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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第二章 穂積海斗 21歳
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偽りの覚醒

クライザーレは杖の先で地面に円を描き、コツコツとその図形を杖で突くと、ブンッと音がした瞬間に奈波が突然円の中心に現れた。


「ちょっとしたマジックですよ」


海斗はすぐに奈波に歩み寄り、本人が無事か確かめる。

彼女はスースーと寝息を立てているため、恐らく夢の中だと思われた。


「お美しい娘さんだ。もちろん危害など加えておりません。下衆が考えるような嫌がらせは、私のプライドが許しませんので」

「何故、おまえは俺に協力的なんだ?」

「先ほども言いましたが、私と貴殿(きでん)は共に戦った同志です。本心から貴殿の幸せを願っている」

「もしもの話だけど、おまえの提案を拒否したら?」

「今の貴殿では、このクライザーレに勝てないでしょうな。正直に答えますと、私は20年離れではありません。そのため、物理的な攻撃が一切効かないのです。貴殿と奈波様を一瞬で抹殺(まっさつ)できると確信しております。少し強引かもしれませんが、ここで脅しておかないと、後々に貴殿は善き者と悪しき者の脅威となりますので」

「そうか……」


海斗は奈波を抱き上げ、近くにあった休憩用のベンチに寝かせた。


「お互いに利害は一致している感じだな。提案を受け入れよう」


海斗は奈波の頬をそっと()でた。


「どんな幸せな人生を用意してくれるんだ?」

「貴殿の立ち上げたビジネスは確実に成功します。派手さはないですが、堅実な企業として政府からも信頼され、海外にも積極的に事業を展開するでしょう。もちろん、生涯のパートナーはそこにいる奈波様だ。子供にも恵まれ、裕福な家庭を築くことができます」

「おまえたちは20年しか時間をコントロールできないだろ。その先はどうなるんだ? 俺たちは歳を取るんだぞ」

「その点もご心配なく。人間の人格や人生の方向性は、若い10代から20代前半でおおよそ決まります。後は時間の流れの中に身を置くだけです。例え年齢を重ねた後に波乱の人生が待っていたとしても、その因果関係(いんがかんけい)は若い時の経験が確実に影響している。人の子も多次元世界も、20年だけ監視すれば十分なのです」

「……それだけの人生や世界を掌握(しょうあく)するおまえたちが恐ろしいよ」

「何をおっしゃいますか、このシステムを創造したのは貴殿たちだ。ある恐怖した感情に支配されてしまったが(ゆえ)に」

「恐怖した感情? 俺が何を恐怖したんだ?」

「それは……」


クライザーレはコホンと咳払いすると、海斗に背を向けてしばらく黙ってしまう。


「……少し喋り過ぎてしまったようだ。では貴殿のイーテルヴィータを閉じるため、メモヴェルスの欠片(かけら)を私に渡してください」


海斗は懐からメモヴェルスのカードを取り出す。

するとクライザーレは手で目を覆い隠した。


「これは(まぶ)しいですな。メモヴェルスから放たれる光を抑えてもらえませんか?」


海斗は手の上にカードを乗せると、指で円を描いて「光を抑えよ」と唱えた。


「……ああそれで大丈夫です。では私に渡してください」


クライザーレが手を差し出したため、海斗は持っていたメモヴェルスのカードを渡そうとした。

――しかしその時である。


【……やむを得ない。貴様の芽の一部をその体に送る。私を恨むなよ!】


遠くから女性の声が聞こえ、海斗は思わずカードを持っていた手を引っ込める。

すると突然、メモヴェルスが凄まじい光を放ち、その光は海斗の全身を包み込んだ。


「うおおおああああぁぁぁ!!!」


海斗を包んでいた光が一点に集中し膨れ上がると、次の瞬間、クライザーレに巨大な光線となって襲い掛かり、彼を数百メートル先まで吹き飛ばした。

そして放出した光線はクライザーレだけでなく、小学校の校舎をも貫いて建物に巨大な穴を開けた。

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