表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第五章 イシュクワ・ウルタール 19歳
55/146

原初の力

マリーは自分の両腕を見ると、所々に内出血が起きて血管が浮き出ており、握力もほとんど失われ、とても日本刀を握れる状態ではなかった。

……だが、ヴォラレウスは再び小枝を振り下ろしてマリーに打撃を加えようとする。

マリーは痛みを(こら)えながら前転して攻撃を避けると、歯を食いしばりながら日本刀を手に取り、頼りない足取りで立ち上がって正眼に構えた。


「根性はあるようだな」

「あ……あんた、こんなことして何が目的なの?」

「おまえを鍛えてやると言っておるのだ。今のままでは、どちらの刺客にも勝てないだろうからな」

「物理的な攻撃が効かないって聞いてたけど、この衝撃を与えるような力を得ないと勝てないってこと?」

「そうだ。これは錬金術で言えば四大元素、また東洋の陰陽道で言えば五行思想の一つである『土』の力に該当する。人間の世界においても応用が可能な技だ。例えば中国武術の一つである八極拳の震脚や、日本相撲の鍛錬(たんれん)に当たる四股も『土』の力を最大限に活用したものである」

「だけど、これほどの衝撃は生身の人間じゃ生み出せないよ」

「おまえは原初の力に目覚める必要があるからだ。地脈を感じ取って正しく体幹に伝え、その波動を切っ先に向けて放つのだ。それを体得すれば、こんな小枝でも相手を死に至らしめる。物理的な攻撃が効かないとはそういうことだ、見た目に(だま)されてはいけない」

「こ、こんなのを1万回も……無理だって無理!」

「お喋りは終わりだ。手加減してやるから、黙って受けるが良い!」


ヴォラレウスは小枝を横に払ってマリーの脇腹を打とうとしたが、日本刀を縦に構えて攻撃を防ぐと、キィンと金属音が鳴り響いて攻撃の手が止まった。

だが次の瞬間、全身に凄まじい衝撃が伝わり、マリーは日本刀を持ったまま数メートルほど吹き飛んで地面へ頭から落ちる。


(ただの打撃じゃない……! 体の奥に響くような衝撃が後から伝わって来る感じだ)


マリーは日本刀を杖にして立ち上がり、もう一度ヴォラレウスと向き合う。

「も、もう一回」

「ほう、良い心掛けだな」

ヴォラレウスは地面を蹴って前方へと飛び出し、マリー目掛けて小枝を横へと()いだ。

その行動を見たマリーは、体を回転させながら攻撃を避けて見せる。


(……攻撃を(かわ)して相手の隙を突くのが最適解だね!)


だがマリーがそう思ったのも束の間、突然、背中に鋭い衝撃と痛みが走り、まるで上から殴られたように地面へ倒れてしまう。

「攻撃を躱しても無駄だぞ。この技は、おまえの周囲にある気の流れさえも支配する。神速と呼べるほどの素早さを身に付けねば、衝撃波から逃れることはできん」

そう言うとヴォラレウスは、倒れているマリーに向かって再び小枝を打ち込もうとする。

朦朧(もうろう)とした意識の中、マリーは何とかヴォラレウスの攻撃を防いで見せるが、すでに体力が尽きているため、下手をすれば命を落とす危険性があった。


「止めてください! 死んでしまいます!」


意識を取り戻したイシュクワが、倒れているマリーを(かば)ってヴォラレウスの手を止めた。

退()け、ジェノコアの小娘」

「いいえ退きません! こんな一方的に甚振(いたぶ)るなど卑劣な所業です!」

「ふむ……」

ヴォラレウスは少し口を(とが)らせると、つまらなそうに小枝を投げ捨てた。

「今日はこれくらいにしておこうか。傷の手当てでもしてやるといい」

イシュクワに背を向けたヴォラレウスは、その巨体を揺らしながら廃城の中へと消えた。

見ると、マリーは額から大量の汗を流し、すでに虫の息の様子である。

心配したイシュクワはマリーを背負って廃城の中へと入り、清掃が行き届いている部屋を見つけ、中央にあるベッドにマリーを寝かした。

――そしてしばらくすると、マリーの寝顔を見ていたイシュクワの耳元に奇妙な声が(ささや)く。


【イシュクワさんイシュクワさん、マリーを助けたいですか?】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ