Fire Element
体内からの脱出に成功したマラーニャだったが、すでに満身創痍の状態で、身体の所々が胃液で溶かされて剥がれ落ちてしまっている。
だが、本人は気にする様子もなく、長身のツヴァイヘンダーを肩に抱えて、七奈美と門脇の前で互いに睨み合った。
「コールダスクは何処よ?」
マラーニャは質問するが、二人は答えない。
「時間がないんだ、さっさと喋りなよ。アタイが直々に原初の力をあいつへ伝授してやんだからさぁ」
「……どういう意味?」
「いいから教えろって言ってんだ! アタイが死んじまうだろうが!」
七奈美と門脇は困った様子で顔を見合わせたが、渋々、コールダスクが倒れている場所を指差す。
マラーニャは気を失って倒れている彼に歩み寄ると、胸ぐらを掴んで無理矢理起こし、パンパン! と2回ほど頬を引っ叩いた。
「うっ……俺は一体……?」
「目を覚ませ! テメェに原初の力の一つ、『火』の技を教えてやる」
「なんだと……」
「アタイの命と交換で、原初の力を与えてやるって言ってんのさ。メモヴェルスの欠片を出しな! ここで過去を上書きしてやるから」
コールダスクは意識が朦朧としながらも、懐からメモヴェルスのカードを取り出す。
マラーニャはメモヴェルスが放つ光で眩しそうに目を閉じたが、手探りでカードに触れると、過去を書き換えるタスクに集中した。
――そして5分後。
過去を書き換えることに成功したのか、マラーニャは床にドサリと倒れ、そのまま動かなくなってしまう。
「な……なんとかやってのけたぜ。これでテメェは『火』の力を自在に操れるはずだ」
「ああ、理解したよ。大気中の熱を一点に集める力だとな」
「そいつで高田をぶっ殺しな。アタイは原初の力を奪われたから、復讐することができなくなっちまった……」
すると、マラーニャの体から湯気のような煙が発生し、腕や脚などが徐々に溶けてゆく。
「最後に言っておくけど……アタイはあんたに惚れてたんだよ。今度生まれ変わったら、アタイと付き合ってくれる?」
「悪いが絶対にお断りだ」
「いや~ん、コールちゃんのツンデレ! 照れちゃってカワイイんだからぁ」
……そして、マラーニャは全身が蒸発するように消滅し、床には血の水溜まりだけが残されていた。
「ようやく終わったか……」
「おいっ、コール! 頼むから手伝ってくれ、俺だけじゃ原生種を抑え切れねぇ!」
門脇の言葉で、コールダスクは糸が解かれた日本刀を拾い、原生種たちとの戦いに加わった。
管理室の入り口は原生種に埋め尽くされ、何度斬り殺しても、後から後から湧いて来る。
「屋上へ逃げよう門脇さん、管理室の奥にあった階段から行けます!」
「おう分かった、そうす……」
しかし、門脇の背中に原生種の触手が突き刺さり、彼は血を噴きながらその場に倒れてしまう。




