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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第一章 穂積海斗 22歳
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安い悪役

階段を上ってシェルターのメインルームに繋がる通路へ出ると、案の定何人かの兵隊が待ち構えており、海斗を見つけると一斉に銃を撃ち始めた。


(このまま進めばハチの巣にされるな……他の通路を使うか)


シェルターは敵に侵入された時を想定し、メインルームに向かう通路をいくつかに分けている。

中には海斗しか知らない通路もあるため、そこから行くのが無難だと思われた。

海斗は来た道を引き返し、階段の途中にある隠しパネルの(ふた)を開けてボタンを押す。

すると天井から梯子(はしご)が現れたため、海斗はそれを使って天井裏まで上り、自身の知る隠し通路へと向かった。


(これだとメインルームへ行くのは避けた方が良さそうだな……あそこは守りを固めるには最適な場所だ。まずはお師匠を助けることに集中しないと)


海斗は隠し通路にある部屋のドアを開けて中に入ると、そこには何台かの監視モニターが設置されており、シェルター内部の状況が映し出されていた。

人感センサーで兵隊の数を調べると、およそ50人ほどがシェルターを占拠していると出力された。


(えらく多いな。これほどの人数を従えるとか、オロチはいつから善き者と繋がりがあったんだ? 悪しき者が生きていた時は、そんな素振りすら見せなかったのに)


……悪く考えれば完全に(だま)されていたとも言える。

だが悩んでも仕方のない話なので、まず仁翔が何処にいるのか調べる必要があった。


(……あっ、いた! 武器庫の隣にある倉庫に囚われているみたいだ)


モニターを確認すると、仁翔は何人かの軍人に囲まれて身動きが取れなくなっている。

一人の男が時々銃身で殴ることもあるため、おそらくかなり(ひど)い拷問を受けた後なのかもしれない。


(くそっ、早く行かないとお師匠が死んでしまう! 武器庫ならダクトから行けるな。おそらくオロチもそこにいるだろうから、ついでにあの世へ送ってやる)


海斗は部屋を出て外にあるダクトへ入り、匍匐(ほふく)して武器庫へと向かった。

狭いダクトの中を前進してメインルームの階下にある武器庫まで辿り着くと、息を殺しながら通路の床へ着地し、(さや)から日本刀を引き抜いた。


……ここにいる兵隊の数はおよそ7人ほどである。

海斗は武器庫のドアノブに手を掛けると、静かにドアを開けて中に入った。

今まで何事もなかったためか、中にいる軍人たちは完全に油断しており、背後から近付く海斗の存在に気が付く様子もなかった。

そして一筋の光が走ると、何人かの軍人の首が飛んで宙を舞う。


(……まずは2人)


海斗は日本刀に付着した血を振り払うと、奥の部屋にいるオロチと軍人2名の前に姿を現す。


「げぇっ! か、海斗!」


突然、目の前に海斗が現れたため、場の動揺がこちらにも伝わって来た。

その(すき)を逃がさず、海斗は前跳びで軍人との距離を詰め、日本刀を横薙(よこな)ぎして2名の首を一瞬で切り落とした。

そして海斗は日本刀の切っ先をオロチの喉元(のどもと)に向ける。


「ままま、待てよ海斗! 俺たちは仲間だったろ、殺す必要なんてあるか?」

「言い訳はそれだけか? 呆れたもんだな」

「頼むよ、殺さないでくれ! 仁翔だってくれてやるから!」


オロチは地面に頭を(こす)り付けて土下座する。

海斗は自分でも甘いと思ったが、オロチを殺す気にはなれず日本刀を鞘に収めた。


「おまえと話すことはもうない。二度と顔を見せるなよ」


海斗はオロチに背を向け、仁翔が囚われている倉庫へ向かおうとした。

――その時、撃鉄(げきてつ)を引くような音が聞こえ、海斗はその場で立ち止まる。


(……やはり安い悪役なんてこんなものか)


海斗は振り向き様に日本刀を抜き、後ろで銃を構えていたオロチの腕を切り落とした。


「ぎえええぇぇぇ!」


オロチは激痛で叫び声を上げながらその場に倒れた。

海斗は苦しんでいるオロチに近付き、再び喉元に日本刀の切っ先を向ける。


「言い残すことはないな。自業自得だと思い知れ」


海斗が首を切り落とそうとしたその時、オロチの左目がおかしな挙動(きょどう)を見せ、グリグリと動いて頭蓋骨(ずがいこつ)の中で暴れ出した。


「ギイイイィィィ―――!!!」


海斗は何が起こったのか分からず、叫びながら痙攣(けいれん)するオロチを見ていたが、しばらくすると動きが止まり辺りが静かになった。


「……どうなってるんだ?」


恐る恐る海斗はオロチに近付くと、どうやら(わず)かに息はあるらしく気絶している様子だった。


「おい、どうした? 起きろ!」


海斗が話し掛けると意識を取り戻したのか、オロチは薄く目を開けてこちらを見る。


「……す、すまねぇ旦那……しくじっちまった」


オロチはそう言うと口から大量の血を吐き出し、そのまま崩れ落ちるように絶命した。


(……え?)


海斗はオロチが残した言葉に動揺すると、すぐに抱き上げ何度も名前を呼んだが、願いも空しく目覚める様子はなかった。

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