表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第六章 コールダスク 18歳
72/146

Traitor

地下倉庫の上階にあるバーへ二人で入ると、七奈美は慣れた感じでカウンターへ座った。


「ここの常連ですか?」

「まあな。マスターと顔馴染みなんだよ。若い頃には働いていたこともあったんだ」

……すると、奥の部屋からマスターと思われる男が顔を出した。

「おい七奈美ちゃん、勝手に地下倉庫を使われては困るとあれほど言ったのに」

「いいじゃないマスター。少しの間、借りただけだから」

「良かないよ、見たら日本刀と銃じゃないか。警察に目を付けられたら、商売ができなくなっちまう」

「もう置かないから安心して。それから、こっちは相棒のコールだ」

七奈美はコールダスクの背中を軽く叩いて、マスターに紹介する。

「ああこの人か……未来から転生した少年というのは」

「えっ!? なんで知ってるんですか?」

コールダスクは目を丸くして驚く。

「ごく一部の人間だけど、幻異界の存在を感じ取る者がいるんだ。おまえが22歳の時に出会った仁翔のような人物だな。このマスター……名前は門脇(かどわき)さんだけど、仁翔と同じように幻異界の存在を過去に知ったんだ。だから私の話も信じてくれる。それに、このバーの近くには『刻殺(ときごろ)しの間』もあったんだよ。今は過去を書き換える力も衰退(すいたい)して消滅しているが」

「その『刻殺しの間』で昔鍛えたから、俺も少しは格闘の心得があるんだぜ」

マスターの門脇は、その場でシャドーボクシングをして見せる。

「助けが欲しい時は俺を呼びな。ちったあ戦力になるぜ」

「へえ、それは心強いっス」

コールダスクは自然と笑みが(こぼ)れた。

「さて、二人でゆっくり話がしたいだろう。カクテルを用意するから待ってな」

そう言うと、門脇はシェーカーを出してカクテルのブレンドを始め、仕上がったものを二人へ差し出して店の奥へと消えた。


「……ねえ七奈美さん、この世界に来たのは何年前なんですか? 話を聞いてるとずいぶん前のような気がするんですけど」

「10年前だ」

「ええっ、そんなにも!?」

「そうだ。おまえが転生する世界によっては、数日前だったりもするがな。今回は体に慣れるために、10年前の斎条七奈美へ入った。メモヴェルスの欠片も海外にあったから、探すのに時間が掛かるし、ちょうど良かったのかもしれない」

「苦労してるんですね~」

「他人事みたいに言うな」

「ああそれから、今日はどうしてバーに誘ったんですか? さすがに俺とデートしたいとかじゃないっスよね」

「それは……」

七奈美は黙ったままカクテルを一口飲むと、少し力のない声で会話を続けた。

「おまえは……前に転生したマリーの最後の言葉を覚えているか?」

「当然覚えてますよ。でも、どうしようもなかったから」

「そうだな、どうしようもなかった。彼女は自分の子供の成長が見たいと言ったんだ。おまえと一緒に幻異界の核を目指して過去への転生を繰り返しているが、時々、一人一人の人生を犠牲にしてるんじゃないかと不安になるよ」

「七奈美さんだって色々と犠牲になってるでしょ」

「そうかもしれないが、私の意思で一人の命を奪うことに変わりはないだろ? コールダスクという人生も、この世界で成功するにせよ失敗するにせよ、その先は必ず命を失う羽目になる。おまえは()()()()に戦い続けるんだ、矛盾していると思わないか?」

「この戦いはもともと矛盾だらけですよ。だからハッキリ聞きたいことがあります」

「……それは?」

「幻異界の核に何があるんですか?」

七奈美は核心を突かれたため、緊張した空気が辺りに漂う。

「これを言うと……私は怒りで気持ちが抑えられなくなるかもしれないが、あえて言わせてもらうぞ」

「えっ……」


――七奈美は拳を強く握り締め、コールダスクに向けてこう言い放った。

「おまえは……おまえは幻異界の核から逃げて、私や仲間たちを裏切ったんだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ