From Dusk Till Dawn
「七奈美さん、もう体は大丈夫なんですか?」
「倒れている場合じゃないでしょ。ちょっと調子が悪かっただけだから」
「そうか……じゃあ一緒に行こう!」
コールダスクはワイヤーに手を掛け、54階までよじ登った。
「さあ、俺が掴んで引き上げるから」
上でコールダスクが手を伸ばし、そのサポートを通して二人が54階まで登った。
「よし、ついに残り1階まで来たぞ」
「水を差すようで悪いが、この54階の天井は衝撃波でブチ抜けねぇぞ」
「えっ、どうして?」
「あのな、55階のデータ管理室は、外界からの侵入者を防ぐために強固な壁で覆われてるんだ。恐らく床も同じだろうな」
「そんな……じゃあ、やっぱりエレベーターで行くしか方法がなさそうだね。下からワイヤーガンを射出して、先端を上の階に引っ掛けることはできないかな?」
「さっき調べたが、その引っ掛ける場所がなさそうだし、例え上手くやっても、上でマラーニャの野郎にワイヤーを切断される可能性がある。もし切られたら、50階まで真っ逆さまに落ちちまうぞ」
「……う~ん」
やはり55階は「不可侵」と呼ばれるだけあり、プロの泥棒でも簡単に入れそうにない。
しばらく三人が考えていると、突然、遠くの方で爆発音のような音が聞こえた。
「なんだ!?」
「あっちの部屋から聞こえた!」
コールダスクは爆発音がした部屋のドアを開けると、中は濛々と煙が立ち込め、上を見ると天井に巨大な穴が開いていた。
その穴から、ゴシック調の服を着た二人の子供が54階へ下りて来る。
「さっきの奴と同じか!」
「ちくしょう! 今度は負けねぇからな!」
門脇はショットガンを取り出し、原生種に寄生された子供に向かってぶっ放した。
その弾を避けようとした子供の一人は、散弾銃特有のバラけた流れ弾に被弾してしまい、床を滑るように転んでしまう。
その隙をコールダスクは見逃さず、転倒した子供の首を横払いで斬り落とした。
「まずは一人!」
だが、もう一人の子供は素早い動きでコールダスクに迫ると、手にしたレイピアで彼の心臓を突き刺そうとする。
その攻撃を日本刀で弾き返そうとしたが、時すでに遅く、レイピアの切っ先はコールダスクの上腕を貫いた。
「ぐわっ!」
ダメージは大きかったが、咄嗟の判断により、コールダスクは体を捩じりながら子供の腹部を蹴飛ばす。
蹴飛ばされた子供はレイピアから手を離してしまい、そのまま放り出されるかのように、宙を舞いながら床へと倒れた。
コールダスクは即座に上腕からレイピアを引き抜き、再び子供に向かって日本刀を正眼に構える。
「可哀そうだが、おまえを打ち取るぞ。それが、俺なりの供養のやり方だ」
そう話すと、コールダスクは地面を蹴って前方へ飛び出し、子供に向かって日本刀を横へ薙いだ。
武器を持たなかった子供は、自分の腕を犠牲にして攻撃を防ごうとしたが、その腕もろとも首と一緒に斬り落とされてしまう。
見ると、コロンと床に落ちた首の先端に、やはり糸のようなものが縫い込まれ、この子供も他の子供たちの体を縫い合わせた混合体だと考えられた。
「ヒデェな……まるで操り人形じゃねぇか」
「マラーニャの仕業だろう。この子たちに何をしたのか、キッチリ問い詰めてやるさ」
その横で、七奈美は落ちていた子供の首に布を被せ、そっと頭を撫でていた。
「後でちゃんと成仏させてあげるから、待っててね」
「さあ行こうか七奈美さん、この痛みはマラーニャに倍返ししてやる」
三人は前と同じように、天井に開いた穴から55階へと登った。
そして55階の廊下へ足を踏み入れると、案内板に「中央データ管理室」と書かれているのが見える。
三人は走って管理室へ向かうと、巨大な扉が目の前に現れ、その隣に受付と思われるカウンターがあった。
「……受付する人間なんていないよな。どうやって開けるんだよ」
「この端末を操作して扉を開けるらしいよ」
コールダスクはカウンターに置かれたパソコンを操作しようとしたが、突然、不規則な電子音が周囲に響き渡り、ゴゴゴと音を立てて分厚い扉が開いた。
開いた扉の隙間から、不気味な瘴気が漂っているのが分かる。
「あ、開いた……」
「ずいぶんと都合がいいじゃねぇか」
「恐らく罠ね。どうするコール?」
「行くしかないよな。ここで立ち止まってても埒が明かない」
コールダスクはそう言うと、扉に手を掛けてデータ管理室の中へ足を踏み入れた。
「うっ!」
三人は管理室の惨状を目の当たりにし、思わず絶句してしまう。
そこにはコルト・テックの社員と思われる人間が、何人も壁の中に埋め込まれており、呻き声を上げながら苦しむ姿があった。
また、腹の中に何か寄生しているのか、常に口から卵のようなものを吐き出している。
「こいつは……なんだ? どうなってやがる?」
「恐らく、コルト・テックの社員だと思う。原生種に寄生されて、繁殖用の餌にされてるんだ」
――二人が会話を交わしていたその時。
「キャハハハ! どうやら役者が揃ったようじゃん。アタイは待ちくたびれたし、退屈で死にそうになったし、今日は夜明けまで付き合って貰うよ!」




