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「は?」
奇妙なことを言われ、コールダスクはキョトンとした顔になる。
女性は慣れているのか、彼の手を引っ張って無理矢理カードを握らせた。
「あ……七奈美さん?」
――どうやら思い出したらしい。
「思い出したようだな。このメモヴェルスの欠片を手に入れるのは本当に骨が折れたぞ。欧州まで飛んで探す羽目になったからな。幸い、この女性の職業が客室乗務員だから、フライトの合間にメモヴェルスの欠片を探せたが、手に入れるまで情報屋に騙されるわ、セクハラ親父に尻を触られるわで散々な目に遭ったんだ」
「それはお気の毒です……前の転生者が海外に住んでましたからね。今回はちゃんとシンクロする体を見つけたんだ」
「ああそうだ。名前は『斎条七奈美』で、おまえが22歳の時に出会った女性とほぼ同一人物になる。住む世界は違うがな……以前の彼女は28歳で、今は24歳になったぞ」
「そういや見覚えがあると思った。美人の体に入るの好きなんスか?」
「美人の定義なんてものは人によって違うだろ。おまえにとっては好みの女性なのかもしれないな」
「えっ、じゃあこの人と付き合う世界線もあるってこと?」
「残念ながらそれは絶対にない」
「どうしてよ?」
「私がこの女性の体に入っているからだ」
コールダスクは「チッ」と言って、頬を思い切り膨らませる。
「そんなことはどうでもいい……さあ行くぞ! とっとと善き者と悪しき者の刺客を倒して、次へ進むんだ」
「はいはい、相変わらず人使いが荒いよなぁ」
コールダスクはメモヴェルスのカードを手にし、「善き者と悪しき者の居場所を光で示せ!」と、カードに向かって命令する。
……だが不思議なことに、メモヴェルスの反応はない。
「あれ? いつもなら光の線で教えてくれるはずなのに」
「……マズイな」
「何がです?」
「今回の奴らはこちらへ顔を見せない作戦らしい。気配を消しているとメモヴェルスも反応しないからな。Wi-Fiの電波みたいなもんだ、近付かないと明確な位置が分からないのさ」
「その距離はどのくらいなんスか?」
「半径10メートルほどだ、あくまで例えだが」
「ええ……かなり近付かないと見つからないじゃん」
コールダスクはガックリと肩を落とした。
「ここでウダウダ言ってても始まらない。ネット環境があるなら情報を集められるはず。奴らは活動の先に何かしらの痕跡を残すから、疑わしい事件などを調べれば見つかるかもしれないぞ」
「それなら俺の得意分野だ、協力するよ」
「得意分野……おまえの職業はなんだ? 早朝の警視庁から出て来たし、どうせロクな人生を送ってないだろ」
「大きな声じゃ言えないけどハッカーだよ。これでもちょっとした有名人なんだぜ」
七奈美は呆れた表情になり、「ハッカーで有名になると問題あるだろ」と言った。
「……まあ、殺人を犯してないだけマシだとは言えるがな。それに名前はなんて呼べばいい?」
「コールダスクだ。コールでもいいよ。一応、日本やアメリカにいる時の名前も持ってるけど、コールダスクで慣れちゃったんだ」
「分かった、ではコールで統一しよう」
そう言うと、七奈美はバイクを停めてある場所に向かって歩き出した。
「ああそれから七奈美さん……俺って『貴様』呼びから『おまえ』呼びに昇格したんだね。なんだか嬉しいっス!」




