表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第二章 穂積海斗 21歳
25/146

デジャヴ

海斗と八重野奈波(やえのななみ)は、しばらくボーリング場で練習し、その30分後に友達である永井が彼女を連れてやって来た。


「おいおい、もう練習してるのかよ海斗」

「おまえが上手過ぎるからな、練習しておかないと相手にならないだろ」

「なんだよ~、奈波ちゃんにいいところ見せようと思ってたのに」

「……隣に彼女連れてよくそんなこと言えるよな、おまえ」

「いいのいいの海斗君、私は慣れてるから」


横にいた永井ライアン(ながいらいあん)の彼女は自嘲気味に笑った。

永井のようなハーフは日本人グループと群れることは少ないが、珍しく海斗とは気が合うため、こうして時々一緒に遊んだりする。

また彼の彼女も日本人なので、アメリカの国籍を持つ一人としては非常にレアなタイプだ。


「海斗さ、なんだか体が大きくなってないか? 筋トレでもしてるのかよ」

「え? いや……特にしてない」


……そう言われてみると急に筋肉質になったような気がする。


「奈波ちゃんという彼女がいるのにおまえ……まさかまだモテたいのか?」

「確かに(たくま)しくなったし、ちょっとカッコ良くなったかも」


会話に加わった奈波がコロコロと笑う。


「昨日、肉でもたくさん食べたのかな? なっちゃんは俺が何を食べたか覚えてる?」

「ラーメンだったと思うけど……乗ってたチャーシューでそこまで筋肉質になるの?」

「……たぶん無理」

「まあいいや! とっととゲームを始めようぜ」


永井が海斗と奈波の二人を急かした。

そして2時間ほど遊ぶと永井のカップルと別れ、海斗は奈波を連れて近くのカフェに入った。


「くっそ~、やっぱり負けたか」

「永井君、ボーリング上手かったね~。さすがの海斗でも太刀打ちできない感じ」

「筋肉のお陰かボーリングの球が軽く感じたんだけど、コントロールはいつも通りだったわ」

「そうそう聞きたかったんだけど、いつの間に筋トレなんてしてたの?」

「……いや、本当にしてないよ」

「それに目つきも鋭くなったし、いつもの海斗と別人みたい」


海斗はスマホを取り出して、自分の姿をインカメラで映した。

画面に海斗の体や顔が映し出され、何が変わったのかマジマジと見て確認する。


「う~ん、言われてみれば少し雰囲気が変わったかもね」

「ひょっとして違う人? 入れ替わったとか?」

「……そんなオカルトじゃあるまいし。本物だよ本物!」


海斗は戸惑いながらも、笑顔を浮かべて奈波を安心させようとする。


「この話はもういいよ……これから何処へ行こうか? なっちゃんは何かリクエストある?」

「十央パークサイド・ストリートでお買い物したいかな」

「ま~た荷物持ちかよ……」

「文句言わない。私だって家事をけっこう頑張ってるんだから、ご褒美と思いなさい」


やれやれと思いながら海斗は席を立ち、店のカウンターで会計を済まそうとする。


【――海斗っ!】


その時、海斗は何処からか自分の名前を呼ぶ声が聞こえ、思わず振り返った。


「あれ……今呼んだ?」

「えっ? 呼んでないよ。こんだけ近いんだから呼ぶワケないじゃん」

「おかしいな……今度は幻聴かよ」


海斗は不服そうにぶつぶつ言いながら会計を済ませると、カフェを出て奈波と一緒に十央パークサイド・ストリートへと向かった。

目的の場所は歩いて15分のところにあり、若者で(にぎ)わうショッピング・ストリートとして、界隈(かいわい)でも有名である。


「着いた着いた。俺は店の外で待ってるから」

「海斗はスニーカーショップに行ったら? しばらく別行動でも大丈夫だよ」

「……じゃあアプリでメッセージを送って。すぐに飛んで行くからさ」


海斗は奈波と別れ、100mほど先にあるスニーカー・ショップへと向かった。

……だが不思議なことに、海斗はすぐ店には向かわず、近くにあった休憩所の椅子に腰を下ろした。


(なんだか今日は落ち着かないな。胸の辺りがザワザワして、息苦しい感じがする)


見た夢が悪かったこともあり、海斗の気分は朝から最悪である。

吐くほど気持ち悪くはないが、頭痛と眩暈(めまい)が交互にあるため、医者に行った方が良さそうな感じだ。

……そんなことを考えていると、足元にあったマンホールの(ふた)に海斗は目が行く。


(このマンホールの蓋、なんだか他のと色が違うな。白くする理由はなんなんだろ?)


海斗は試しにマンホールの蓋を開けようとしたが、少し持ち上がったところで内側にあった鎖に引っ掛かった。

奇妙な話だが、どうしてもこのマンホールの下へ行かなければならないような気がした。


(……近くの雑貨屋で鎖を切る道具がないか探そう)


海斗は雑貨屋へ向かうと、鎖を切るためのチェーンクリッパーを買い、再びマンホールの場所まで戻って()めていた鎖を切断した。


(正気じゃないな……どうしちゃったんだろ俺?)


そんな言葉が脳裏(のうり)()ぎったが、海斗は戸惑うことなく梯子(はしご)に手を掛けて地下へと下りた。

そして地下へと辿り着くと、周囲は霧のような(もや)が充満しており、視界も極めて悪いため、微かな光を頼りに進む必要がありそうだった。


(何かの施設みたいだな。あそこに倉庫のようなものが見えるぞ)


……海斗は以前に聞いたことを思い出した。

日本は過去、アメリカに13発の原爆を落とされたため、各地に防空壕(ぼうくうごう)を急設した歴史があるという。


(……ここは今で言う核シェルターみたいなものか。でも、なんだか前に来たことがあるような気がするのはどうしてだろ?)


海斗は倉庫らしき施設のドアを開けて中に入ると、大量の資材が乱雑に置かれており、足の踏み場もない状態だった。

奥を見てみたいが進めそうにないため、海斗は断念(だんねん)して静かにドアを閉じた。


――その時である、


霧の中から何人かの軍人が突然現れ、海斗に向かってライフルを構えて一斉射撃した。


「うわあああぁぁぁ―――!!!」


海斗は隠れる場所を見つけようと辺りを見回したが、時すでに遅く銃弾は全身を(つらぬ)いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ