表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第六章 コールダスク 18歳
88/146

Public Speaking

――その時、データ管理室にあったモニターの一つが点灯し、高田の顔が映し出された。


「あ~二人共、喧嘩中のところを悪いが、私の話を聞いてくれないか?」

突然の登場に、マラーニャは目を丸くして驚く。

「水差すんじゃねぇよ高田! これからが本番だってのに」

「……すまないねぇ、貴女にどうしても伝えたいことがあるんだ。幻異界での審議により、貴女は刺客としての役割を剥奪(はくだつ)する決定に至った」

「はあ? そいつはどういう意味なんだよ!」

「そのままの意味だ。貴女は現在、この世界で悪しき者の刺客として活動してはならない。早急に自害するか、原生種の餌となるか選ぶといい」

「う……うっせぇうっせぇ! そんな条件が飲めるワケないだろうが! テメェがアタイをどうこうする権利が何処にあんだよ、それこそ重大な戒律違反(かいりついはん)だろ」

「戒律違反か……ずいぶんと分かりやすい言葉を選ぶんだな。まあ上出来だと褒めてやる」

高田は眼鏡を外してハンカチで汚れを落とすと、再び自分の顔に掛けた。


「単刀直入に言おう、私はおまえが嫌いだ。こうして話をするだけでも反吐が出る」


……その言葉を聞き、マラーニャの顔が怒りで紅潮する。

「ふざけんじゃねぇよ! テメェの都合でアタイを殺す気なのか?」

「そうだ、何が悪い? 悔しかったら幻異界の重鎮(じゅうちん)に直談判するんだな。もっとも、おまえのような頭の悪い輩に、説得できる術があるとは到底思えないがね」

「クッ……ソ野郎が……っ!」

「潔く消滅したまえ。せめてもの情けだ、私からのプレゼントを受け取って欲しい」


高田はパチンと指を鳴らすと、管理室の硬質な壁を突き破って巨大な怪物が現れた。

その怪物は見た目が狼のような姿をしており、神話に登場する想像上の獣に似ている。

奇妙なのは、体毛の隙間(すきま)から人の顔が覗いているため、それが人間の肉塊で形作られたものだとコールダスクは悟る。


「どうだ、素晴らしいだろう? これは北欧神話に存在する『フェンリル』という怪物を、人間の肉塊で創造したものだ。おまえの安っぽい操り人形とは格が違うぞ、格がな」

フェンリルと呼ばれる狼の獣は、凄まじい咆哮(ほうこう)を放つと俊敏な動きでマラーニャに襲い掛かり、巨大な口で頭を丸齧(まるかじ)りして、そのまま高々と天井に向かって彼女を掲げた。

どうやら食べられた時に頭を潰されたのか、叫び声すら聞こえて来る様子もない。

「丸飲みしろ、フェンリル。マラーニャに止めを刺せ」

高田に命令されると、狼の獣はゴクリとマラーニャを丸飲みし、満足そうにゲップを吐いた。


「……さて、コールダスク君。どうやら、そこでのミッションは達成されたようだな」

話し相手が自分へと変わり、コールダスクは高田が映し出されたモニターの前に立った。

「ああ、あんたのお陰で助かったよ」

「それは何より。これで我々もこの世界を、容易(たやす)く統率できるようになった。もし良ければ、窓から外の景色を見て欲しい」

コールダスクはビルの窓に視線を向けると、何故か隣にコルト・テック本社ビルの高さを超える、雲を突くようなタワーが(そび)え立っていた。

そのタワーには巨大なモニターが設置されており、そのモニターを通して政治家の大家慎太郎が演説を行っていた。


「国民の皆様! 本日も日本のために汗を流していただき、誠にありがとうございます。我々も国民が快適に毎日を過ごせるよう、政務に努め、国の発展に貢献し、経済を永続的に安定させるため、日々精進してまいります。そのためには、他の国の追随(ついずい)を許さない、圧倒的な資金力が必要です! 我々は愛国法の名のもとに、30年前より『国家専任投資財法』を施行し、国民の皆様の給与から9割の資金をいただいております。そのお金は1円たりとも無駄にせず、皆様が快適に【生きられる】ための環境づくりに注力しています。何も考えなくとも良いのです! 皆様は生きることだけに集中しましょう。我々がそれを全力でサポートしてまいります」


コールダスクは大家の演説を聞き、まるで新興宗教の教祖が話すような内容に、思わず首を傾げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ