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第10話「テニスをなんだと思ってるんだ!」

 ※

『木ノ下敦也。部内戦順位5位タイ』という知らせを受けたのは、俺が負けた翌日の朝だった。

 準決勝以降は、しっかりと順位を決定するが、準々決勝までは負けたら全員同じ順位となるシステムのため、昨日負けた組は全員5位タイになる。


「まぁ……よかったっちゃ、よかったか……」


 正直負けたのは悔しい。実力が遠く及んでいないということを身に染みて感じさせられた。

 こんな精神状態で、まともにテニスが出来るとは思えない。きっと戦っていれば負けていただろう。


 俺は身支度を手早く整えてから、二階の俺の部屋から一階へ降りる。母さんは「おはよー」と言いながら朝のニュース番組を見ていた。

 ダイニングテーブルには既にピザトーストと市販のヨーグルトが準備されていた。


「…………」


 俺はピザトーストを取ろうとして、ふと自分の右手に目を止めた。


『俺、強くなりますから』

『私も、強くなるよ』


 昨日の出来事が脳裏によぎり、俺は握った先輩の手の感触をじんわり思い出す。


 柔らかかったなぁ!


 先輩の手は、思っていたよりずっと小さく感じられて、思っていたよりずっと柔らかく、少し力を込めれば折れてしまいそうな手だった。


 …………どこからあんな威力のボールを打っているのか気になるな。

 感触を思い出すとついテニスに関連付けてしまうのは俺の癖だ。こりゃテニス馬鹿って言われるのも納得。


 俺はまだ少し温もりの残るピザトーストを口に咥える。そういえば先輩は朝どんなものを食べるのだろう? パン派かご飯派か、すごい些細なことだが、こんなことでも知りたいと思えてしまう。


「すごいな……」


 本当に、恋ってすごい。


「ほんとすごいわよね! 敦也知ってる? この子」

「?」


 と言って母さんが俺に指で差したのはテレビ画面に映るVTuber。


「いやーマルチエンターテイナーって言うんだっけ? 一人でなんでもしちゃうなんてすごいわよね」


 詳しくは知らないがそのVTuberは『チョコ・コロネ』という名義で活動している。俺の周りにVTuberに詳しい奴がいないので詳しいことは何も知らない。


「一人でなんでも……」


 強くなる、と約束した以上、俺は強くならねばならない。あの郡山先輩に負けないくらい強く。

 全国にはきっと郡山先輩より強い連中がうじゃうじゃいるに違いない。


「ごちそうさま」

「はーい、流しに置いといて」

「ういー」


 俺は食器を流しに置くと、すぐにラケットバックを担いで「いってきます」と言って家を出た。

 落ち込んでいる暇などない。俺が出来るのは強くなることのみなのだ。



 ※

 部内戦が決勝まで終わった日の翌日の昼休み。


「それでは県大会予選、個人の部のメンバーを決めたいと思う」


 顧問の先生に呼び出されたのは俺を含んだ個人戦メンバー男子十三人。同じく女子十三人。その中には当然姫野先輩や小鳥遊の姿もある。


 決め方は至って単純。順位が上の人から好きな枠を取っていくのだ。ただ、ダブルス競技はペアを組む人との相性もあるので、すでにペアが決まっている人以外は選びづらい。


「それでは男子1位、中山大賀」

「はい。シングルスでお願いします」


 一年生での部内戦1位は快挙。先輩たちはさぞ悔しいだろう。俺も、さらに大賀と差を付けられたような感じだ。


「女子1位、竜田雛(たつた ひな)

「シングルスで」


 女子の1位は3年生の竜田先輩らしい。

 その後も徐々に出場枠が埋まっていく。


「────女子3位、小鳥遊心」

「…………えー」


 小鳥遊が怪しく笑いながら横目で俺のことを見る。いやいやまさかな……? だって小鳥遊は俺と姫野先輩がペアを組む約束をしてることを知ってるわけだし、流石にそんなことはしないだろう…………多分。


「ミックスダブルス1番で!」


 やりやがった!

 そして次の瞬間、男子側がざわめいた。それもそのはず、小鳥遊は期待の新人かつ超美少女。

 この1ヵ月弱で、一部では、美しい系の姫野葵、可愛い系の小鳥遊心と言われるようになったらしい。


 次は男子の5位タイの優先順位1位の、校内元ミスターコングランプリ獲得経験のあるらしい先輩。名前は確か……


「では男子5位工藤飛鳥(くどう あすか)


 名前までカッコイイ!!! 男に『飛鳥』と名付ける親のそのセンスに眼福だ。さらには端正で整った顔立ちをしていて、 高身長でスタイルもいい。

 文句の付けどころのないイケメン男子!


「ミックスダブルス1番で」


 声も良い! 低音イケボや……。

 そして次の瞬間、男女ともに「おぉ!」と沸き立つ。それもそうだ、美男美女がペアを組むのだから色恋沙汰を妄想するだろう。


 テニスをなんだと思ってるんだ! 真剣勝負の場だぞ、色恋沙汰を持ち込んじゃだめだろう! まったく! (特大ブーメラン)


「えー次は────」


 その後、シングルスとダブルスが残っていき、女子5位タイの優先順位最下位の姫野先輩の番になった。

 あれ?


「では女子5位、姫野葵」

「はい!」


 あれあれ? ミックスダブルス1ペア分枠空いてますけど……。

 昨日先輩とは『強くなろう』『来年頑張ろう』って意志を固めてたけど……これって……


「ミックスダブルス2番でお願いします」


 瞬間、女子側が「おー!」っと盛り上がり、男子側が「嘘だー!」「くそー!」っと皆悔しがり、その視線は全て、男子5位タイ優先順位最下位の俺へと集中する。


「では男子5位、木ノ下敦也」

「はい! ミックスダブルス2番でお願いします!」


 一度諦めかけた約束だけど、どうやらその約束を諦めるのは早いらしい。

 俺が姫野先輩の方を見ると、先輩も俺の方を見ていたので目が合った。


「(がんばろーね!)」


 先輩は口パクで言ったはずなのに、何故かしっかり聞き取れた。

第10話ありがとうございました。

これにて部内戦編は完結です。次回は番外編を1話挟んでから新章へ入ります。先に言います。次章はイチャラブ多めです。


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