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静かなる予兆

 ■静かなる予兆



 ミチルがリナを居住区画へ案内しようとしたその時、ケルベロスの声が彼女の脳内に直接響いた。リナには聞かせたくない内容らしい。


『ミチル。リナ・ハヤセの初期スクリーニングが完了しました』

『……どうだった? 怪我以外に何か異常は?』

『肉体的な損傷は軽微です。しかし、血液データの解析結果に……不可解なプロトコルを検出しました。彼女のDNA配列の一部が、ナンバーズの制御コードと「共鳴」しています』


 ミチルの足が止まった。リナは少し離れた場所で、ラボのロボット掃除機を物珍しそうに追いかけている。


『共鳴……? どういうこと』

『現段階では推測の域を出ませんが、彼女の両親が抹殺されたのは、偶然の遭遇ではない可能性が高い。彼女は、ナンバーズを「完成させるため」のミッシング・リンク……。プロジェクトにおける「適合者」としてマークされています』


 ミチルはリナの背中をじっと見つめた。

 無邪気に笑う少女の体内に流れる、冷酷な実験の残滓。


『……この件については、リナの前で言わないで。あの子には、ここはただの「避難所」だと思わせておきたいの』

『了解。ですがミチル、追手はすぐに来ます。彼女という「鍵」を手に入れるために』


 ミチルは腰のホルスターに収まった新しい銃の感触を確かめ、リナへ歩み寄った。


「リナ、お腹空いたでしょ? ここの合成食品、味は最悪だけど……栄養だけはあるから」

「うん! お姉ちゃん、ありがとう!」

「そのうち、何か美味しいモノも作ってあげるわ」


 ケルベロス(ハウンド)が何かを言いかけたが、ミチルは殺気を放ち、黙らせた。

 差し出された、リナの小さな手を握りしめる。

 その体温ぬくもりを守るためなら、何度でもこの戦闘スーツを血に染め、銃を焼き切る覚悟が、ミチルの中で静かに、しかし確実に固まっていた。

最後まで読んで頂いてありがとうございます!

次回更新は2026/01/10 18:10です。

過去作も、どうぞよろしくお願い致します。

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