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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第三章 穂積海斗 20歳
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暗殺者

警報装置のセンサーが反応したのは、このアジトの正面入口だった。


「まさか相手は隠れもせずに正面から建物に入ったのか? イカレてるだろ」

「ヌシが1人だから()めた可能性もあるな」

「……じゃあ俺の恐ろしさを教えてやる」


海斗はデスクに置いてあった日本刀を手に取ると、階段を下りて正面入口へ向かった。


(は? なんだありゃ?)


正面入口では1人の男が仁王立ちしており、現れた海斗を鋭い視線で(にら)み付ける。

男の手には巨大なハンマーが握られ、その見た目は筋肉質で、海斗の1.5倍ほど体の大きさがあるように思えた。


「誰だテメェは?」

「穂積海斗だな。貴様に聞きたいことがある!」


その男はハンマーをこちらに向け、挑発的な態度を示した。


「私の名は五代氷魚(ごだいひお)、貴様に今一度問う。イーテルヴィータを再び歩む気はないか? 一時の迷いとして、今なら過去の行いをすべて水に流してやろう」

「ははあ、七奈美の仲間だな。俺は俺の気に入る道を進むまでだ、放っておいてくれ。それになんだよ水に流すって、上から目線なのも大概(たいがい)にせぇよ」

……氷魚の眉がピクリと動く。

「では考えを改める気はないのだな?」

「まったくないね。とっとと失せるか、俺と戦って華々しく散るか選びな」


氷魚は怒りで顔が紅潮(こうちょう)すると、ハンマーの柄を刀のように握り締めて正面に構えた。

そして次の瞬間、前に飛び出して一気に海斗との距離を詰める。


(――うわっ!)


海斗はギリギリのとことで攻撃を(かわ)し、氷魚が振り回したハンマーは空振りして近くの壁を叩き壊した。

氷魚の巨体からは想像できない瞬発力で海斗に襲い掛かったため、少しでも判断が遅れていたら頭蓋骨(ずがいこつ)無惨(むざん)に砕かれていただろう。


(驚いたな……あんなデケェのに、俺と動きが変わらねぇぞ。まるで曲芸師だ)


氷魚はゆっくりと振り返ると、再びハンマーを構えて次の攻撃態勢に入る。


「貴様は『刻殺(ときごろ)しの間』を覚えているか?」

「ああ、覚えている」

「私はそこで修業を積んだ。七奈美様が力を与えてくれたのだ。戦闘のスキルなら貴様と同等だと自負している」


海斗の額から一筋の汗が流れ落ちる。

氷魚の言うことが事実なら、今までの相手とは比べものにならないほどの化け物だと言える。

こちらが僅かに有利な点は、オロチから渡された日本刀とリボルバーが優秀な武器というだけだ。


「私のハンマーでその日本刀『兼佐陀・紫電』を叩き折ってやろう」

「やれるものならやってみな。それに……今の俺には味方がいるぜ」


その時、隣の部屋から巨大な触手が伸びて氷魚に襲い掛かった。

氷魚は地面を蹴って触手の攻撃を躱すと、前転しながら体勢を立て直して再び海斗と向き合った。


「貴様、原生種を使役(しえき)するとは……悪しき者と手を組みおったのか?」

「察しが良いな」

「この下衆(げす)が! もはや手加減などせんぞ。貴様のイーテルヴィータを私の手で終わらせてやる」


氷魚は腰を落としてハンマーを(すく)い上げ、海斗の(あご)に一撃を加えようとした。

だが海斗は背中を反らしてハンマーを避けると、上段の構えから日本刀を氷魚に向かってそのまま振り落とした。

日本刀は氷魚の肩を(かす)めたが、腕に深い傷が刻まれ、その痛みで氷魚は咄嗟(とっさ)に後ろへと下がってしまう。

海斗はその(すき)を逃さず氷魚と距離を詰め、真っ直ぐに突きを放った刀は氷魚の腹部に刺さる。


「ぐわっ!」


勝利を確信した海斗だったが、その期待に反して氷魚は冷静な表情をしていた。

海斗は日本刀を引き抜こうとしたが、氷魚が腹部に力を入れて一向に抜けそうにない。


「くそっ! 抜けねぇ!」

「貴様の自慢の武器。ここで失うことになるわ!」


氷魚はハンマーを頭上に掲げて、振り下ろしの打撃で日本刀を叩き折ろうとする。

だがその時、巨大な触手が再び氷魚を襲い、振り下ろそうとした氷魚のハンマーを止めた。

力が抜けたのか、固定された日本刀が少しだけ緩み、海斗は氷魚の腹部から引き抜くことに成功する。


小賢(こざか)しい真似(まね)を……悪しき者と組んでまで、私たちの宿願(しゅくがん)を拒むのか?」

「うるせぇよ、おまえたちには関係ないだろ。俺の人生だ、俺の好きにさせてもらう」

「ここは一旦引くが、改めて考え直すが良い。例え善き者と悪しき者の脅威(きょうい)が去っても、貴様は永遠に命を狙われる立場になるぞ。それが定められた運命なのだ」

「面白れぇ、すべての敵を切り刻んでやる」

「その威勢(いせい)、何処まで続くかな……」


氷魚は腹部の傷を手で押さえながら、俊敏(しゅんびん)な動きでアジトから去った。

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