Misunderstand
――そして二人は地下鉄に乗って池袋駅まで戻ると、七奈美は急に立ち止まって何かを思い出した。
「……ああそうだ。大切なものを渡していなかったな」
「大切なもの?」
「おまえの武器だ。日本刀とリボルバーだよ」
「おう、すっかり忘れてました。今は何処にあるんです?」
「銀座の倉庫に隠してある。思い出したついでに取りに行こう」
二人は池袋駅近くの地下駐車場へ行き、駐めてあった愛車のバイクに乗り込んだ。
「久しぶりに乗るなぁ。警察に追い掛けられた時以来か」
「そう言えば、警察に捕まった理由を聞かなかったな。何をやらかしたんだ?」
「あれね、コルト・テック社のセキュリティを調べるため、外部のネットワークからちょっかい出してたら、警察の逆探知に引っ掛かったんです。俺がコルト・テックに雇われていると知らないもんだから、めでたく御用となりました」
「ちょっと待て、その企業に雇われているのにサイバー攻撃を仕掛けたのか?」
「ええまあ……外部からの攻撃にどれだけ耐えられるか調べるのが俺の仕事なんで」
「私はてっきりハッカーを自称しているから、犯罪者だと思ってたぞ」
「でしょうね~、初めて会った時に悪党呼ばわりしたくらいですから」
「根に持つなよ……」
七奈美はバツが悪そうにコホンコホンと咳をする。
「まあいい、とりあえず銀座へ向かおう。あそこまで行くのにそう時間は掛からないからな」
「了解っス!」
二人はヘルメットを被って軽くエンジンを吹かすと、そのままバイクを飛ばして中央区方面へ向かった。
先にも述べた通り、中央区の銀座周辺は比較的治安が良く、道路もある程度は整備されている。
だが、一歩でも区の境を越えれば急激に治安が悪化するため、誤った道を選んでしまうと道路上に罠が仕掛けられている可能性があり、高価なバイクを盗もうとする連中にターゲットにされてしまう。
今回のツーリングは他の区を跨ぐことはないので、特に問題もなく銀座へ辿り着くことができた。
「こっちだ、バーの地下倉庫に置いてある」
七奈美に案内され、コールダスクは路地裏にあるバーの地下倉庫へ足を踏み入れた。
見ると、倉庫の奥に日本刀とリボルバーが棚に置かれており、七奈美は歩み寄ってそれらを手にする。
だが、七奈美は感慨深い様子で日本刀を握り締め、コールダスクになかなか渡そうとしない。
「どうしました?」
「いや、ちょっと思うことがあってな……」
七奈美の目には微かに涙が滲んでいる。
「すまない……気にしないでくれ」
そう言うと、七奈美は日本刀とリボルバーをコールダスクに手渡した。
「なあ、ちょっとバーで飲んで行かないか?」
「えっ、俺は酒が飲めないっスよ」
「いいから! 恰好だけでも飲んでいるフリをしていれば問題ない。お望み通りデートしてあげる」
「未成年に酒を勧めちゃダメでしょうに……」
コールダスクは七奈美の強引さに気圧され、戸惑いながら一緒にバーへ向かった。




