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一章第4節 幕間 微かな熱、宿るもの




空に向かって湯煙が立ち上る


暑さと地熱で、景色が揺れる。


この場所は、変わらずここにある


周囲の熱が少し下がり、水気混じりの馴染みの空気が肌に刺さる。


エララがここへ向かってきているのだろう。


通りに視線を落としたとき、見慣れた姿が目に写る。


「インフェリアさーん!」

清涼な声が湯気の中を通り聴こえてきた。


光に照らされ、一層鮮やかに映える赤い髪。

曇りのない眼差し

その場にいるだけで

微精霊たちも、楽しげに舞い出す


アグニス


屈託のない笑顔。自然体で、あたたかな熱を纏った子


私の容姿は幼子だが、あの子は最初から私の事を「インフェリアさん」と呼んだ。



──きっと、焔の血がそう感じさせているのだろう。



後を歩くエリザとヴィクトリアも肩を並べてこちらに合図を送っていた。


生まれた時から、何ひとつ変わらない。焔に連なる子らよ。どうか健やかで。


「用意できてるわ。入ってらっしゃい」

飛び石をあしらった庭を抜け、

湯のほうへと、導く。


アグニスは、到着するなり元気よく服を脱ぎ捨て、湯へと飛び込んでいく。

エリザも続き、ヴィクトリアは脱ぎ捨てられた衣服を丁寧に拾い上げ、棚の上にたたんでいった。


煙の先からはしゃぎ声が響く。

微精霊たちも、誘われるように、湯気の中をくるくると舞っている。



綺麗に畳まれた衣服の隙間から、ふいに小さなものが転がり落ちた。


赤い石をあしらった小さなネックレスだった。


そっと、拾いあげると

暖かな熱を感じた。

柔らかな“想い”が、そこに宿ってるのだろう。


微笑ましい想いを噛み締めながらそれを棚に戻した時


背中をなでるような冷たい感覚が体を走る


「あら、ちょうどいいところに来たわね。アグニスたちは中よ」

後ろにいた、エララに声をかけると、彼女は静かに首を振る。


「私は……やめておくよ。湯とは、相性が悪いから」


そう言って、足早に離れの方へ向かっていった。


恥ずかしいのねあの子


遠ざかる背中を見つめながらその姿を見送る。


──よかったわね、

久しぶりに、あの子に会えるのだから。


この日の為に、特別に、みんなの好物も用意してある。


アグニスたちの笑い声を背に母屋に向かう。


静かに、そしていつもの日常へと戻っていった。


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