Someone's Stooge
(子供が何故……?)
コールダスクは日本刀を正眼に構えて相手の出方を待つ。
すると、死人のような子供は懐から何本かのクナイを取り出し、コールダスク目掛けて投げ飛ばした。
飛んで来たクナイを避けずに日本刀で弾き落としたが、その隙を突いて、相手はコールダスクの懐に入り込む。
(は、速いっ!)
先ほどのパントマイムのような動作とは違い、あまりに俊敏な動きに切り替わったので、コールダスクは横跳びして子供の攻撃を躱した。
見ると、子供の手には武器のファルシオンが握られている。
「ぐはっ!」
攻撃を躱したと思ったが、脇腹を僅かに斬られていたため、コールダスクは痛みで蹲ってしまう。
だが、子供は追撃の手を緩めず、地面を蹴って加速しながら襲い掛かって来た。
ガキィィィン!
子供はファルシオンを縦に斬り下ろし、コールダスクの頭を割ろうとしたが、寸でのところで日本刀を使って弾き返した。
だが、凄まじく重い一撃だったため、腕がビリビリと痙攣してしばらく力が入らなくなる。
(あの小さい体で、何処からこんな力が生み出せるんだ?)
可愛らしい見た目に騙されそうだが、子供の戦闘スキルは手練れの暗殺者に匹敵し、少しでも気が緩めば、首を簡単に斬り飛ばされてしまう可能性がある。
コールダスクは腕の痙攣を誤魔化しながら、再び日本刀の柄を力強く握った。
(原初の力を使うしかない。相手は子供だが……油断したらすぐにやられてしまう)
……それに、倒れている門脇のことも気になる。
早く決着をつけるため、コールダスクは修業の成果をここで試すことにした。
ドン!
コールダスクは床を力強く踏み、地脈の流れを足元から掴もうとする。
だが、ここは高層階にある場所なので、衝撃波を放つには相応の時間が掛かりそうだ。
そんな状況を逃すはずもなく、動きの止まったコールダスクに子供が襲い掛かる。
「キィエエエエエ!」
子供は奇声を上げながらファルシオンを横に振り払い、コールダスクの首を切り落とそうとした。
その攻撃に対し、彼は日本刀を縦に構えてファルシオンを受け止め、しばらくジリジリと鍔迫り合いをしたが、力勝負なので子供の方が根負けする。
やがて不利だと思ったのか、子供は日本刀を弾いて後ろへ下がった。
(やはり衝撃波を放つまで待ってくれないか……ではこれならどうする?)
コールダスクは日本刀の刀身に原初の力を纏わせ、正面からの勝負を挑んだ。
少しだけ威力の上がった日本刀は、何度も斬り合いを行う内に、徐々にファルシオンに刃毀れを起こさせる。
「たあああぁぁぁ―――っ!」
そして、ついにコールダスクはファルシオンを真っ二つに折り、その衝撃で子供は後方へと吹き飛ばされた。
……すると子供は涙目になり、許しを請うような態度を見せる。
(終わったな……さすがにこれ以上戦うのは無理だろ)
コールダスクは日本刀を鞘に納め、子供に背を向けて門脇のいる場所へ向かおうとする。
「コール、後ろっ!」
油断したコールダスクに、子供はクナイを手にして突き刺そうとしたが、横跳びして攻撃を躱すと、彼は日本刀の鞘でクナイを叩き落とした。
もはや手段がなくなったのか、子供はコールダスクの肩へ噛み付こうとしたが、その奇襲をもヒラリと躱して床に体を押さえ付けた。
「な、なんだこれ!?」
見ると、子供の体は腕や脚がバラバラになっており、細い糸のようなもので繋がっているだけだった。
何人かの欠損した部位を繋ぎ合わせたかのようで、この子供自体の性別すら分からない。
「痛い、痛いよう。苦しいよう。助けて……」
今まで聞き取れなかったが、子供はこの言葉をずっと呟いていたらしい。
「コール……この子に止めを刺して。苦しみから解放してあげるの」
「で、でも……」
「辛いのは分かるけど、この子はもう死んでいるのと同じだから」
「分かったよ……」
そう言うと、コールダスクは日本刀を引き抜いて子供の首を切り落とした。
「こうしても……まだ意識は残ってるんだよな」
「恐らくね。全身を燃やさないと明確に死んだことにはならない」
「ちくしょう! マラーニャの奴、酷いことしやがる」
――コールダスクは日本刀を強く握り締め、マラーニャに対する怒りを露わにした。




