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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第七章 八重野奈波 17歳
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現実と夢

奈波は驚いてその男を見る。

今まで気が付かなかったが、タキシード姿の男は背丈が2メートルを超えており、奈波が思い切り顔を上げないと、視線が合わないような大男であった。

「刺客だな!」

「その通りでございます。名はソルニトスと申しますので、以後お見知りおきを」

奈波は旅行鞄(りょこうかばん)を両腕で抱え、即座に後ろへ下がってソルニトスから離れる。

「おやおや、そこまで警戒するとは。私に明確な敵意でも感じるのですか?」

「さっき、メモヴェルスの欠片を何処かへ転送すると言ったな! 私が熱海駅へ飛んだのも、おまえの仕業なのか?」

「……左様。我々の手に掛かれば、貴方一人を遠くへ転送するのは造作もないこと。大人しく私にメモヴェルスの欠片を渡しなさい」

「丁重にお断りするわ」

「……往生際(おうじょうぎわ)の悪い娘さんだ」


――次の瞬間、ソルニトスは前へ飛び出して奈波の首を鷲掴(わしづか)みし、高々と頭上に持ち上げた。


「がっ!」

「ご安心なさい、絞め殺したりはしません。その鞄にメモヴェルスの欠片が入っているのですか?」

「う、うるさい……!」

「やれやれ、勝手に探しますよ」

ソルニトスは落ちている旅行鞄を手に取ると、片手で中身を調べ出した。

「おお……ありましたね。では、こちらで(あず)からせて貰いますよ」

そしてソルニトスは、持ち上げていた奈波の体を地面に叩き付け、手で頭を押さえて動けないようにする。

「ぐはっ!」

「……よくお聞きなさい。貴方たちは、我らの同胞(どうほう)を殺し過ぎたようだ。この恨みは万死に値するものと知るのです。我々が創造したこの世界で、今までの罪を(つぐな)うといい」

「罪を償うだと……? よくもそんな言葉が出るものだな! 私たち人間を散々(もてあそ)んでおいて、自分たちはどうなんだと言いたいよ!」

「我々と人の子を同列に語るとは……とうとう頭がおかしくなったのかな?」

ソルニトスは手に力を入れ、奈波の頭をギリギリと締め上げる。

「39回だ……現時点で、穂積海斗は39回死んだのです」

「な……に……?」

「今後も、この数字は増えるでしょうな。文字通り、万死に値するまでね」

ソルトニスはニヤリと笑い、奈波の頭を押さえていた手を放した。


――すると、奈波はベッドから落ちて目を覚ます。


「……えっ?」

目を(こす)って周囲を見ると、何故か渋谷駅ではなく自宅の部屋に戻っていた。

「嘘……さっきまで刺客と話していたのに……?」

奈波は痛む体を(さす)りながら立ち上がり、自分がベッドから落ちて目を覚ましたことを確認する。

(今までの出来事は夢? そんなはずない! 確かに私はメモヴェルスの欠片を探しに、渋谷駅へ行ったんだ!)

現実と夢の境界があまりに曖昧(あいまい)なため、奈波は不安から(うずくま)って考え込んでしまう。

(弱気になってはダメだ……顔でも洗って少し冷静にならなくちゃ)


……奈波は部屋から出て洗面所へ向かうと、冬の冷たい水で顔を洗う。

その後にタオルで水を拭き取り、鏡に映る自分の顔をしばらくジッと見つめた。


(もう一度、メモヴェルスの欠片を探しに行こう。ソルトニスと名乗った刺客は、別の場所へ転送すると言っていたが、何処に落ちているか分かる能力が私にはあるから、絶対に見つけてやる!)

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