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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第六章 コールダスク 18歳
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Unveil the Secret

高層ビルの非常階段を利用し、コールダスクはなんとか1階まで下りる。

50階を上がるのもキツイが、下りもかなりキツイため、外へ出る頃には息も絶え絶えな様子だった。


「ああ来た来た、待ってたんだよ」

ビルの裏口から出ると、路上で駐車していたパトカーにコールダスクは呼び止められる。

煙草を吸いながら運転席から出て来たのは、以前に取り調べを受けた警察の高田だった。

(くそっ! 見つかったか)

コールダスクは観念して両手を挙げる。

「違う違う、逮捕なんてしないから安心したまえ」

「は? どうしてだよ、俺が怪しいから呼び止めたんじゃないのか?」

「ビルの中で何が起こったのかは知っている。君が殺人に関与していないこともな」

「……じゃあ逃がしてくれるのか?」

「その前に、少し君と話がしたい。返答次第では逃がしてやってもいいぞ。君はマラーニャから連絡があったはずだが、彼女と何を話したのかね?」

「あの女は、コルト・テックの本社ビルを占拠(せんきょ)したと言ってたぜ」

「ああ~、面倒なことをする。あれほど人間の世界に干渉(かんしょう)するなとアドバイスしたのに、まったく聞く耳を持っていないようだな。これだから計画性のない刺客は嫌いなんだ」

その言葉を聞いて、コールダスクの眉がピクリと動く。

「……なるほど、あんたもかよ!」


――高田は吸っていた煙草の灰を落とすと、「そうだ、私が善き者の刺客だよ」と答えた。


「どうして正体を明かした?」

「もう隠しても意味がないだろう。君はすでにメモヴェルスに触れているし、悪しき者の刺客であるマラーニャも、こうして派手に動き出したからな。で? 君は本社ビルへ突撃するつもりか?」

「やるさ。あっちが先に挑発したからな」

「ほう、威勢(いせい)の良いことだ。ただ骨が折れる戦いになるぞ。ビルの内部システムがすべて彼女に支配されているはずだからな。君は何故、彼女がこれだけハッキング能力に優れているか知らないのか? 彼女から携帯にコンタクトがあった時はさぞ驚いただろう。君の携帯は、海外の通信会社を何重にも通さないと(つな)がらない仕様になっているからな」

コールダスクは驚いた様子で高田の顔を見る。

「……何故それを知ってるんだ?」

「では、種明かしをしてやろう。その前に……彼女にも会話に入って貰おうか」


高田はキョロキョロと辺りを探すと、ビルの壁に設置された監視カメラを見つける。

「あの監視カメラが良さそうだな、恐らく彼女もハックしているだろう。さあ、一緒に仲良く映ろうじゃないか」

「はあ? 何言ってんのあんた」

だが、高田は強引にコールダスクの腕を引っ張り、監視カメラの前まで連れて行く。

そして二人で肩を組み、監視カメラに向かって喋り出した。

「聞こえているか悪しき者の刺客よ。彼に我らの秘密を打ち明けようと思うが、貴女(きじょ)は納得していただけるかな?」


――すると、10メートルほど離れたビルに設置された巨大モニターが反応し、マラーニャと思われる顔が映し出される。

「高田ぁ! テメェ、アタイの秘密をベラベラと喋るんじゃねぇよ。納得するワケないだろ、このボケが!」


モニターからマラーニャの怒声が飛んで来るも、高田は冷静に監視カメラを通して彼女に語り掛ける。

「相変わらず下品な言葉でしか語れないようだ。私は前に忠告したはずだ、あまり人間の世界に干渉するなとな。貴女が戒律違反(かいりついはん)を犯している以上、私は監視役として厳しく指導しなければならないのでね」

「うっせうっせ! アタイは面白けりゃそれでいいんだよ、邪魔しないでくれる?」

「彼に聞けば、貴女はコルト・テックの本社ビルを乗っ取ったそうじゃないか。その企業は警察にとっても親密な関係にあり、被害が大きくなっては困るからな。それにいい加減、原生種を使ってネット環境へ侵食(しんしょく)するのは止めたまえ」

「なにっ!?」

コールダスクは高田の言葉に驚愕(きょうがく)し、組んでいた肩を振り解く。

「……やはり知らなかったようだな。原生種の一部は、人間だけでなく【物質】にも寄生できる。現代のネット環境は罵声(ばせい)誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)、二極対立など、(けが)れた感情の掃き溜めとなっている。これらの感情を吸収するのが原生種の役目だ。寄生するには最適の場所だろう?」

「いや~ん、高ちゃん言っちゃうんだもん。恥ずかしてくてモニター消しちゃうから!」

マラーニャの甲高い声が聞こえた後、巨大モニターに映し出された彼女の顔が消えた。


「……やれやれ、監視役も楽ではないな。それでは失礼するよ。あまりウロウロすると他の警察に捕まるから、早急にこの場を去りたまえ」

そう言うと、高田は乗っていたパトカーの運転席に戻った。

コールダスクは窓越しに高田へ語り掛ける。

「ずいぶんと協力的だな、何が目的だ?」

「さっきも言ったが、マラーニャは人間の世界に過干渉している。それを是正するのが、刺客の片割れである私の役目だ。君がお灸を()えてくれると助かるのだが……後は好きにしてくれたまえ」

「おまえだって俺の標的なんだぜ」

「……それもそうだな、では楽しみにしているよ」

高田はパトカーを走らせようとしたが、突然、急ブレーキを踏んで停車させる。

「ああそうだ。君は大家という政治家を調べているようだが、彼は私が育てたから放っておいてくれ。もし手を出したら、その時は容赦しないぞ」

窓から手を出して軽く振ると、高田はパトカーを走らせてその場を後にした。

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