表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第一章 穂積海斗 22歳
18/146

積年の恨み

「う~む、ここはもう駄目かもしれんな」


仁翔は煙草の火を消して、刀を仕込んだ杖を手に取る。


「海斗! あの娘の安全を確保するため、エレベーターが生きている内に第三シェルターへ戻れ。ここは儂らで敵の動きを抑える」

「えっ……オロチと二人でですか? 無茶だ!」

「こんなこともあろうかと、ここにいる従業員には銃器の扱いを教えておる。少しではあるが時間稼ぎにはなるじゃろ。第三シェルターへ着いたら下にある機能停止ボタンを押してエレベーターを動かくなくしろ」

「……分かりました。ご武運を」


海斗はすぐにエレベーターのボタンを押して中へ乗り込んだ。

恐らく車で逃げている時にシェルターの位置がバレたのかもしれない。

そうだとしたら……第三シェルターが最も危険だ。


(くそっ! まさかここまで侵入するとは思ってもみなかった)


――そしてエレベーターが第三シェルターへ到着すると、海斗はパネルの下にあった「機能停止」と書かれた蓋を開けて、中にあった赤いボタンを押す。

海斗はエレベータを出た後、銃を構えながら周囲の様子を伺う。

第一シェルターとは対照的に、敵が侵入した形跡はなく至って静かである。

海斗はすぐに医務室へ向かうと、デスクに向かってパソコンに入力している女性医師に話し掛けた。


「……ここは大丈夫ですか?」

「えっ、何がですか?」

「第一シェルターが敵の攻撃を受けました。ただちに避難してください」

「本当ですか!? 分かりました、すぐに準備します」


女性医師はパソコンの電源を落とすと、ロッカーの中にある荷物を取り出し避難の準備を始めた。


「七奈美さんは何処にいますか?」

「この通路の先にある部屋で休んでいます。今は寝ていると思いますけど」


海斗は通路の先にある患者用の部屋へ向かい、ドアを開けて中にいる七奈美の安否(あんぴ)を確認する。

七奈美はベッドで目を閉じて眠っており、顔色が少しだけ良くなっているように思えた。


(寝ているところ悪いけど、また背負って避難するしかなさそうだ)


海斗は七奈美を抱き上げ、背中に背負ってすぐに部屋を出た。


(おかしい……車で逃げた先を特定されたなら、襲われるのは真っ先にここのはずだ。敵の目標は第一シェルターだったのか?)


もしそうだとしたら、海斗は見事に敵の罠に()まったと言える。


(くそっ! エレベーターは止まっているし、今さら第一シェルターへ戻れない。まずはここの二人を無事に避難させることに集中しよう)


海斗は女性医師のいた部屋へ戻ると、他に安全な場所があるか尋ねる。


「ここ以外に安全な場所ってありますか?」

「緊急事態があった時に各シェルターから通知が来るんですが、第二シェルターからなんの連絡もないので、恐らくそこが安全ではないかと……」

「えっ、第一シェルターが襲われたのに緊急の通知がなかったんですか?」

「ええ……奇妙な話ですが……」


――すると近くにあったモニターとマイクに電源が入り、一人の男が画面に映し出された。

その男とは……オロチである。

オロチはモニターを通して海斗に語り掛けた。


「ヒャハハハ! 海斗さんよ~、見事に(だま)されたみたいだなぁ」

「オロチか? おまえまさか……」

「そのまさかってやつさ。仁翔のジジイを人質に取ったぜ、助けたいなら一人で第一シェルターへ来な!」

「……何故裏切ったんだ? 仲間だと思ってたのに」

「もともと裏切ったのはそっちだろうがぁぁぁ! 積年の恨みを晴らさせてもらうぞ、てめぇのイーテルヴィータをぶっ壊してやる!」


……俺が裏切っただって?

オロチの言っている意味がよく分からず、海斗は戸惑(とまど)うばかりだった。


「なんだぁ? 俺は知らないって(つら)してやがるな。詳しい事情ならその背負ってる七奈美とやらに聞いてみろよ。そいつは俺よりもおまえを恨んでると思うけどな!」

「……え?」

「ヒャハハハ! この世界はいいぜぇ~、凄くいい! 俺の武器が飛ぶように売れるだろうからなぁ。おまえを追って来た甲斐(かい)もあったってもんだぜ」

「うるさい黙れ! お師匠を返せよ! 」

「返して欲しければ第一シェルターまで来るんだな。もっとも、エレベーターが止まって来ることができないんだろ? そのエレベーターは横移動するし、第一シェルターの正確な場所が分からないだろうから、何処にあるか地図で教えてやるぜ」


モニターに地図が映し出され、第一シェルターがある場所に印が浮かび上がる。


「地上から行けっていうことか……」

「そうだそうだその通り! だから俺の優秀な武器を渡してやったんだよ。さ~て、銃弾の雨の中をくぐり抜け、無事に第一シェルターへ来ることができるかなぁ海斗くん」


オロチは愉快(ゆかい)そうに笑い声を上げ海斗を挑発する。


「すいません、七奈美さんをお願いします。恐らく第三シェルターには追手が来ないと思いますので」


海斗は背負っていた七奈美を椅子に下ろす。

そして女性医師に背を向け、地上へ向かうドアのノブに手を掛けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ