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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第六章 コールダスク 18歳
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Rookie

「……いった!」


次の日の朝、七奈美は痛む頭を(さす)りながらベッドから起き上がった。

(なか)朦朧(もうろう)とした状態でリビングへ行くと、コールダスクが画面と向き合って何かを入力している姿を確認する。


「あっ、起きたっスね」

「何をしてるんだ?」

「谷江のPCが起動したみたいなんで、ネット経由で中身を調べてます」

「そうか……すまないが私は頭が猛烈に痛いぞ」

「二日酔いでしょ。記憶がなくなるまで飲んでたらそうなりますよ。気を失った七奈美さんを、ここまで運ぶのキツかったんですから」

「私を襲ったりしてないだろうな?」

「まさか! あの後にそんなことしたらただのクズです」

「18歳の年頃だしな……信用はしてないが」

七奈美はコールダスクをからかうように少しだけ笑う。


「ミネラルウォーターを冷蔵庫に入れてありますから、良かったら飲んでください。マスターの門脇さんも心配してましたよ。こんなに飲むような娘じゃないって言ってました」

「まあ……ちょっと調子に乗ったのかもしれないな」

七奈美は痛む頭を手で押さえながら、冷蔵庫のミネラルウォーターを取り出した。

進捗(しんちょく)はどうだ? 谷江のPCから何が分かった?」

「谷江のPCが会社のサーバーと(つな)がるまで待ってる状態です。企業のサーバーは一般のネット環境から外れてるんで、外部から調べるのは難しいんですよ。だけど谷江のPCが一度でも社内サーバーへ繋がれば、インストールした常駐ソフトを経由して、芋づる式に他の社員のPCにも繋がることができます。その後は、猿渡のPCをじっくり調べる予定っスね」

「谷江のPCにウィルスを仕込んだのか?」

「まあ、そんなイメージかなと。俺に言わせれば、すべてのアプリケーションはウィルスみたいなもんです。特にクラウドベースで動くようなアプリは、個人情報が抜かれ放題と思った方がいい。ネット環境が世界に構築された時点で、プライバシーなんてものは敗北したんですよ」

「わざわざ足を運んで、カフェまで行った甲斐(かい)があったという感じか」

「でもネットを経由して、谷江のPCにウィルスを仕込むこともできましたけどね」

「ええ!? じゃあ、外出する必要なんてなかったじゃないか」

「だから、最初にデートがしたいって言ったじゃないっスか」

七奈美が(あき)れた表情になる。


「……余計に頭が痛くなったぞ、どうしてくれるんだ?」

「おっと、谷江のPCがサーバーに繋がりましたよ!」

コールダスクは誤魔化(ごまか)すようにキーボードを打ち始める。

「ああ~この社員、社内用のPCでエロ動画見まくってるな。こっちの社員は、違法ダウンロードを100回くらいしてるぞ。やっぱりアホが集まった会社って感じだな」

「今は何を調べてるんだ?」

「個別にPCの脆弱性(ぜいじゃくせい)を調べてるところです。エロサイトと接続したり、違法ダウンロードするとウィルスに感染するとか聞いたことあるでしょ? 俺の場合、最近のウィルスを100個くらい覚えてますけど、それらが感染するとPCの弱点が分かります。大抵のウィルスは起動を遅くしたりだとか、ゲームで誤作動を起こしたりだとか愉快犯的(ゆかいはんてき)なものが多いんですけど、PCの脆弱性を突いてるのは分かるから、個別でどういう攻撃をしたら良いか判断材料になるんです」

「ふ~ん、私にはちょっと分からないな」

「分からなくていいですよ。猿渡のPCに繋がる方法を探しているだけですから」

そう言うと、コールダスクはマウスを動かして、画面上のアイコンをクリックした。

その後、しばらく無言で作業を続ける。


「……こいつのPCがリモート操作できそうだ。カメラを起動して社内の様子を撮影しておこう」

コールダスクが小声で(つぶや)いたその時、右上の壁に設置したランプがチカチカと点灯した。

「なにっ!?」

「どうした?」

「い、いや。俺のデスクトップがサイバー攻撃を受けたみたいです」

「マズイじゃないか!」

「ちょっと待ってください、今調べますから」

コールダスクは急いでセキュリティチェックを行う。

「おかしいな……? 特に問題はなさそうだけど」

「本当に大丈夫か?」

「ええまあ……警察に目を付けられてますから、絶対に安心だとは言い難いですけど」


――すると、画面上に虫のようなものがカサカサと動き回るのが映し出された。

だが、二人はその存在に気付かず会話を続けている。

やがて、その虫のようなものは画面端へと消えてしまった。

「ランプの点灯が止まったし、おそらく誤作動の可能性が高いです」

「それならいいが……」

「まあ、外部からの攻撃は慣れてるんで、何かあれば俺がちゃんと対応しますよ」

コールダスクが楽観的だったため、七奈美は安心した表情になる。

その時、コールダスクの携帯が部屋の中で鳴り響いた。

スマホの画面を見ると、どうやら相手はコルト・テックの望月らしい。


「……おう、望月さんだ」

コールダスクは通話のボタンを押して、望月の呼び出しに答える。

「望月だ。今は落ち着いて話せるかコールダスク?」

「はい、大丈夫ですよ望月さん。なんの用件ですか?」

「そうか……おまえに伝えておきたいことがあってな」

「それは?」

「我が社はマラーニャを雇い入れた。今後はおまえと仕事を折半(せっぱん)するかもしれないため、彼女の教育係として面倒を見て欲しい」

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