Quarrel
三人は窓から本社ビルへの侵入に成功すると、突然、防火用のシャッターがすべての窓を塞いだ。
「なんだ!?」
すると近くにあったPCのモニターが点灯し、マラーニャの顔が映し出される。
「遅かったじゃねぇか! アタイは待ちくたびれて声がガラガラになったぜ」
「マラーニャか、今から最上階へ行ってやるから覚悟しろ」
「ああん? そんなこと言ってられんのも今の内よん。まずはそこの部屋から出て見せろや」
コールダスクは、部屋のドアノブに手を掛けて開けようとしたが、何故かビクとも動かない。
「キャハハハ! 閉じ込められちゃったねぇ。その部屋で原生種ちゃんたちに喰われちゃってちょうだい!」
コールダスクたちは武器を構えて原生種の襲来に備えたが、10分が経過しても現れる気配はない。
「……あ、あれ? どうしたの、アタイの原生種ちゃん?」
恐らく高田が原生種を抑制しているのだろう。
緊迫した空気が流れる中、「カチャリ」と三人の背後で音が鳴り、閉ざされていたドアが自然に開いた。
「どうやら、おまえの原生種は襲って来ないようだな。遠慮なく部屋から出るとするわ」
「え~ん、おかしいよ。マラーニャ泣いちゃうから!」
三人はマラーニャを無視して部屋から出ると、最上階へ向かう非常階段を目指して走り出す。
「分かってると思うが、非常階段は50階までしか上れないぞ。最上階の55階はエレベーターでしか行くことができねぇ。だが、マラーニャは確実にエレベーターを停止させてるだろうから、後の5階分をどう登るか考えなきゃならん」
門脇は走りながら、今後の行動についてコールダスクに相談した。
「エレベーターのワイヤーロープを登るとか……体力勝負になりますけど」
「まあそんなとこだろうな。だが、七奈美ちゃんは登るの無理だろ」
「1階分くらいなら登れそうな気がします。一気に5階分を登るのはちょっと……」
「よし、着いてから検討するか。ここでウダウダ考えてても仕方ねぇ。まずは50階を目指そうぜ!」
一行は非常階段のドアを開け、50階を目指して駆け上がった。
――その頃。
マラーニャはネット回線を通して高田と口論していた。
「テメェの仕業だろ! アタイの原生種ちゃんを縛るんじゃねぇ!」
「……はて? なんの話かな」
「惚けないでよっ! いくらあんたでも、ここまで妨害するのは戒律違反でしょ!」
「ふむ……それは一理あるな。少々やり過ぎたのかもしれない」
「もう~、高ちゃん正直なんだからぁ。だからネ、ネ? 原生種ちゃんたちを解放してよぉ」
「いいだろう……しかし条件がある。貴女が保有する第三型の原生種のみを解放しよう。それ以外はお断りさせていただく」
「全部解放しろや、このクソ野郎がぁ! 」
「貴女に選択肢はない。原初の力を失わないだけでも感謝したまえ。それでは通信を切らせてもらう」
高田の通信がプツリと切れたため、マラーニャは頭を掻き毟りながら狂ったように叫び出す。
一方で本社ビルの外では、高田がマラーニャとの会話を終え、スマホ片手にビルの周辺を調べている最中だった。
「やれやれ、ようやく話が終わったな。まったく、騒がしい女だ。蠅が30匹周りを飛び交うより五月蠅いと言える」
高田はスマホをスリープ状態にすると、コルト・テックの本社ビルを見上げてしばらく黙考する。
(さて……我々もそろそろ行動を起こすか。アレが死んだ後が問題だからな。これから忙しくなりそうだ)




