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MEMOVERUS ~幻異界転生~  作者: 中島 弓夜
第一章 穂積海斗 22歳
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ミゼラムの最期

「キキ……キィキィ」


フギオールは痩せ細った体になり、身長は100cmくらいの小男に変わり果てる。

先ほどまで堂々とした態度で海斗と向き合っていたが、今では見る影もなく瞳には不安の色が表れている。

時折、力のない獣のような鳴き声を上げ、怯えるように海斗をずっと見ていた。


「こいつが……さっきの大男なのか?」


海斗はリボルバーを手に取ると、怯えるフギオールに銃口を向けた。


「ヒィィィ―――!」


フギオールは飛び跳ねながら海斗から逃げようとする。

だが海斗は冷静に照準(しょうじゅん)を定め、フギオールの脳天(のうてん)に風穴を開けた。

ドサリとその場に倒れた悪しき者の刺客は、二度と息を吹き返すことはなかった。


「……よし、まずは一人」


フギオールを倒した海斗は、太陽の光の中に潜む巨大な眼球に視線を移す。


(あれが……善き者の刺客?)


巨大な眼球は海斗に話し掛ける様子もない。

ただジッとこちらを見つめるだけで、その場から動こうともせず、攻撃する素振りも見せなかった。

海斗はイヤホンマイクを通して仁翔にコンタクトする。


「お師匠。悪しき者の刺客を一人、倒しました」

「なんと、4年前の刺客をか!?」

「ええ……でも私の力ではなく善き者の刺客が現れたので、どうやらあいつが悪しき者の刺客を弱らせたみたいです」

「ついに善き者の陣営(じんえい)も動いたか……どんな姿をしておる?」

「巨大な人の眼球のような姿です。気になったのは、悪しき者の刺客が(しき)りに戒律違反(かいりついはん)はしていないと眼球に向かって言ってました。どういう意味でしょうか?」

「……分からん。恐らくじゃが、善き者の刺客との間に何かしらの齟齬(そご)があったようじゃ。しかし4年前の刺客を弱体化させるとは……凄まじい力を秘めておるの」

「これからミゼラムを倒しに行きます。善き者の刺客は動く様子もないし、攻撃して来るような気配も感じられないので」

「そうじゃな、まずは悪しき者たちをその幻異界から消し去ろうか」


海斗はフラついた足取りで再び新宿スカイアレシアを目指した。

そしてビルの入り口からホールへ足を踏み入れると、周囲に響き渡るミゼラムの叫び声が聞こえた。


「助けてぇぇぇ―――助けてくれぇぇぇ!」


見ると無数の原生種に囲まれたミゼラムが、触手の先端から伸びる爪で何度も刺されていた。


「どうなってるんだ……?」

「あああ! 海斗様、助けてください! こいつらを殺してよぉぉぉ!」


原生種は動きを止めず、今度はミゼラムの手足を触手で縛り、ホールの中央に体を高く掲げた。


「うわあああ、(まゆ)に……繭にされちゃう! 何やってんだ穂積海斗! こいつらを殺せと言ってるだろうがぁぁぁ!」

「……それが人にものを頼む態度かよ。自業自得だ、陽介と一緒の痛みを味わうんだな」


原生種はネバネバとした体液を吐き出し、それを糸のようにミゼラムへ巻き付ける。

一瞬でミゼラムは(かいこ)の繭のような形となり、口を閉ざされ叫び声すら聞こえなくなった。

そして原生種が何本もの触手を繭の中へ突き刺し、大量の寄生虫をミゼラムの体内に注入した。


「……終わったな」


海斗はその場に腰を下ろすと。仁翔に今までの出来事を報告する。


「お師匠、悪しき者の刺客を倒しました。メモヴェルスの反応も穏やかです」

「そうか……ご苦労だったな」

「これで俺は過去に戻れそうですか?」

「いや、まだ善き者の刺客が残っておる」


海斗はホールの窓から外の太陽を見た。

巨大な眼球は依然としてこちらを睨んでいる。


「でも善き者って、愛とか思いやりとかポジティブな思想の(にな)い手なんですよね? じゃあ話し合いで色々と解決できるんじゃないですか?」

「それは違うぞ海斗。本当に厄介(やっかい)なのはこれからじゃ」

「……え?」


――すると突然、ビルの近くで爆撃のような激しい音が鳴った。

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