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走るのが大好きで駆け回ってたら賞金首にされていた

作者: 藍色黄色


「待ちやがれ! ためこんだアイテム落とせやコラァッ!」


 後方で怒鳴り声が上がった。


 声を張り上げるのは一人じゃない。


 振り向くと離れた位置に斧が見えた。


 槍、剣。色んな武器を持った男の人が追ってくる。


 何で私追われているんだろう。


 これはフルダイブ型VRゲーム『Idealアイディアル selfセルフ onlineオンライン』の中だ。


 私は陸上部だった。足を怪我して引退した。


 それから部活のない日々を送っていたけど、元気のない私を見かねた親友にゲームを進められてログインを決意した。


 キャラメイクをした後にうつった世界は広々としていた。


 生身じゃ全力で走れない。


 でもゲームの世界でなら思いっきり走れる。


 全力の疾走にこたえてくれる体を得て、私は夢中になって走った。怪我をした日からの時間を取り戻すように全力で駆け回った。


 駆け回るついでに薬草や鉱石を採取していると、武器を背負った男の人たちに襲われた。


 後で知ったことだけど、彼らはプレイヤーキラーと呼ばれる人たちだった。


 Idealアイディアル selfセルフ onlineオンラインにおいては、プレイヤーにキルされるとアイテムが失われる。


 プレイヤーキラーの狙いは、私が駆け回って集めたアイテムにあった。


 私は抵抗した。


 石を投げたりスリングショットで頭を撃ち抜いたりと、逆にプレイヤーキラーをキルしてあげた。


 お世辞にもほめられたことじゃない。


 キルした人たちに付きまとわれないように、私は銀色のキツネ面で顔を隠した。


 面倒ごとを避けたいならゲームから離れるのが一番だ。


 でもこのゲームの世界は、足が壊れた私でも思う存分に走れるパラダイスだ。やめるなんてとても考えられない。


 私は日課の素材集めで草原や森を駆け回りつつ、襲いかかってくるプレイヤーキラーを返り討ちにする日々を送った。


 襲ってくる彼らのことはうっとうしかったけど、キルするたびに増えるアイテムを眺めるのは悪くない気分だった。






【アイセ】Ideal self online part2001【アイディアルセルフオンライン】


3名前:理想の自分

くっそ、初心者をキルしようとしたらやられた


4名前:理想の自分

初心者って?


5名前:理想の自分

律儀にアイテム採集してる女の子。銀色のキツネ面してる


6名前:理想の自分

その女の子可哀想


7名前:理想の自分

希少な女性プレイヤー引退に追い込むなよ


8名前:理想の自分

だからこっちがやられたんだって。初心者のくせにめっちゃ速くて攻撃当たんねえの


9名前:理想の自分

報酬ため込んでて足速いって、まるで某RPGのメタル系モンスターみたいだな


10名前:理想の自分

>>9

仮面が銀色ってのもそれっぽいよな。落とすのは経験値じゃなくてアイテムだが


11名前:理想の自分

メタルキツネか


12名前:理想の自分

その名前かわいくない。メタルこんこんでよくね?


13名前:理想の自分

絶妙にかわいくて草


14名前:理想の自分

大丈夫か? 

最近初心者に対する嫌がらせの取りしまり厳しくなってるぞ


15名前:理想の自分

大丈夫も何もプレイヤーキルは権利だろ


16名前:理想の自分

でも初心者はそんなの知らないしせっかく集めたアイテムが奪われるとかやってられんだろ


17名前:理想の自分

>>16

俺の友だちもそれやられて辞めたなぁ。確かに初心者をキルするのはマナー違反だよな。


18名前:理想の自分

初心者入らなくなったらそのジャンル衰退するしな


19名前:理想の自分

ゲームのために>>3みたいなやつは消えた方がいいのかもな


20名前:理想の自分

いやいやねーからwこんなことでBANなんて


21名前:理想の自分

>>20

あれ、ビビってる?w


22名前:理想の自分

>>21

ビビってねーし


23名前:理想の自分

>>22

さらばビビりくん。君のことは忘れない






「最近悪質なプレイヤーがアカウントはく奪されたんだって」


 スマートフォン越しに友人がそんなことを言った。


「悪質って?」

「初心者狩りだってさー。こりずに繰り返してた連中がBANされたみたい」

「あーいたなぁそんな人たち」

「日向も被害にあってたの?」

「うん。アイテム集めてたらいきなり攻撃してきたんだよね。全員返り討ちにしてやったけど」

「へえ。ってことは日向強いんだね」

「どうかな? あの人たちが弱かっただけな気がするけど」

「それはそうかも。強い人はもっと美味い狩場でプレイヤーキルするだろうし」

「レベル上がってもあの手の人たちが絡んでくるの?」

「そりゃそうよ。プレイヤーキラーとゲームは切っても切れない関係なんだから」

「それは嫌だなぁ。アイテム取られないようにもっと強くならなきゃ」

「がんばれー。じゃあ私お風呂入るね」

「うん。じゃあまた明日学校で」


 通話を切ってスマートフォンをテーブルの上に置く。


 私はベッドの上に横たわった。ヘルメット型のゲームハードをかぶって電源を入れる。


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