Divine Punishment
高田はモニターを通して、コールダスクに自分たちの思想を語り出す。
「我々、善き者にとって、国民が無知であることが理想とする国づくりを行っている。聖書にすら書いてある理想だ、知恵は罪なのだよ。また今一度、純粋無垢な世界を取り戻すため、国民から財産を取り上げ、清貧の思想を植え付けてゆくつもりだ」
その話を聞いて、コールダスクの眉間に深い皺が寄る。
「あのな、人には意思があるし欲望があるんだ。そんなに簡単に抑えられるとは思えないな。どうせ自分の意にそぐわない場合は、暴力で解決するんだろ?」
「ハハハ、もう暴力は必要ないのだよ。マラーニャが死に、悪しき者の影響力が薄れたからな。この時が訪れるまで、我々は着々と準備を重ねて来た。あの大家という男を育てたのも私だ。彼にはいずれ、国家のリーダーとなって、国民の支配に徹してもらう」
「今は情報社会なんだぜ。おまえらの企みだって、いずれはバレるぞ」
「その点は心配ない。何故なら、ネットワークのインフラに原生種を寄生させ、すべての情報を操作できるようシステムを組んでいるからだ」
「なんかイラつくな。おまえは国民が無知であることが理想だと言ったが、それは単に自分たちの都合の良い存在に洗脳しようとしてるだけじゃねぇか。俺らの意思は何処にあんだよ?」
「そんなものも必要ない。大家の言った通り、国民は【生きられる】ことが最大の財産なのだ。俺らの意思だと? その未熟な意思によって、様々な弊害が起きたではないか……人の子の歴史が証明しているぞ」
「うるせぇ! 過去を支配しているおまえらに言われたかないね!」
――コールダスクはリボルバーに弾を入れ、銃口をモニターに向けた。
「やっぱりおまえは俺たちの敵だ。おまえをぶっ倒し、この世界を終わらせてやる」
高田はその言葉を聞き、呆れたように大きく溜息を吐いた。
「やれやれ、君はもっと賢いと思っていたが、どうやら見当違いだったようだ。この素晴らしい世界を、寿命が尽きるまで見て貰おうと思ったが、その態度だと叶わぬ願いのようだな」
「こっちから願い下げだ! そんな気味の悪い腐った世界、見たくもないね!」
「交渉決裂だ。では我々の【天罰】を受けて貰う」
そう言うと、高田はパチンと指を鳴らした。
「フェンリルよ、その男を喰らうが良い。そして、本社ビルに生息するすべての原生種たちよ、その三人を地獄の果てまで追い回せ」
……高田の命令で、ビル内で息を潜めていた原生種たちが活動を始めたのか、コールダスクの足元でゴゴゴと地響きのような音が鳴り出す。
「マズいぞコール! 下の階から大量の原生種がこっちへ上がって来やがる!」
「門脇さん、七奈美さん! 屋上へ逃げ……」
コールダスクは二人に指示を出そうとしたが、脇腹に鋭い衝撃が走って数メートルほど吹き飛ばされた。
どうやらフェンリルが突進し、彼を突き飛ばしたらしい。
「おいっ、大丈夫かよコール!」
門脇が呼び掛けても、コールダスクからの返事はない。
「ちくしょう、気を失ったみてぇだ!」
「私が……私が彼の傷を治します!」
七奈美は倒れているコールダスクに駆け寄ろうとしたが、その行く手をフェンリルが阻もうとする。
巨躯の威圧感により、蛇に睨まれた蛙のように、彼女はその場から動くことができない。
(階下から来る大量の原生種も相手にしなきゃならないし、どうすりゃいいのよ!)
七奈美が次の行動を考えていたその時、目の前で仁王立ちしていたフェンリルが、急に苦しそうな呻き声を上げる。
すると、体内からマラーニャのツヴァイヘンダーが飛び出し、フェンリルの腹を斬り裂いて、中から胃液塗れになった彼女が現れた。
「どうだクソモンスターが! 外側の皮膚は硬くても、内臓は鍛えられねぇだろ!」




