、これを掠める。
「くっ……!」
衝撃で吹き飛ばされ、特殊繊維で編み込まれたセーラー服状の戦闘スーツの裾が裂ける。
だが、その瞬間──。
破れた布地から漏れた微弱な電流が、戦闘スーツの「ステルス迷彩」を強制起動させた。何らかの外的要因で戦闘スーツが傷んだ場合、インテリジェンスを与えられたスーツ自身が、ミチルの身に危機が迫っていると判断、確実にこれを回避できるように、そういう仕様になっている。ミチルの輪郭が、陽炎のように背景へと溶け込んだ。
ジャッジの赤く光る視覚センサーが、目標を見失い左右に彷徨う。
(初めて、あいつに感謝するわ)
ミチルは、頭のおかしいと評した開発者の顔を思い浮かべながら、幽鬼のようにジャッジの背後へと回り込んだ。
「こっちよ、ウスノロ!」
姿を現し、挑発する。激昂したジャッジが振り向こうとするが、自分の立ち位置とケルベロスの射線を正確に把握するミチルは、それを許さなかった。
彼女の両手に、魔術のような鮮やかさで、グロック17が顕現する。
「フルバースト! 右膝裏一点集中!」
ミチルのツーハンドから連射された9mmパラベラム弾と、ケルベロスの全火力が、ジャッジの右膝の裏面を同時に貫いた。
さすがの硬質化細胞も粉々に砕け、真っ赤な熱気が噴き出す。巨体が膝を突き、崩れ落ちる。その際に晒されたのは、うなじ付近で不気味に脈動するバイオ・チップ、「制御中枢」だ。
ミチルはグロック17の銃口を、その中枢に直接押し当てた。
「判決……死刑!」
数発の銃声が轟く。零距離射撃がジャッジの脳幹を焼き切り、銀色の巨人が沈黙した。
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次回更新は2026/01/02 18:10です。
次回、バトルと出会い!
同時連載の、「契約の魔法少女/マギカ・コントラクト」もよろしくお願い致します。魔法少女×SFの作品です。




