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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第二章 穂積海斗 21歳
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目覚め、そして日常

「うわっ! う、う、撃たれた!」


飛び起きた海斗はすぐに撃たれた自分の体を確かめた。

だが銃で撃たれたような傷跡はなく、血だらけになっている様子もない。

どうやら寝惚(ねぼけ)ていたらしく、夢の中での出来事だったようだ。


「どうしたの~?」


台所で朝食を用意していた海斗の彼女が、心配そうに声を掛けた。


「い、いや……なんでもない。夢だよ夢。悪夢ってやつ」

「急に大きな声を出さないでよね、こっちがビックリするから」

「なんか生々しい夢だったな、痛みが体に残ってるみたいだ」

「どんな夢なの?」

「兵隊に一斉に撃たれる夢」

「……映画の観過ぎだね」


海斗の彼女は(あき)れたように笑った。

彼女と同棲して一ヶ月になるが、この日常にもお互い馴染(なじ)みつつあり、夫婦同然の生活になっている。


「こんな彼氏だと毎朝うるさいから、私もアパート探そうかな」

「都会だとアパート借りるのもお金が掛かるだろ。一緒に生活した方がコスパ良くないか?」

「私が出て行ったら寂しい?」

「うん……まあ……」

「正直だね~」


海斗の彼女はフフフと含み笑いをした。

……自分には不釣(ふつ)り合いなくらい自慢の彼女だと海斗は思う。

彼女とはエレメンタリー・スクールの時に知り合い、オルベニア・ユニバーシティーの分校に入学した今も関係は続いていた。


「今年で卒業はできそう?」

「う~ん、難しいかもなぁ。単位をいくつか落としちゃったし、来年になると思う」

「学んだ経営学が生きるといいね」

「その点は任せてよ。日本は5年前に独立したし、政治家にも日本人が増えてるから、俺たち若者がこれからの社会を作るのさ。来年は必ず起業するから期待してくれ」

「へえ~お金持ちになるかも」

「その時は君と……」


そう言うと海斗は言葉に詰まった。


「君と……何?」

「い、いや、なんでもない。それより、今日は友達と久しぶりに遊ぶ予定だったよな。確かボーリング場で待ち合わせだっけ?」

「うん、確かそうだよ」

「じゃあ着替えないとね。永井のヤツ、けっこうボーリングが上手いから、先に行って練習しておかないと」


海斗は朝食を口に詰め込むと、慌ただしく立ち上がってワードローブのある部屋に向かう。

……彼女にプロポーズするのは一人前になってからだ。

そんなことを考えながら、海斗は出掛ける準備を始めた。


――そして2時間後。


海斗とその彼女はボーリング場を訪れ、カウンターで手続きを行っていた。


「ではここにお二人の名前をご記入ください」


店員は一枚の紙を差し出して、プレイヤーの名前を記入するようお願いする。


「これって俺と君の名前を書いてもいいかな?」

「うん、別にいいよ~。平仮名にしておいてね」

「じゃあそうしよう」


海斗は紙に1人目の名前である「かいと」と記入した。

そして2人目の名前も下に記入する。


……その名前は「ななみ」であった。

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