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【第2版 あとがき】
20余年を経て再び、彼の日記と向き合っていることに感慨を覚えている。
国境付近における人族との緊張の高まりを受け、この本が再び注目されることになったことは喜ぶべきこととは言えない。しかし、第1版では削除せざるを得なかった部分――主に当時の為政者に関する彼の〝忌憚のない意見〟――を加え、完全な形でこの日記を世に出す機会を得られたことは喜ぶべきことだろう。
王政の時代が終わり、共和制の時代がやってきた。新しい時代に彼が遺した言葉がより正確に、広く、長く受け継がれることを祈って。
ところで、第1版が出版された当時、独身だった私は愛すべき妻とめぐり逢い、愛すべき娘を授かった。第2版が出版される頃、娘は11才の誕生日を迎える。彼の娘、アイエネと同い年になるのだ。
ニザラヌ暦9年3月23日 愛する妻と娘のいる我が家にて――。




