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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第六章 コールダスク 18歳
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――猿渡を調べるため、コールダスクは3日ほど情報集めに努めた。


「七奈美さん七奈美さん、猿渡が経営する会社スタッフの名簿が手に入ったぜ」

「会社スタッフの名簿? あの男の個人情報じゃないのか」

七奈美が(いぶか)し気な表情になる。

「将を射んと欲すればまず馬を射よ、ですよ。猿渡を直接調べるのは、リスクも高いと思うんで」

コールダスクはマウスのホイールを回しながら、会社スタッフの名簿に目を通す。

谷江淳樹(たにえじゅんき)、こいつが良さそうだ。画像投稿のSNSで頻繁(ひんぱん)に行き先をアップしてるし……ああ、カフェにいる時の画像もアップしてるぞ」

「どういう意味だ?」

「こういう男は、社内用のノートPCを平然とカフェで開いて、ドヤ顔で仕事しているようなタイプです。いわゆる意識高い系の連中なので。それに、ここの会社の社用PCはブランド志向の高い代物で統一されてますし、一目で30万円以上するとすぐに分かりますから、周りに見せびらかしたくなるんですよね~」

「おい、見るとまだ22歳の新人じゃないか。こんな下っ端が、猿渡と(みつ)な会話なんかしないだろ?」

「谷江に興味はないですよ。興味があるのはこいつの持っている社用PCです」

そう言うと、コールダスクは着替えて出掛ける準備をした。

「さて七奈美さん。たまには別々じゃなく、一緒に外へ出ましょうか?」


コールダスクと七奈美は隠れ家から出ると、一緒に地下鉄へ乗って渋谷駅を目指した。

この世界の渋谷区は、他の地域と比べて治安が良い。

だが少しでも区から外れると、世田谷代田や三軒茶屋辺りでは頻繁に暴動が起きており、中野区や杉並区に至っては、不法移民の増加によって無法地帯となっている。

比較的安全なのは渋谷区、新宿区、千代田区、中央区なのだが、あくまで軍組織と警察の目が届いているという名目だけで、基本的に「自分の身は自分で守る」ことが東京では鉄則となる。


「……しっかし七奈美さん、区の境でここまで天国と地獄がハッキリ分かれている都市も珍しいですよ」

「おまえの住む池袋も治安は良いと思うが」

「いいや、あそこも荒れ地に片足突っ込んでますからね~。金持ちしか住んでない新宿区に近いから、まだ助かってるんだと思います」

「こんなミッションはさっさと片付けて次へ行こう。おまえと一緒だとロクな世界を体験しないな」

「いや、そんなこと言われても……」

七奈美は渋谷駅のアナウンスを聞くと、すぐに電車を降りて地上に向かった。

その後を、慌ててコールダスクが追い掛ける。


「……さて、これからどうするんだ?」

二人は地下鉄出口から外へ出ると、七奈美が腕を組みながらコールダスクに質問した。

「特に決めてないっス」

「えええ!? 何か考えがあってここまで来たんじゃないのか?」

「七奈美さんとデートがしたいなと思って」

「……あんた、殴られたいの?」

「うわわわ、ジョークですよジョーク。ちゃんと考えはありますから!」

その時、コールダスクのスマホに通知音が鳴る。

「おう、ちょうどいいタイミングだ。谷江のヤツがSNSで近況をアップしたみたいです。どうやら特定した近くのカフェで休んでいるらしい」

「この近くでか? どの店も混雑している状況なのに、よく落ち着いてコーヒーなんか飲めるな」

「これでノートPCを開いて仕事してたら失笑もんですが……まあ、恐らくしてるでしょうね。自己顕示欲(じこけんじよく)の高い連中は大体そうですから」

「確かにそこにいるのか? SNSの更新は時間指定できるんだろ。もしかしたら店を去った後でアップしたのかもしれない」

「まあ、セキュリティの意識があれば時間指定しますが、谷江はズボラな予感がします。いつも通うカフェも簡単に特定できましたからね。とにかく行ってみましょうよ、ハズレたら次の手を考えればいい」


――そう言うと、コールダスクは谷江のいるカフェを目指して軽やかに歩き出した。

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