戦いの果て
「えっ……」
マリーは不意を突かれた様子で呆然としていたが、頭上から振り下ろされたヴォラレウスの剣に気が付く。
そして一瞬にして我に返り、即座に日本刀を引き抜いて剣の斬撃を防ごうとした。
ドガァァァ!!!
辛うじて斬撃を防ぐことはできたが、受け止めた衝撃が全身に伝わり、マリーの腕が痙攣を起こし始める。
凄まじい痛みがビリビリと両腕に走るため、マリーは後方へと飛んでヴォラレウスの剣を弾いて逃げた。
見ると、今いたマリーの場所に大きな亀裂が刻まれている。
(ほ、本気だ……本気で私を殺す気だ。やっぱり本物の剣だと迫力が全然違うな)
マリーは立ち上がり、日本刀を正眼に構えて深呼吸をする。
(見た目に騙されちゃダメだ。ヴォラレウスが言うには、小枝も剣も『原初の力』の前では破壊力が同じ。大切なのは地脈の波動を感じ取ること……)
心の中で考えを整えると、マリーは摺り足で地面の感触を確かめる。
そして力強く踏み込み、前方にいるヴォラレウスに向かって日本刀を振り払った。
しかし、ヴォラレウスは片手で剣を構えると、いとも簡単にマリーの攻撃をその剣で弾き飛ばし、伸ばした手でマリーの体を掴んで真上へと投げ飛ばしてしまう。
空中に飛ばされたマリーは、地面に激突するのを避けるため、体を回転させて態勢を整えようとした。
「う、うわっ!」
だが下を見ると、ヴォラレウスが剣を縦に持ってマリーを串刺しにしようと待ち構えている。
落下する途中、切っ先が体に触れようとした瞬間にマリーが日本刀で剣を弾き返したので、串刺しになるのを未然に防ぐことができた。
「やはり目覚めぬか……その程度の腕だったという感じだな」
「ま、まだ……修行の途中でしょ! なんで急に襲って来るのよ!」
「おまえが弱いと判断したからだ。我は弱い者に興味がない。鍛えた後に戦うのを楽しみにしていたが、どうやら見込み違いだったようだな」
ヴォラレウスは剣を回転させると、放射状に衝撃波を飛ばして周囲の樹木を切り倒す。
「このように、我が少しでも本気を出せばおまえは真っ二つになる。この技に抗う術がおまえにはあるのか?」
「……ないよ! あるワケないじゃん!」
「ならば死ぬが良い」
そう言うと、ヴォラレウスは剣の柄を両手で握り、上段の構えから一気に剣を振り下ろした。
すると巨大なアーチ状の衝撃波が発生し、その衝撃波がマリーに向かって飛んで来た。
(これを食らったらさすがに死んじゃう!)
マリーは日本刀を縦に構えて防ごうとするが、もろくも刀は弾き飛ばされ、大地を揺るがすほどの衝撃波が体を貫いてしまう。
……そのままマリーは空高く舞い上がり、飛ばされた先の地面に落下して全身を強打する。
「終わったか……」
ヴォラレウスは剣を鞘に収め、倒れているマリーに近付いて生死を確かめようとした。
――キィィィン!
すると突然、日本刀が足元から飛び出たため、ヴォラレウスは咄嗟に剣を引き抜いて刀を受け止めた。
死んでいたと思われたマリーが息を吹き返したのだ。
「……ま、まだ終わってないよ」
「おまえ……生きておったのか?」
「どうやら地脈の波動が体幹に吸収できたみたい。そのお陰でダメージが抑えられたんだよ。コツは掴んだ……後はその波動を日本刀に伝えるだけ」
日本刀を杖にしてマリーはゆっくりと立ち上がり、大きく深呼吸して正眼に構えた。
マリーから覇気のようなものを感じ取ったヴォラレウスは、少しずつ後方へと後ずさる。
「さあ、構えな! 次の一撃であんたを倒す!」
マリーの言葉でヴォラレウスは軽く武者震いをした後、両手で剣の柄を握り、再び巨大な衝撃波を放つ構えをした。
一方でマリーは、正眼から刀を横に寝かせる構えに切り替える。
――辺りが沈黙に包まれる中、最初に打って出たのはヴォラレウスだった。
凄まじい勢いで剣を振り下ろすと、先ほどと同じように巨大な衝撃波が発生し、地面を削りながらマリーに向かって襲い掛かった。
だがマリーはその場を動かず、衝撃波が近付くのをジッと堪えて待つ。
ドォォォォォン!!!
次の瞬間、マリーは稲妻のような速さで日本刀を横へと振り払い、ヴォラレウスの衝撃波を轟音と共に打ち消した。
――そしてしばらくの静寂の後、辺りの焼け焦げたような匂いが消え、ヴォラレウスが呆然と立ち尽くしているのをマリーは視線の先に見る。
「見事……」
ヴォラレウスはそう言葉を残すと、上半身と下半身が裂かれるように真っ二つに分かれ、その巨大な体が音を立てて崩れ落ちた。




