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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第六章 コールダスク 18歳
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本社ビルの50階に上がるまで、原生種が襲い掛かって来る様子はなかったが、あまりにスムーズに事が運ぶので、(かえ)って不気味に感じられた。

50階に入るためのドアは、本社の内部システムで厳重にロックされていたが、こちらもコールダスクが近付くと勝手に開いたため、三人は拍子抜(ひょうしぬ)けした顔になる。


「あまりにイージーだよね。抵抗らしい抵抗もないぞ」

「あの高田って野郎、マラーニャの上を行くハッカーなのか?」

「多分、原生種たちが内部システムに寄生しているから、ドアロックも簡単に外せるのかもしれない」

「つまりは高田にもマラーニャにも、俺たちの居場所が筒抜けってことかよ」

門脇は近くにあった監視カメラを(にら)んだ。

「その点は(あきら)めるしかないかもね。もう正面突破しているようなものだし」

「ちょっとコール……あれを見て」

七奈美が廊下の隅で(うごめ)いている黒い物体を見つけたため、指を差してコールダスクに知らせた。

「なんだありゃ? 真っ黒いお団子みたいな形だな」

コールダスクは奇妙に思い、その黒い物体に恐る恐る歩み寄ると、急にドクン! と心臓の鼓動(こどう)のような音が聞こえ、黒い物体がガタガタと震え出す。

すると突然、中から人間の手足や顔が無数に生え、こちらへ襲い掛かって来た。


「いいい痛いっ! 痛いっ!痛いよう!」

「離して! 離してっ! 離してぇぇぇ!」

「俺の体ぁ! 俺の体は何処にあるんだっ!」


表面に浮かび上がった顔たちが、一斉に不可解なことを喋り出す。

「くそっ! 原生種に寄生された人たちを肉の(かたまり)にしたな!」

コールダスクは日本刀に手を掛けるも、その黒い肉の塊を斬るか迷っている。

「コール、躊躇(ためら)ってはダメ! 寄生された人たちは元通りにならない。ここで倒さないと、あなたがやられてしまう」

「分かったよ!」

コールダスクは、やむを得ないと日本刀を引き抜き、襲い掛かって来た肉の塊を縦に斬り払った。

真っ二つに割れた肉の塊は、ドサリと床に落ちた後、ビクビクと痙攣(けいれん)したまま動かなくなる。

「……まだ生きているな」

「燃やさないと死ぬことはできないみたいね。マラーニャを倒した後にやろうか」

「成仏させるために、ここの従業員をすべて燃やす必要があるな。残酷な話だよ」

コールダスクは日本刀を鞘に納め、上の階を目指して再び歩き出した。


門脇の言う通り、50階から上はエレベーターを使うしか行くことができないため、まず上階と(つな)がる専用のエレベーターを探した。

しばらく探索していると、会議室の奥の廊下にあった大型エレベーターを探り当て、門脇は手で扉を無理矢理こじ開ける。

「どうやら上の階には行けそうだぜ。七奈美ちゃん、2階分くらいは登れそうか?」

「それくらいならなんとか……」

「じゃあ52階まで上がろう。そこから上は着いた時に考えりゃいい」

門脇はエレベーターの天井にあったパネルを壊して外へ出ると、まずは自分がワイヤーロープを伝って52階まで登って見せた。

そして52階にあったエレベーターの扉をこじ開け、閉まらないように金属製の棒で固定する。

「おお~い、二人とも上って来い。この階は問題ないみたいだぜ」

門脇の呼び掛けで、コールダスクと七奈美の二人も52階を目指して、ワイヤーロープを登り始める。


――しかしその時、門脇が何かと戦っているような怒声が耳に届く。


「テメェ、邪魔すんじゃねぇ! ここから先は行かせねぇからな!」

銃声まで聞こえたため、コールダスクは大声で門脇の名前を呼んだ。

「門脇さん! どうしたんですか! 門脇さん!」

……だが、1分後には門脇の気配が消えたので、二人は慌てて52階まで登った。

お互いに息切れしながら、なんとか52階まで辿り着くと、すぐに日本刀を引き抜いて周囲を警戒する。

「くそっ! 何処ですか門脇さん?」

「返事がないみたいね……この階を徹底的に調べましょう!」

二人は近くの部屋を慎重に調べながら奥へと進むと、巨大ホールの扉を廊下の先に見つける。

「きっとあそこだ!」

「……こんな上層階にホールなんてあるんだな」

コールダスクはホールの扉を開けて中に入ると、中央のスクリーンを囲んで100席ほどの椅子が並べられていた。

内部は吹き抜け構造になっているため、恐らく上へ向かう階段は53階まで繋がっていると考えられる。

「あっ、いた!」

見ると、中央のスクリーンの前で門脇が血を流して倒れていた。

コールダスクはすぐに門脇を助け起こそうとしたが、駆け寄ろうとしたその時、鋭いクナイが彼の足元に突き刺さる。

「誰だっ!」


――顔を上げてクナイを投げた存在を確認すると、それはゴシック調の衣服を着た幼い子供だった。


その子供は顔色が死人のようで、何故か(ほほ)の部分が糸のようなもので何重にも()われており、明らかに生きている人間ではないことが分かる。

また動きも滑らかではなく、カクカクとしたパントマイムのような動作なので、第一印象で感じるのは「操り人形」のそれだった。

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