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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第三章 穂積海斗 20歳
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転生者

「おまえまさか……善き者を体に寄生させたのか!?」


海斗は七奈美の姿を見て色々と悟った。

彼女は自分の体を触媒(しょくばい)として『刻殺(ときごろ)しの間』を開放し、氷魚と汐音に力を与えたのだ。

だが1人で2人の過去を書き換えるのは限界があるため、善き者と手を組み、自分の体に寄生させることで力を増幅したと考えられる。


(馬鹿なことを……善き者を体に寄生させるなんざ、凄まじい痛みで気が狂いそうになるぞ)


……こうして海斗を前にしても、七奈美からは一向に返事がない。

七奈美を覆う生物膜はドクドクと激しく波打っており、彼女の身体だけでなく精神まで(むしば)み、もはや人間としての尊厳(そんげん)は失われているかのように見える。

すでに本人は息絶えているのかもしれないが、善き者が寄生してしれば、死ぬに死ねない体のはずである。

見ると、七奈美の右手だけが異様に肥大(ひだい)しており、恐らくそこに善き者が寄生していると海斗は見抜いた。


(……胸糞(むなくそ)が悪いな)


海斗はしばらく腕を組んで考え込み、心の中で一つの答えを出した。

そして部屋を出て来た道を戻ると、再びドゥルルと顔を合わせる。


「どうだ? 善き者がいたと思うが」

「ああ、いたよ。七奈美の体に寄生していた」

「では七奈美を抹殺するが良い。宿主が死ねば善き者も自然に力を失うだろう。この時代は我の影響力がより強くなり、実効支配しやすくなるはずだ」

「あのさ、俺はおまえを裏切らないと約束したよな?」

「ああ……そう言ったが」

「あれは嘘だ」


海斗はリボルバーの銃口をドゥルルの頭に向けて引き金を引いた。

脳天に風穴を開けられたドゥルルは、大きく体を()()らせながら、ドスンと音を立てて地面に倒れる。


「悪いな。おまえと組んでもこの世界、クソつまらねぇんだわ」


海斗はドゥルルが死んだことを確認し、銃をホルスターに収めると、もう一度七奈美のいる部屋へと向かった。

――氷魚と汐音が見せたくないのも分かる。

あんな醜い姿になってまで俺の暴走を止めたいのかと思うと、海斗は背中までむず(がゆ)くなるような気がした。

そして七奈美が囚われている部屋のドアを開け、再び本人と対面する。


「おう七奈美、ずいぶんと痛い目に()わせちまったな。あんたの覚悟、ちゃんと見届けたぜ」


そう言うと海斗はリボルバーを取り出し、肥大している七奈美の右手に銃口を向けて引き金を引いた。

ギィヤヤヤァァァ! と凄まじい悲鳴(ひめい)が周囲に響き渡ると、右手から液体状の塊がドロリと飛び出し、そのまま地面に落ちて動かなくなった。

善き者が死んでも、壁に張り付いた七奈美の目は閉じたままで、恐らく彼女は数分後に息絶えてしまうと思われた。


「じゃあな、来世で会おう!」


海斗はリボルバーの銃口を口に(くわ)える。

そして少しだけ口角を上げ、何故か自嘲気味(じちょうぎみ)に笑い出した。

「……いや違うな、()()か」


そんな冗談めいたことを言いながら海斗は引き金を引き、リボルバーの銃弾で頭を撃ち抜かれて絶命した。

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