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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第六章 コールダスク 18歳
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Negotiation

――次の日の深夜。

コールダスク、七奈美、門脇の一行は覆面(ふくめん)をして、コルト・テック本社ビルの隣にある高層ビルの屋上へと向かった。

門脇に言われた通り、屋上からワイヤーを張って本社ビルへ突入するため、警備の薄い深夜の時間帯に行動する必要があった。


「隣のビルも35階建てとけっこうな高さだから、屋上に着くまでかなりの時間を要するぞ」

「やっぱり階段を使うんスか?」

「まあそうなる。エレベーターを使えば監視カメラに映るからな」

「うげ……エグいわ」

コールダスクは、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「少しくらいの体力消耗なら、私が治してあげるから安心して」

「さすが七奈美さん。頼りにしてますよ」

「さあ着いたぜ! 車を降りたらトランクから道具を出してくれ」

門脇に指示され、コールダスクと七奈美の二人は、車のトランクから道具の入ったボストンバッグを取り出す。

そして足早に高層ビルの裏口から中へ入り、三人は非常階段を駆け上がった。

「門脇さん、なんで裏口の鍵を持ってるんですか?」

「細けぇこと言うんじゃねぇよ! こんな築年数の古いセキュリティゆるゆるのビル、金積めばいくらでも鍵が手に入るぞ」

「物騒な世の中だな~」

「門脇さんはその道のプロだからね。東京の一部地域を牛耳ってた時期もあるし」

七奈美の話を聞いて、門脇の過去がますます怪し気に思われたため、それ以上は詮索(せんさく)しないようにした。

……そしてビルの屋上まで辿り着くと、門脇はボストンバッグを開いて、中から先端にアンカーの付いたワイヤーガンを取り出す。

「こいつを本社ビルに射出するぞ。おまえたちは滑車を用意しておきな」

二人がボストンバッグから滑車を取り出そうとしたその時、屋上のドアが開いて一人の男が顔を(のぞ)かせた。

一行は慌てて身を隠そうとしたが、時すでに遅しで、ドアを開けた男はこちらに向かって声を掛ける。


「ああいたいた。作業中のところを悪いが、少し話をさせてくれないか?」


聞き覚えのある声だったため、コールダスクはその男の顔を確認してみた。

「おまえは……高田!」

「はあ!? 善き者の刺客じゃねぇか!」

門脇は懐に隠していた銃を取り出し、その銃口を高田へ向ける。

「待て待て、私に戦う意思はない。それに、銃で私を撃っても一切効かないぞ。命が惜しければ止めることだ」

コールダスクは、門脇に銃を下ろすよう手で押さえる。

「……話を聞こう」

「冷静な判断に感謝する」

そう言うと、高田は煙草を(くわ)えて先端に火を着けた。

「……まったく、君は今まで何処をほっつき歩いてたのかね? お陰で街頭スピーカーから聞こえる、あの女の戯言(たわごと)を昼夜聞くことになったんだぞ。近隣住民の苦情に対処した、警察の心労を(おもんぱか)って欲しいものだ」

「そんな愚痴を言いに、わざわざここまで来たんじゃないだろう?」

「まあそうだな、失礼失礼。ストレスが溜まって、どうしても言っておきたかったんだ。……さて本題だが、本社ビルへ突入した後のプランを聞いておきたい」

「なんでおまえに話さなきゃならない?」

「場合によっては手助けしてやろうと言ってるんだ。あの女が操る原生種を、こちらで抑制することもできるんだぞ。悪い提案ではないと思うが」

「話が上手過ぎる。信用できないな」

「そう思うのも無理はないだろうが、マラーニャにお灸を()えてくれるなら、私は喜んで手を貸すよ。街中に響き渡る、あの甲高い声に我慢ならないのでね」

「……勝手にしてくれ」

「そうか……では()()()手助けしよう。君たちの武運を陰ながら祈らせてもらうよ」

そう言うと、高田は煙草の火を足で揉み消して、屋上から姿を消した。


「なんだぁ? あの野郎」

「分からない……(つか)みどころのない男なんだ」

「あいつの言う通り、原生種たちが襲って来なくなったら、最上階へ行くのはかなり楽になりそうだな。まあ、利用できるもんは利用すりゃいい」

「そうだね……」

何か胸にシコリが残るようなやり取りだったが、一行は頭を切り替えて、ワイヤーガンを本社ビルに向かって射出した。

そのワイヤーを伝って、本社ビル29階への侵入に成功する。


(どうやら、本社ビルの侵入に成功したようだな……)

一連の光景を隣の高層ビルから見ていたのは、先ほど別れた高田だった。

(バカな連中だ、千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスを逃すとは。あの時に私を殺しておけば、色々と手間が(はぶ)けただろうに。これだから、人の子という存在は理解できない)

高田は煙草の煙を吐き出すと、クククと含み笑いをした。

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