異次元のシェアハウス
第1話:はじまりの部屋(301号室)
「見つけに行こう、一生の仲間を。」
そんなキャッチコピーにつられて、ぼっちの僕はシェアハウスの内見に申し込んだ。
301号室だけ、インターホンがないから、
裏拳でノックすると、思ったより大きな音が廊下に響いた。
「はあーい」
のんびりした声が返ってきたけど、ドアは開かない。
「家賃を持ってきました」
そう言うと、「ドアの下から通してください」と返事が。
音楽のボリュームが上がった。
ここはホテルじゃない。ユースホステルでもない。
でも、ただのアパートとも違う。
一緒に住む人たちは、家族でも友達でもない。
でも、見ず知らずの他人よりは、ちょっとだけ近い。
このシェアハウスには、いろんな人が住んでいる。
そして、いろんな部屋がある。
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第2話:302号室〜305号室
302号室は、何か企んでる部屋。
歴代の住人がなぜか集まる。
「ロケット」「爆弾」なんて物騒な会話も聞こえてくる。
303号室は、考えを食べる猿。
「君の夢、スパイスかけて食べちゃおうかな」
食いしん坊で、夢を味見するのが趣味らしい。
304号室は、ファンシーモンスター。
十二単みたいに重ね着して、スマホをヘッドホンにしてる。
かわいいものをぶら下げて、乙女全開。
305号室は、相思相愛の二重人格カップル。
鏡に向かって会話してる。
「愛してるけど、釣り合ってるか不安なの」
いつも互いのせいにしてケンカしてるけど、仲はいいみたい。
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第3話:306〜310号室
307号室は、ラッキーセブンのナナコ。
「ナーナナナ」が口癖。
7月7日7時7分7秒生まれらしい。年齢不詳。
309号室は空き室。でも、何かいる気がする。
「ダークマターが充満してる」って誰かが言ってた。
異空間とつながってるかも?
310号室は、サタンとサンタが同居。
普段はサタンだけど、クリスマスになるとサンタになる。
公式のサンタ資格を持ってるらしい。
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第4話:311〜315号室
311号室は、笑い声の部屋。
キャッキャッと明るい女性の声が響く。
僕は勝手に「キャハハ」って呼んでる。
312号室は、針だらけのハリー。
全身ピアスみたいな男の子。
鍼灸を極めてて、畳に針を打って寝るスタイル。
313号室は、お絵描きの世界。
ドリーミィな女の子が、星空みたいな目で絵を描いてる。
パステルカラーの服に、飴玉を頬張ってる。甘党。
315号室は、おしまいの部屋。
何も捨てられない。全部に思い出がある。
まるで物の墓場みたい。
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最終話:地震と記念日
ある日、地震が起きた。
みんなの安否を確認するため、リビングに全員が集まった。
初めて、異次元シェアハウスの住人が全員そろった日。
点呼をして、みんな無事だった。
それは、ある意味で貴重な記念日。
そして、僕たちの物語の最終回だった。
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