新たな刺客
――その頃。
ミゼラムはモルテーム教会にあるイラシャニアの像に向かって何かを祈っていた。
すると燭台の青い炎が大きく燃え上がり、その焔の中に一人の男が映し出された。
「我を呼ぶのは貴様か、4年後の悪しき刺客よ」
その男の言葉に、ミゼラムは恭しく頭を垂れた。
「お初にお目に掛かります……我が名はミゼラム。穂積海斗を葬る刺客として、モルテーム教団より送り込まれた者の一人でございます」
「ふん、知らん名だな。幻異界の核より20年以上も離れた刺客など、我らの同胞とも思いたくないわ」
ミゼラムの眉がピクリと動くと、少し怒気を含んだ口調で男に返答する。
「お言葉ですが、私がこの時代にいる必要性を我が同胞たちは理解しているはず。現に穂積海斗が力を付けぬ内に葬るのが、最も効率の良い解決策かと」
「だからどうした。その時代の人の子は覇気もなく欲深で操りやすい。貴様のような腑抜けの刺客に相応しい時代だ。皆口には出さぬだけで、貴様のことを見下しておるぞ」
「では、あなたなら穂積海斗を亡き者にできると?」
「当然だ。我は18歳の彼奴をすでに何人か葬っている」
18歳の海斗を葬ったと聞き、ミゼラムは服の袖で顔を隠しながら密かに微笑んだ。
「恥を忍んで申し上げれば、私は穂積海斗に手を焼いておりますゆえ、何卒お力をお貸しください」
「ならば4年後の幻異界に赴けと申すか?」
「……左様でございます」
焔の中の男は腕を組んでしばらく考え込む。
「だが『善き者』の刺客が黙ってはおらんぞ。それは戒律違反になるからな」
「おやおや、この時代に飛ばされた『善き者』の刺客を恐れるのですか? 私と同様に力足らずの者ですよ」
「……なに? 我が恐れると? 聞き捨てならぬことを言うな!」
焔の中の男は苛立たし気にミゼラムを睨んだ。
「ならば出向いてやろう。憎き穂積海斗を一瞬で葬ってやるわ、待っておれ!」
「それは心強いことで……お待ちしておりますぞ」
ミゼラムとの会話が終わると、焔の中の男は姿を消した。
「ホホホ、あの程度の輩はプライドをちょっと刺激すればすぐに落ちますねぇ」
そう言うとミゼラムは呵々大笑し、炎々と燃え上がる燭台の炎をしばらく見つめていた。




