Give the Game Away
コールダスクは七奈美のバイクに乗せられ、池袋にあるもう一つの隠れ家へ向かった。
スマートな見掛けによらず、七奈美は荒々しい運転をするため、後ろに乗っていた彼は何度も振り落とされそうになる。
「ちょっとちょっと七奈美さん! もう少し速度を落としてよ」
「これくらい我慢しろ。落ちたらちゃんと拾ってやるから」
……そういう問題ではない。
腹いせに強く抱き締めて胸でも揉んでやろうかと思ったが、後でどんな報復があるか分からないため、コールダスクは邪な考えを頭から払い除けた。
そんなこんなで池袋の駅前まで辿り着くと、二人はバイクから降りて近くのコンビニへ入る。
「食糧を買い込んでおくぞ。奴らが姿を現さないなら、こちらも迂闊に外を歩けないからな」
「構わないよ、引き籠るのは慣れてますんで」
そう言うと、コールダスクは店内を歩き回って、食料を次々と買い物かごの中へ入れた。
買い物かごが一杯になりレジまで持って行くと、置いてあったベルを押して店員を呼んだ。
「7989円になります。そちらのタッチ操作で会計をお願いします」
店員に言われた通り、コールダスクはタッチパネルを操作して会計を済ませようとする。
だがその時、タッチパネルに奇妙なノイズが入り、クレジットカードをスライドさせても読み取らなくなった。
「……あれ?」
「どうされました?」
「なんか画面にノイズが走って、カードを読み取らなくなったんですけど」
店員がレジから出て、タッチパネルが故障してないか確認する。
「ノイズ……ですか? 普段通りの画面ですけど」
不思議なことに店員が確認した途端、タッチパネルの画面が正常な状態に戻った。
コールダスクは「おかしいな?」と首を傾げるも、カードをスライドさせると読み取ったので、会計を済ませることができた。
「……すいません、見間違いだったみたいっス」
そして店員に頭を下げ、七奈美と一緒にコンビニから出る。
「何があった?」
「タッチパネルにノイズが走って操作できなくなったんだ。故障かなと思ったけど、店員さんが来たら急に直ったみたい」
「ふ~ん、一時的にネットワークが不通になったのかもな」
七奈美は特に興味を示さず、早々にバイクに乗り込んだ。
――そして二人はコールダスクの隠れ家に到着し、コールダスクはドアの鍵を開けようとする。
落としたと思われたスマホは、どうやらバイクの座席に引っ掛かっていたらしく、警察から無事に返して貰ったので、ドアの鍵もすんなり開けることができた。
二人は部屋の中に入ると、モニターが6画面で構成され、デスクトップPCも4台ほど連結して置かれている光景を目にする。
「……まるでデイトレーダーだな」
「実際に使うのは3画面くらいですよ。ハッカーなんてイキってますけど、実際は地味な作業の方が多いっスから」
コールダスクはPCの電源を入れ、七奈美を隣にして画面の前に座った。
「さて、何を調べます?」
「まずは有名人を中心に、政治家、芸能人、インフルエンサーなどを片っ端から調べろ。特に最近、注目を浴びるようになった人物は要注意だ」
「了解です」
コールダスクはキーボードをカタカタと鳴らして、最近有名になった人物を調べ始めた。
しばらく七奈美と会話しながら調べていると、ある男の動向が怪しいと意見が一致する。
「猿渡雄一。SNSや動画配信サイトで絶大な支持を集めるインフルエンサー。過去はグループで活動していたが、最近脱退して仮想空間上で活動するアイドルグループをプロデュースする。今では専用の事務所を立ち上げ、数多くのアイドルグループを輩出し、業界で影響力のある人物としてメディアが競って取り上げてます」
「……まあ、条件としては当てはまりそうだ」
「それに裏の情報ですけど、こいつの元カノが5人も薬物の過剰摂取で死んでます。こういう輩は裏の組織とも繋がりがありますからね。特にこいつは学生時代、都内の悪質な不良グループと付き合いのあったことが噂になってますんで、ドラッグの売買に手を染めてたんじゃないかと」
「キナ臭いな……」
「キナ臭いっスねぇ」
「次は誰かいるか?」
「……ええと、次はこいつですね」
「大家慎太郎。練馬区の衆院選で当選した国会議員ですね。過去は人権問題などを積極的に取り組み、SNSなどを活用して話題を集めて当選しましたが、目立った経歴もないため票の伸び方が不自然だと噂されています。それに、海外のスパイなんじゃないかと裏の情報もありますね」
「混乱を招きそうな男だな。こいつを詳しく調べられそうか?」
「政治家はハードルが高いんで時間は掛かりますよ。後ろで警察の目も光ってますし」
「じゃあ猿渡が先か?」
「ええまあ……ああいう話題性だけの男は、取り巻きがアホな連中ばっかり寄って来るんで、調べやすいことは確かっス」
「決まりだな。では、猿渡雄一を最初のターゲットにしよう」
七奈美はダーツの矢を手にして的へ投げると、その矢は見事にブルズアイへ刺さった。




