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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第七章 八重野奈波 17歳
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奈波と須崎

「えっ、大学は何処を受験するかって?」


高校2年生の夏、奈波は千里にこんな質問をされ、しばらく考え込んでしまう。

「奈波は1年生の時から成績良かったもんね。やっぱり東大にチャレンジするとか?」

「う~ん、それも面白そうだけど、ちょっと気になってる大学はあるんだ」

「何処よ?」

「ああ~、ダメダメ。この子は前から決めてる大学があるの、私は知ってるから」

愛華が、横から会話に口を挟む。

「だ・か・ら、何処なのよ?」

「東京外語大だよ。B組の穂積が受験するから」

愛華の言葉で、奈波は顔を真っ赤にして(うつむ)いてしまう。

「穂積か……やっぱりな~。最近はしょっちゅう会ってるからね」

「いや、まあその……会ってるのは確かだけど」

「20人の告白を断った伝説のあんたが、あんな冴えない穂積に一途とか……世の中どうなってるワケよ? 断った中には須崎先輩もいたんだからね!」

「えっ、本当なの奈波!? あのイケメンで有名な須崎先輩をフルとか、どんだけ罪深いんだよ」

矢継ぎ早に問い詰められ、奈波はしどろもどろになってしまう。

「あ、あのさ……勝手に二人で盛り上がらないでくれる? それに、告白を断ったってのも大袈裟(おおげさ)だと思うけどな」

「うわあああ、モテる女の嫌味は心に刺さるね~。愛華、涙を拭くからハンカチを出して!」

愛華はサッとハンカチを出すと、千里は涙を拭くような素振りを見せる。

そのやり取りを見ていた奈波は、思わずフフフと笑い出してしまう。

「でもさぁ、奈波って穂積と付き合ってることになってるの?」

「えっ……いや……そういう関係じゃないけど」

「嘘でしょ!? そんなに長いこと引っ張ってるの? あんたバカじゃん」

「……言い方がキツイな」

「大丈夫だって、奈波から告白しちゃえば一発OK貰えるから。私たちが保証する」

「高校生活は短いよ~。受験シーズンの前に青春を満喫(まんきつ)しときな」

そう言うと、千里は奈波の背中をパンパンと叩いて、教室にある自分の席へ戻って行った。


――放課後。


奈波は海斗と会うため、図書室へ向かっていた。

千里が言う通り、奈波は学校でちょっとしたアイドルなので、二人だけで会っているのはすでに噂になっている。

海斗を強く(ねた)む者もいたが、彼自身は特に気にする様子もなく、その(いさぎよ)さが奈波にとっても頼りがいがあるように見えていた。

……そして奈波は足早(あしばや)に廊下を歩いていると、前方から先輩の須崎が歩いて来るのが見えた。


「あっ……須崎先輩」

「やあ、奈波ちゃん。元気?」

「は、はい。元気です」

やはり告白された手前、断った奈波には罪悪感が少しだけ残っている。

「やだなぁ、よそよそしくしなくていいよ。俺が君を勝手に好きになったんだから」

須崎の言葉はいつもストレートで、奈波も告白された時はドキリとした。

しかも端正(たんせい)な顔立ちのため、奈波と同じく学園のアイドルとして、女学生からの人気も極めて高い。

「図書室へ行くの? 確か今は穂積君と付き合ってるんだよね?」

「えっ……誰がそんなことを?」

「さすがに君みたいな有名人は隠せないと思うよ。俺だって君にフラれた時は、すぐに噂が広まったからね」

……その時、須崎は奈波の腕を強く(つか)んだ。

「痛っ! 放してください!」

()けちゃうなぁ。俺と比べて、あんな奴の何処がいいんだよ? どう見たって、俺と付き合うのがこの学校でベストでしょ」

「ベストかどうかは私が決めます。穂積君が待ってますから、いい加減にその手を放してください」

須崎の手を奈波は振り払うと、彼の横をすり抜けて図書室へ向かおうとする。

「そうか……じゃあいいことを教えてあげよう。もう42回、穂積海斗は死んだんだよ。彼を助けなくていいのかい?」

「えっ……」

奈波は須崎の言葉に驚いて振り返ったが、すでに須崎の姿は消えていた。

(42回……?)

その数字に奈波は胸騒(むなさわ)ぎを覚えたが、すぐに図書館へ駆け足で向かい、いつも海斗と会う机の席に座った。

(まだ来てないな……)

心臓の鼓動(こどう)が異様に早くなり、奈波の額から少しだけ汗が流れ落ちた。

「どうしたの? ずいぶんと汗をかいてるようだけど、もしかして走って来た?」

すると、背後から聞き慣れた声がしたため、奈波は笑顔で振り返ると、そこには参考書を手にした海斗が立っていた。


(なんだ……ちゃんと生きてるじゃない。心配して損したよ)

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